√エレックさんより短編小説「残機システムを忠実に再現したロックマン世界」


本家の「残機システム」をよく考察されている短編です。

 これはストーリー上では明かされなかった、ライト博士が開発した残機システムが導入された
 ロックマン世界の物語である。

  20XX年のある日。Dr.ワイリーが突如、世界征服を企み、各地でライト博士製作のロボットの
 コントロールを奪い、街で暴走させ始めた。この危機に対してDr.ライトの研究所にいる
家庭用お手伝いロボット、ロックが自ら志願して戦闘用ロボットに改造してもらうのだった。
 「改造完了じゃ」
 「ありがとうございます、ライト博士。これで、ワイリーの野望を打ち砕く事が出来ます」
 「ロック…いや、ロックマンよ。ワイリーが暴走させているロボットの攻撃はお前が想像している以上に手強い…。
 一筋縄ではいかんかもしれん。…そこで、ワシは新たなシステム、残機システムを開発した」
 「残機…システム…?」
 「万が一、お前の身体が粉々に破壊された場合、心と頭の記憶データがこの研究所にある
 カプセルへ瞬時に転送される。そして、身体だけ新しく作り変えた『ロックマン』にそのデータを移し替え、
 破壊される前にいた安全な場所へ転送される。そこからまた、戦いを再開する事が出来る、というわけじゃ」
 「…それじゃあ、暴走ロボットにやられても、また再チャレンジする事が出来るんですね!」
 「ああ…。破壊される時までの記憶データはそのまま継続されるから、相手の攻撃パターンを覚えている
状態で戦いを挑むことができ、戦いをより有利に進めることが出来るじゃろう」
 「それなら、どんな強敵が現れようと、勝ち抜いていく事が出来るかもしれません!」
 「ああ。じゃが、破壊されてから再挑戦するまでに敵側もエネルギーが回復され、損傷個所も修理
されているはずじゃから、決して油断してはならぬぞ」
 「はい」
 「それと、この残機システムによって直前の場所から復活出来るのは、この1UPという、お前の
頭の形をしたアイテムが必要じゃ。ステージ内にいくつかお助けアイテムとして飛ばして
散りばめておくから見つけ出して役立てるのじゃ!」
 「わかりました!それでは、さっそく行ってきます!!」
 「頼んだぞ、ロックマン!!」

  残機システムの説明を聞いたロックマンは、破壊される事を恐れず、勇敢に暴走ロボットがいる
 ステージへと向かったのであった。最初にロックマンが選択したのは、ガッツマンがいる岩山ステージ。
  ステージスタート地点に転送可能な座標があり、研究所から直接そこへ転送された。

  ピチャッ!
 「ここが…ガッツマンが待ち受ける。岩山ステージ…」
 「メットメット〜〜!」
  さっそくスタート地点に配置されている工事用ザコキャラ、メットールがロックマンに向けて弾を撃ってきた。
「おっと!」
  ロックマンは瞬時にその弾の軌道を読み、ジャンプでかわし、ロックバスターで反撃。
  ズドドド!!
メットールを3体、撃破した。
  ドカァアーーン!
 「よし、この調子で先に進むぞ!」

  ガガガガガガガガ…
 ロックマンが進むその先には空中で移動するリフトが動いていた。そしてその下に広がるのは底なしの穴。
 先にある地面があるところまでは空中にあるリフト数個しかない。いくら戦闘用に改造されたからといって、
この穴に落ちたら、ロックマンとて、ただではすまないだろう…。
 「よし、リフトの動きを見極めて…」
  タイミングを計ってジャンプでリフトへと飛び乗る。
 「よし!」
  しかし…!
  カタッ…
 リフトが傾き、ロックマンはリストに足を乗せることが出来ずに、下へと落下した。
 「うあああああああああああああああああぁぁぁぁああーーーー!!!!」
  戦闘用ロボット、ロックマンに生まれ変わってから、初めて経験する死。
 奈落の底に猛スピードで落とされ、一瞬で身体が破壊される痛みと共に意識が遠のいていった。
  ティウンティウンティウン・・・


 ピチャッ!
 「ここは…!」
  気づくと、またステージ開始地点に転送された。ロックマンの身体は穴に落ちる以前の、完全に無傷な状態。
だが、ロックマンが穴に落ちるまでの記憶が頭の中に残っていた。
 「穴に落ちて、身体が破壊され、ステージ開始地点に戻ったのか。これが、残機システムによる死からの復活…」
  1度死を経験してからの復活。不思議な感覚に違和感を覚えながらも、ステージを攻略する目的を思い出し、
 再び、メットールを3機撃破していく。
  ズドド! ドカァーーン!
 「雑魚ロボットも復活しているのか…」

  ガガガガガガガ…。
 先に進むと、先ほどミスしたエリアの移動するリフトの音が聞こえてきた。
 「今度こそ…、失敗はしないぞ…!」
  ロックマンは気を落ち着かせ、リフトの動きをよく見る。しばらく眺めているとリフトは一定のパターンで
動いていることが分かった。リフトが傾く時はレールが途切れているポイントを通過する時だ…。
ならば、このタイミングを見極めれば…!
  攻略方法を分析し、リフトのエリアをクリア出来る見込みを見出すことができ、いくらか希望が持つ事が出来た。
「よし、いくぞ…!」
  覚悟を決めたロックマンはタイミングを計り、ジャンプで飛び乗った。そしてリフトが傾く箇所でジャンプをして、
 下へ落ちる事を避けていった。
  1つ、2つとリフトを飛び乗っていく。
 「よし、いいぞ…!」
  あと少しで次の地面へたどり着きそうだ。と、そう思った矢先…、
 「うああああぁああああ〜!!」
  ジャンプのタイミングを誤り、傾いたリフトによって下の穴へ落下してしまった。
 (あと少しだったのに…!)
  ロックマンの身体は爆発を起こし、粉々に破壊された。
  ティウンティウンティウン・・・


 ピチュッ!
  そしてスタート地点へ戻り、記憶データはそのままに、身体は新しく生まれ変わっていた。
  ロックマンは今の状態を確認しようと、先に進む前にバスターを操作して、ステータス画面を表示させた。
  ピロロ…。
 「うあ…、残機が残り0…」
  つまり、今度死んだら直前の場所からの再スタートが出来なくなってしまう。今はまだスタート地点だから
死んだ後の再スタート地点はこのステージ最初の場所と同じだが、先に進めた後で途中で残機0で死んでしまった場合、
 一度研究所に戻って残機の補充をするため、再びチャレンジするのは強制的にステージ開始地点になってしまう。
 「それならばいっそのこと…」
  そうだ、ここでわざと死んでおいて、研究所で残機を2つ補充してからまたステージを再チャレンジした方が
 これから先の展開が有利になるのではないか。
 先に進んでしまってから残機がなくなり強制的にスタート地点に戻された時の精神的ダメージは計り知れない。
  そう考えたロックマンは、かっこ悪いと思いつつ、この回ではわざと死んでみることにした。
 「どこで死のうか」
  スタート地点のメットールの攻撃を連続で食らって死ぬことも出来るが、1発のダメージが少ないため、
 時間がかかりそうだ…。どうせ苦しんで死ぬなら、一発で死にたい。
  メットールを撃破した後の何度もミスったリフトエリアの穴へ落下するなら、1回で死ねるし、簡単だ。
 「この生まれ変わった新しい僕のボディには悪いけど、1回死んで、残機を2つ補充してから再チャレンジしよう」
  無益な殺生は避けたいロックマンはメットールは撃破せずに攻撃を受けてダメージを受けつつもジャンプで避け、
その先のリフトエリアで、初めて自ら飛び降りて自爆する事を決意した。
 「これから先の戦いをより、有利に進めるためだ、仕方ない」
  ロックマンはわざとリフトから足を踏み外し、下へ落下した。
 「うあああああああぁあああああ〜〜〜!!!!」
  何度経験してもこの即死穴は慣れない…。
  ティウンティウンティウン・・・。
  GAMEOVER。

  研究所。
 「ただいま」
 「おお、ロック!無事に戻ってきて何よりだ」
 「いえ…、それが…」
  ロックマンはライト博士に今までの経緯を説明した。
 「何ということだ、ワイリーのやつめ、これほどまでに凝ったトラップを用意していたとは…」
 「残機システムがなかったら、今頃、僕は…」
 「諦めるのはまだ早い。メンテナンス完了じゃ!」
  話しながらライト博士はロックマンの1UPアイテムを2つ作り出して残機数を補充させた。
 破壊されてもこの1UPで2回までは直前のエリアで復活出来、記憶データは継続される。
それがなくなってもステージは始めからやり直しになるが研究所に戻れば残機数を補充する事が出来る。
 「やられては立ち向かい、やられては立ち向かい。トラップや敵のパターンを読み取る洞察力と、
 諦めない心があれば必ず打ち勝つことが出来るはずじゃ」
 「はい、諦めずに再チャレンジしてきます」
  ロックマンは再びガッツマンが待ち受ける岩山ステージへ向かっていくのであった…。
 果たして今度はステージクリア出来るのだろうか…。



ELITE HUNTER ZERO