√エレックさんより短編小説「枕」


レイクサイドパークの病院に入院するロックの話です。

 カトルオックス島、レイクサイドパークの地下都市エリアのボス、ガイニー・トーレンを撃破したロック。
「はぁはぁはぁ…。地下都市の鍵を入手したぞ。ザコを次々と生み出してくる巨大リーバードで、思わぬ苦戦を
してしまった…」
 それに身体全体が熱くて、重い。熱が出ているのかもしれない…。
 ボロボロになったアーマーを引きずりながら、ロックは黒いサブゲートを通って街へと出た。
薄暗い空間の地下都市から一転し、パァーっと光が差し、目の前に明るい街並みと広大な青空が広がる。


「やっと外に出れた。はぁ、はぁ…。歩くのもやっとだ。早く体力を回復させねば…」
 データに頼めば魔法のように一瞬で体力と特殊武器のエネルギーを回復してもらえるのだが…。
こんな時に限って近くにはおらず、ロックは坂を上ってボード小屋近くに停めてあるサポートカーまで歩いていかねば
ならなかった。


 ダメだ、身体が熱くて重い…。
このままじゃ、坂を上ってサポートカーにたどり着く前に倒れてしまうかもしれない…。


 そうだ、通信機でロールちゃんに連絡して、サポートカーでここまで来てもらおう…。無理は禁物だ。
 ロックは通信機のスイッチを入れた。
「ロールちゃ…」
『ロック…?』


 バタン!!


 無理がたたって、ついにロックは倒れてしまった…。
『ロックーーーー!!!』


 その後ロックは駆けつけてきたロールにレイクサイドパークの病院に運ばれ、38.5℃の高熱が出ていた事が分かり、
傷の手当てをしてもらい、薬を飲んだ後、しばらく病院のベッドで休ませてもらう事にした。


 それから数日後。
 ロックの熱が下がり、身体の傷も回復していた。ロックの病室に担当のナースが入室してきた。
「おはよう〜、ロックちゃん。身体の調子はどうですか〜?」
 白いナース服にブラウンのストレートヘアー、20歳前後の、若さに溢れたメリハリのある
スタイル抜群のプロポーション、露出した二の腕が柔らかそうにむちむちしており、優しさが窺える繊細で可憐な声色。
名前はアンジェといい、はっきりした顔立ちの正統派美少女だった。
数日間、様子を伝えるために交わした会話の中で、ロックはアンジェとなかなか親しい間柄になっていた。


「おかげさまですっかり元気になりました。ありがとうございます」
「お熱も平熱に下がっていて安心したわ〜。これで退院の方も、出来そうね…」
 少し寂しそうにするアンジェが見送る中、ロックはベッドから立ち上がろうとしたが、まだ少しふらついていた。
「だ、大丈夫?」
 アンジェがロックの手を取った。アンジェのしっとりとした華奢な手つきにロックは内心、ドキッとした。
「あ、いえ、大丈夫です」
「よかったらもう少し休んでいく?本音を言うと、私、もっとロックちゃんの傍にいたくて…」
「アンジェさん…」
 ロックはお言葉に甘えてアンジェとベッドでもうしばらく休ませてもらうことにした。


「ねぇねぇ、ロックちゃん。膝枕してもいいかしら?」
「え…?」
 アンジェのいきなりの大胆な提案にロックは驚いた。
「街を救ってくれたお礼もしたいしぃ〜。それに〜ロックちゃんは私にとっても特別な…男の子だから」
 頬を少し赤らめて言うアンジェの提案により、ロックはベッドの上で膝枕をしてもらうことになった。


 ベッドに座って白いスカートを整えるアンジェ。
「さぁ、どうぞ〜?なんて。ふふっ」
 短めのスカートからは黒いストッキングに包まれ、成熟したピチピチの太ももがぴったりと
くっついて並んでいた。ロールとは異なる大人の上質な色香が漂う太ももだった。
「それでは…」
 胸の鼓動が高まるのを感じながらロックは頭をアンジェの太ももの方にゆっくりと近づけた。
「ふふっ、恥ずかしがらずに思いっきり乗っかっていいよ。たっぷり甘えてっていいからね」
 ロックはアンジェが言うとおりに頭全部をアンジェの太ももに預けた。
ふわっと甘い女の子の香りがした。


(あったかい…)


 人肌のぬくもり、ストッキングのサラサラ感と柔らかな肌の感触が頭から伝わり、ロックは安心感に包まれた。
「ふふっ…」
 アンジェは優しく微笑み、ロックの頭をゆっくりと撫でていった。
「いい子いい子…」
 繊細で優しい手つきが心地いい。
 まるで子供に戻ったみたいだ、とロックは思った。
ロールの両親に育てられた懐かしい日々の記憶が思い出される。


 そしてディグアウトや街での戦いの疲れが心の底から少しずつ癒えていく。


「ふんふんふんふ〜ん♪」
 やがてアンジェは優しく小さな声で鼻歌を歌い始めた。可憐な声色が綺麗なメロディを奏でる。
ロックにとって、とても心地よく、とても幸せな時間が流れていく…。
まるで生クリームに包まれているかのようなあまぁ〜いひと時。
身体を治療してもらいお世話になっただけでなく、こんなにも幸せな気分にしてもらっていいのだろうか…。


「ふん〜ふふふふ〜〜ふぅ〜〜ん♪」
 アンジェはロックに対して子守歌を歌っているつもりなのだろうが、ロックにとっては刺激が強すぎる
シチュエーションが続いていて、なかなか寝付けずにいた。
 いや、このまま眠ってしまう方がもったいない、とも思えた。


 暖かなぬくもり、甘々な香り、気持ちいい感触、かわいらしい歌声。
これ以上何を求めるものがあるだろうか。いや、何もない。


 ロックは体勢を変えようと、寝返りを打って横を向いた。
「あ、ゴメンなさい。起こしちゃった?」
「あ、いえ。アンジェさんの膝枕、とても気持ちよかったです」
 どうやら本当にロックが寝ていると思っていたらしい。
「あ、でも、私まだ時間あるから〜。今度はロックちゃんにそのまま耳かきしてあげるわね」
「え、いいですよ、そこまで」
「ふふっ。ロックちゃん、かわいいからお姉さんからの大サービスだよ〜っ」
「わ〜」
 どこからか耳かき棒を取り出したアンジェはロックの左耳の耳掃除を始めた。
「動いちゃ危ないよ〜」
「う〜、お願いします」
 ロックは観念して引き続きアンジェに膝枕をしてもらいながら耳掃除をしてもらうことになった。


 ぽよん。


 アンジェが前のめりに屈むことで成熟した乳房がナース服越しにロックの後ろ頭に押し付けられてきた。
(わーーーーーーーー!)
 ロックは動くわけにもいかず、心の中で叫んだ。
後ろ頭全体を量感のある柔らかさが生暖かく包み込む。服を着ていてもこの感触…。
服を着ていなかったらもっと…。わ〜、僕ってば一体何を考えているんだ〜!
「ロックちゃん、じっとしててね〜」
「は、はい…」
 アンジェは慌てているロックの心境に気づいてはいないようだった。
「ん〜〜」
 熱心にロックの耳掃除に打ち込むアンジェ。接近したアンジェの顔から息遣いがロックの耳元に伝わってくる。
呼吸をする度にアンジェのふくよかな乳房がふよふよと動き、ロックの後頭部を押し込み、くすぐる。
ロックは変な気分になるのを必死に耐えていった。


 控えめに動かされる耳かき棒が左耳のかゆい部分を弄られ、くすぐったい。


「わぁ〜すごぉ〜い」
「?」
「ほら見て〜。こんなに大きいの取れたわよ。ふふふっ」
 アンジェはロックの左耳から取れた5mmほどの大きな耳垢をロックに見せ、愛おしそうに微笑んだ。
ロックが疑問に思うほど、アンジェはロックの耳垢に喜びを見せていた。
「すっきりしたでしょ〜?ね〜、見てほら、すごぉーい大きいの」
 さきほどの大きな耳垢を再度ロックに見せてきた。
「あ、はい。すっきりしました」


「じゃ、次は反対側ね〜」
「はーい」
 続いてロックは頭を動かして反対側を向いた。


(!!!!!!!!!!!!!)


 さっきは目の先が病室の壁だったからなんとか平静を保っていられたが、
今度はロックの目の前にはアンジェのスカートが迫ってきている。


(これじゃあ、目の前でアンジェさんとほぼ密着状態じゃないか!)


「ふんふんふ〜ん♪」
 アンジェは鼻歌を歌いながら耳掃除を始めた。


 ふにゅっ


 前のめりになったことでアンジェの乳房がロックの目の前に落ちる。
(目が、目がーーーッ!)
 今度は後頭部でなく目玉に柔らかな感触が押し込まれた。甘ったるい感触の中でロックは心身癒されていく。
 むにゅむにゅ……。


 その時、お見舞いに来たロールが病室のドアを開けた。
「ロック〜?お見舞いに来たよ〜。具合はど……お……?」
 しかしロックとアンジェの様子を見て唖然とする。
「何してるのかなぁ〜ロック〜〜??」
 にこにこにこにこにこにこにこにこにこにこにこにこにこにこにこ。
笑顔だが引きつっており、どこか恐い雰囲気のロール。


 二人は背中側にいるロールの存在に気づかないまま、耳掻きは終わった後も膝枕を続けていた。
「アンジェさんの膝枕、最高に癒されます」
「ロックちゃん、もっとこっちに来てもいいのよ」
 頭を撫でられたまま、アンジェの太ももがロックの鼻先に当たった。
(ダ、ダメだ。もう理性が吹き飛んでしまう……)


 衝動に耐えきれなくなったロックはアンジェの太ももにかぶりついた。表面の肌が柔らかでマシュマロのような食感。
ロックの頭の中がとろとろにとろけそうになる。
「ぁ〜ん、ロックちゃんに食べられちゃう〜!」
 アンジェは腰をくねらせ身をよじり、歓喜の声をあげた。


「ルルルルルルルォォォオオオオーーーーーーーーーーーッッッック!!!!!!」
 その光景を目の前で見ていたロールはついにブチ切れ、叫び声をあげた。
「ロロロロールちゃん!?!?!?」
 やっと事態に気づいたロックはロールの方を向いて顔をあげた。
 しかしその際にアンジェが手にしていた耳掻き棒がロックの耳の奥深くに突き刺さった。
「ぐああああーーーーーーっ!!!」
 ぴゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!
 ロックは耳から大量の赤い噴水を吹き出し、倒れた。


            GAMEOVER


ELITE HUNTER ZERO