√エレックさんより短編小説「ターボローダーのメモリーデータ」
本家7のザコ「ターボローダー」が主人公の短編です。
僕の名前は小林優斗、日本の小学2年生。
今の僕らの住む街では昔に比べて人間サイズのロボットや、
犬や猫サイズのロボットを多く見かけるようになってきた。
彼らロボットたちは次第に僕ら人間達の生活に溶け込んでいってきている。
「はぁ〜」
学校の帰り道。
僕は体育の授業のマラソンでライバル視している友人にまた追い抜かれた事で落ち込んでいた。
道中、横断歩道で考え事をしながら俯いて歩いていたところに猛スピードで車が迫ってきた。
「危ねえっ!」
車にひかれそうになった所を一体のタイヤサイズの一輪型ロボットが現れ、
すれ違いざまに上に乗っけて僕を救出した。
安全な所まで運んだ所で僕を降ろす。
「大丈夫かい?」
「君は…?危ないところを助けてくれてありがとう」
「オイラの名前はターボローダー。先日作られたばっかのしがないロボットさ。
散歩がてら見回っていたら事故にあいそうな少年を見つけたんで、ついでに救出したってわけさ」
「そうだったんだ…。僕は小林優斗、小学2年生、よろしくね」
「ああ、よろしくな。じゃ、オイラは街をもう一回りしてくらあ。道中気をつけろよ」
「うん!」
僕は手を振ってターボローダーと別れた。
それから数日間、学校の帰りにちょくちょくターボローダーと出くわすことが多くなり、
色んな事を話したり、ボール遊びなどで遊んだりするようになった。やがて僕の中で大切な一人の友人となっていた。
そんなある日、いつものように学校帰りにターボローダーに出くわした。
「やあ、また会ったね」
「…」
その日のターボローダーはなぜか普段より口数が少ない。僕はその調子が悪そうな様子を気にかけていたが、
「…なあ、優斗は夢はあるか?」
「夢…?昨日はゲーセンで遊び放題の夢を見れて楽しかったなあ」
「そっちの夢じゃねえ、将来何かになりたいとか、何かしたい、とか、の夢だよ」
「う〜ん、将来か〜。まだこれから先の事はよく分からないけど、もっとたくさんのロボットたちと
仲良しになれる未来が来るといいな」
「そいつはいいな」
「ターボローダーは何か夢があるの…?」
「ああ、あるぜ。この生まれ持ったタイヤをフル回転させて、世界中の道路を駆けめぐる事さ」
「世界中か〜。そいつはでっかい夢だね」
「だろう?」
「あ、そうだ、僕が大人になったら、一緒に世界中旅しようよ。それなら夢も叶うよね」
「…」
「それでついでに世界中のロボットとも仲良くなるんだ〜」
「…わりぃ、優斗。それは約束出来ねぇ…」
「え、それってどういう…」
「元気でな…。車には気をつけろよ」
そう言い残してターボローダーは去って行った。
それから数日後。脱獄したワイリーが送り出した4体のロボットがロックマンに破壊され、
ロボット博物館からガッツマンが奪い去られる事件が起きたのもつかの間、ワイリーが新たに
作り出した別の4体のロボットが各地で暴れ、占拠していた。
タイヤ倉庫。
「次はいつここにロックマンが攻めてきてもおかしくない。各員戦闘配置につけ」
ターボマンが仕切るこの倉庫でステージにいる雑魚や中型ロボットたちに指示を出していた。
バッコーン、トリオ・ザ・ホイール、トラックジョーなどがいる。
ターボローダーが遅れてやってきた。
「ターボローダー、今までどこ行ってた?ワイリー様に作られた目的、分かってるよな?」
「あ、ああ。ちょっくら周りの様子を見にな」
そしてそのまま他のザコと並んだ。
「オレがステージしょっぱなでロックマンの野郎をひき殺して差し上げやすぜ」
トラックジョーは急遽トラック運転手として任命され、無免許だがトラックに乗ることに。
トラックは倉庫内の広い場所以外は入りきらないため、ステージ序盤の基地の外での配置となった。
「あとは俺以外にも何体か雑魚を配置させればロックマンを倒す確率も上がりやす!」
トラックジョーの提案でターボローダーもステージ序盤での配置となった。
「ロックマンが攻めてきたときは同時に挟み撃ち体当たりのコンボ攻撃を頼むぜ」
「あ、ああ!任せとけ!」
意気込んで返事をしたものの、内心ターボローダーは、
(これまでワイリー様のロボットが勝った事なんて一度もない。こんな通常のステージの
、しかも序盤では、あっけなくロックマンに破壊されるのがオチだろうなぁ。つまりはここがオイラにとっての墓場に…)
ロックマンを倒し、ワイリー様の世界征服の野望を叶えるという、自分が作られた当初の目的を思い出し、
覚悟を決めてターボローダーは配置についた。
それから数時間後。
「来やしたーッ!青い少年型ロボット、ロックマンがこのステージに攻めてきやしたーっ!」
双眼鏡で遠くから眺め、攻めてくるロックマンを確認したトラックジョーが叫んだ。
(いよいよ…か!)
戦闘態勢に入り、ターボローダーを始め、雑魚ロボット達に緊迫した空気が流れる。
「ワイリーめ、こんなところにまで基地を作っていたのか!」
「おっと、ここは安々とは通しやせんぜ!」
ステージに侵入してきたロックマンの背後をトラックジョーがトラックでひき殺そうとじわじわと迫る。
ターボローダーは作戦通り、挟み撃ちで体当たりをしようと駆け出す。
「くっ!後方からトラック、前方から雑魚ロボットたちの挟み撃ちか」
「ステージ序盤でやられろ!」
ロックマンを発見し、ダメージを与える為、ターボローダーは突進した。
「まずはザコをバスターで一掃だ!」
ズドドドドド…!
「うわー!」
ドカァアーー!!!
ターボローダー達はあっけなく破壊された。
「倉庫の入り口に挟み撃ちにされる前にエネルギーチャージ!」
ヴィヴィヴィ…
「チャージショットッ!」
ロックマンは背後に身体を向け、巨大な溜め攻撃をトラックジョーに放った。
「ぐあああああーっ!!」
ドコォォォーン!!!
トラックジョーは大爆発を起こして破壊された。
ステージ序盤の難所をクリアしたロックマンはそのまま倉庫の基地内部へと侵入していった。
こうしてターボローダーは短い一生を終えたのであった。この事件の後、ターボマンを始め、
ボス級ロボットは修理されたが、雑魚ロボットが修理されることはなかった。
数年後。
ロボット工学に興味を持ち始めた小林優斗はロボット博物館に来ていた。
そこで過去にロックマンに倒されたワイリーメカの展示コーナーがあり、その中に見覚えのある
一輪型ロボットを見つけたのであった。
「ターボローダー…」
彼はこの時初めて事の真相を知ったのであった。
ELITE HUNTER ZERO