零夢さん(元スプラッシュさん)よりゼロアイ小説1
二百十七話「夏遊び・海」
コマミ終了の1週間後。
ハンターベースのみんなで海にやってきた。
ちなみにメンバーはゼロ、アイリス、リル、ライク、ホー、ゼーラ、ヴァジュ、ベル、アクの9人。
Xは仕事で来れなかったため、マーも来ていない。
(ハンターの中の上位レベルが全員居なくなるわけにいかなかった)
「ヒャッホ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!海だ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」
アクが叫びながら砂浜でダッシュして海に飛び込み、大きな水柱が立った。
それを見たベルカナがクスリと笑いながら一言。
「まぁ、あのボウヤったらはしゃいじゃって。可愛いわ♪」「む・・」
それを聞いて面白くない顔をするヴァジュ。
「あら、ヴァジュ様ったらジェラシー?」
「そんなんじゃないですよ・・。」
「まぁまぁ機嫌直して、ほら、サンオイル塗ってくださらない?」
オイルを持ってヴァジュに顔を近づけるベル。
その唇が頬に触れそうになった瞬間・・
「自分で塗れ、そんなもん!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ちょ、ちょっとぉ!なにも鴉形態で怒ることないじゃない!!
な、なによあんなガキ!わめきながら飛び跳ねてるだけで全っゼンかわいくないわよぉ!!」
「ちょ、ちょっと!何があったか知らないけど突然ひどいこといわないでよぉ!!!」
「さ〜て、俺たちも泳ぐかっ!!」
肩を鳴らせながらゼロが一気に飛び込む。
「俺もっ!!!」
ホーも続いて飛び込み、どちらもアクの時よりはるかに大きな水柱が立った。
だが、アイリスがゼロを呼び止める。
「まってあなた!ライクとリルに泳ぎ教えてあげるんでしょ〜!?初めてなんだから!ねえ?」
「パパ〜!一人で泳がないでよ〜!」
「私達初めてなんだよ〜!?」
ライクとリルは、今日初めて海に来た。
と、言うより泳ぐのが初めてなのだ。
「あ〜そうだったな!じゃあ早く入って来いよ!」
「は〜〜〜〜い!」
ゼロに言われてすぐに入ってくる二人だが、いきなり泳げるはずも無く
バシャバシャと両手足を動かして沈まないようにすることくらいしかできない。
「ちょっとあなた!!いきなり入ってこいったって無理よ!
まずは浮き輪を使うとかして水に慣れさせなきゃ!!」浮き輪を投げながら怒るアイリス。
ゼロは浮き輪を受け取って二人につけさせた。
「わ〜ったよ!ったく、難しいもんだな・・」
「よ〜し、10メートルいったな。」
「やった〜〜!」
一応、浮き輪無しでも少しずつ泳げるようになったライク。
だが、リルはどうしてもうまくいかない。
「あ〜ん沈んじゃうよ〜〜〜!!」
「お、おいおい・・・大丈夫か?」
沈みそうになったがすぐにゼロが救出して一旦、砂浜に連れて戻った。
「大丈夫?リル?」
アイリスが心配するが、リルは落ち込んでしまう。
「自転車の時もお兄ちゃんより遅かったし・・。」
「大丈夫よ!練習すればうまくなるわ!
さ、そろそろ行きなさいよ、ライクにおいてかれちゃうわよ?」
「でも・・・」
その時、またも巨大な水柱が立ち、その中からブラックゼロが現れた!!!!
「わ・・・」
キラキラと輝く水しぶきの中に居る黒に一瞬見とれるリル。
「お〜?お前らも来てたのか!」
「あ〜〜〜〜!!おじちゃん!!!」
一気に元気になったリルが砂浜に上がってきた黒に飛びつく。
「おじちゃん!泳ぎ教えて〜〜♪」
それを見て半ば呆れ顔のアイリス。
と、いうより呆然としているのだろうか?
「私よりゼーラちゃんに似た感じね・・」
「そ〜みたいね・・・。」
「ね〜ね〜、海入ろ〜〜♪」
しきりに黒を誘うリルだが、ある気配に気付く。
黒の後ろからもう一つ影が現れた。
サラーも一緒に来ていたのである。
「待て。ゼロとのことは私が先約だ。引っ込んでいてもらうぞ!」
子供相手だが、純情なサラーは手加減しない。
歯を食いしばってリルを黒から話そうとする。
「あ〜!サラーさん、おじちゃんと一緒に来てたのね!!ずる〜い!!」
「なにがずるいかっ!いつもいつも飛びついているような貴様に言われる筋合いなど無い!!」
「なによー!だったらそっちも飛びつけばいいじゃない!こんな風にっ!!」
黒の腕に体全体でしがみつく。
「なっ・・・そ、そそそそんなことができるかぁあっ!!」
それを見て真っ赤になって怒るサラー。
いつものケンカが始まってしまった
・・が、黒はのんびりと海に浮かんで、あくびまでしている。
(リルは喧嘩開始時に離れた)
「ふぁ〜・・・・」
「おいおいブラック、浮かんでね〜で止めろよ。」
「ん・・仕方ね〜なぁ・・おい!
リルもサラーもやめろ!泳ぎ教えるくらいなら両方いっぺんに面倒見てやっからよ!!」
その大声で喧嘩というか・・周囲の動きが止まった。
「・・・・・・え?」
「・・・・・・・・う。」
「サラーさんも・・泳げないの?」
あたりがシーンと静まり返った。
そう、サラーも泳げなかったのだ・・。
「へ〜、大人なのに泳げないんだ〜♪」
「う・・うるさいぃ!!だ、だからここで・・練習・・・うぐぅ・・・・」
その時、海のほうからまた声が。
「おい!いつまでやってんだ!早く海に入れっ!」
「は〜い!」「あ、ああ・・。」
黒にいわれて二人で海に入っていった・・。
そして、1時間後。ゼロとアイリスは、
砂浜でライク達の泳ぎを見ながら二人で座っている。
「ライク、かなり上達したわね。」
「ああ。リルもそこそこ泳げるようになってるみたいだしな・・」
「・・あなたは泳がないの?」
「ああ・・っていうかなんで『あなた』になったんだ?呼び方・・」
ゼロの質問に対し、アイリスはちょっと考えるそぶりをしてから、笑顔で答えた。
「う〜ん・・・忘れちゃった、エヘ♪」
「『エヘ♪』じゃねえだろ・・まあいっか。」
「あ・・!」
アイリス、今度はゼロの顔を見て凄く驚いた表情をする。
ゼロもそれを見て不思議がる。
「・・・どうした?」
「・・・今のあなたの『エヘ♪』・・・」
「なんだよ?」
「すっごく可愛かった・・・」
「う、うるせー!!」
そこに、ホーとゼーラがスイカを持って歩いてきた。
「ねーみんな、スイカ割りしよ〜よ♪」
「かなり冷えてっぞ〜!」
全員が砂浜に集まってくる。
キラキラ光る水滴がスイカにくっついていて、とても冷えているようだ。
「お〜、いいですねぇ。では、どなたからはじめますか?」
くじ引きで、最初はアクがやることになった。
それぞれがアドバイスを送る。
「アクセル君!右よ右!」
「違う違う!左だ!!」
「そのまままっすぐ行け!」
「いや、後ろだ!」
「ちょ、ちょ〜〜っとぉ!みんなしてバラバラなこといわないでよぉ!
なんだよ『後ろ』って!!」
そして、結局外してしまった。
「チェ〜、次は誰だっけ?」「私だよ!」
今度はリル。
「頑張るからみててね、おじちゃん♪」
「おう、うまくやりな!」
「・・・外せっ。」サラーが小声で悪態をついた。
そして、それをリルは聞き逃さなかった。
「な、なによぉ!私が泳ぎ上手くなったからってそーゆーこというの!?
おじちゃんにも嫌われるわよっ!」
「な、なにぃ〜〜〜〜〜〜!!」
「もうよせってのに・・」
ゼロが自分の頭に手を置きながらため息をつく。
「・・あれ?どうしたんですか隊長?」
「いや・・リルの将来が心配になってきた・・伯母似だし・・」
「お兄ちゃん!なんで私に似たら心配になるのよ!?」
「いや・・悪い・・俺は寝る・・・」
「だ、大丈夫あなた?」
「ああ・・順番来たら起こしてくれ。」
そういってゼロは寝込んでしまった。
無関心に見えたこともあるがやはり娘のことは心配なようだ。
ただそれでもスイカ割りはしたいようだが。
そして、リルは失敗し、今度はヴァジュの番。
「さぁって、次はこの私ですよ♪」
「ヴァジュ様〜がんばって〜!」
「は〜い♪」
そして目隠しを巻いて・・・なんと、スイカのほうまで一直線にダッシュ!
「はああああっ!!!!」
グシャアアアッ!!!!
・・・・・スイカが砕け散った。
しかも、ヴァジュの足で。
「・・・踏み潰しちゃったんだね・・」
「ああ、踏み潰したんだな・・・」
あたりはまた静まり返ったが、ゼーラがもう一つスイカを用意した。
「大丈夫大丈夫!まだもう一個あるから!次はライク君だったよね!?」
ライク、アイリス、ベル、ゼーラと続いたが全員失敗に終わった。
そして・・
「次は俺だ!」意気込んで、ホーが挑戦。
「ホーネック〜!左、左ぃ!!そ、もっともっと前進して〜〜!!」
「(ん?変な方向に曲がったような。いいや、ゼーラさんを信じよう)・・ん?」
「引っかかったわね・・」
「え?・・・わああああああああああああああああっ!!!!!!!」
ゼーラの誘導によってホーはゼーラのすぐ近くまで行かされた挙句
抱きつかれて悲鳴を上げた・・・。
「相変わらずね〜二人とも・・」
「・・次は私の番か。」
今度はサラーの番。
だが、持っている者がどこか違う。
・・棒じゃなくて、戦闘用の鎌だ!!
「お、おい!それじゃねえだろ・・・」
「はああああっ!!!!!!!」
黒が止めるのも聞こえず、サラーはスイカに向かって
ダイヤモンドブレードと秘奥無尽剣を炸裂させてしまった・・。
スイカが切れ、地面が割れ、近くにあったビーチパラソルも吹き飛んだ・・・・。
「なんであんなもん使うんだよ!しかも技まで!」
「す、すまん、つい・・」
なぜかホーに怒られるサラー。
そこに、リルが切れたスイカを取って、食べた。
「おいしいっ!」「・・え?」
「美味しいよ、このスイカ!」
アイリスも食べてみる。
「ホント、切断面が綺麗だと食感もいいのよね。」
「え・・そうですか?じゃあ・・」
ホーも食べてみると、確かに美味しい。
他の全員も食べてみて、口々に賞賛する。
「へえ、これは美味しいですね〜。」
「かなり上等の切れ方よ。」
「ま、結果オーライだねっ!」
「そ、そうか・・それなら良かった・・。」
「なんだよ、俺の出番無しか・・」
「そういうなよ。俺も無しだったぜ?」
ゼロと黒は出番がなかったが、美味しいスイカを食べて一応満足したのだった・・。
そして、楽しかった時間も終わり、日が暮れてきた。
みんな、車に戻っていく。
黒とサラーは別の車で来たので、まだ居ると言う。
そしてリルは、まだ黒と話している。
「おい、リル!そろそろ帰るぞ〜!」
「は〜〜〜い!」
「・・待て。」
リルも走っていこうとすると、サラーが呼び止めた。
「なに?サラーさん。」
「いや・・・さっきは・・ありがとう。」
「ううん、いいよ!それより・・・さっきはごめんね。からかったりして。」
「いや、構わん。では・・またいずれ会おう。」
「うん!バイバイ!!」
そして、リルは手を振りながら帰っていった。
それを同じく手を振りながら見送るサラー。
車が見えなくなるまで、手を振っていた。
そして、そのまま夜になる。
サラーは寝そべっている黒の横に座り、やさしい表情で星を眺めていた・・・。
二百十八話「夏遊び・祭り」
今日はヴァジュがベースに残り、ゼロ、アイリス、リル、ライク、ホー、ゼーラ、X、
マー、アク、ベル、黒、サラーで夏祭りに遊びに来た。
「あ〜あ、今日はヴァジュ様お休みでつまんない・・」
「いや、仕事だから。仕事。お休みじゃないから。」
残念がるベルにアクがワタアメを食べながらツッコむ。だが、ベルはアクを睨みつけた。
「うるさいわねっ!大体あなたのせいで海に行ってしばらくの間口利いてもらえなかったのよ!?」
「ちょ、それボクのせいじゃないよ!!何キレてんのさ!!
っていうかヴァジュリーラと一緒にいたいならハンターベースいけばいいじゃん!
そんで12時くらいに誰も居ない夜のベースでイテッ!!」
今度はホーに叩かれた。
「子供の前で変な話すんな!」
「いてて・・あ、金魚すくいだ!やって行こーよ!」
「よーし、俺と勝負するか?」
金魚すくいと見て目の色を変えるゼロ。
浴衣の袖をまくって腕を出し、かなりやる気だ。
そして5分後、ゼロの網が破れた。
「チッ!終わっちまった!!」
「よく言うよ!僕なんか最初の一回で終わっちゃったってのに!
なにイヤミっぽく悔しがってんの!」
「パパすご〜い!」
「20匹もとっちゃったんだ!!」
子供達は、夏祭りも初めてで、ゼロがすくった金魚20匹を見て大はしゃぎ。
ちなみに、アクは1匹すくっていた。
「ねえホーネック、そこのお店で射的やってるよ?」
「あ、本当だ。1回、やります。」
200円払って銃を受け取るホー。
その時、ホーは5年ほど前の夏祭りのことを思い出した。
「・・・そういえば何年か前にもやりましたよね。
ゼーラさん、狸の人形を熊の人形と間違えて・・」
「そ、それは言わないでよぉ!・・え〜と、今日はあのウサギさんがいい!」
「はいはい・・と。」
ゼーラに言われて、銃口をウサギに向けるホー。
だがその時、あるものを見つけてしまった。
「(アレは・・伝説の銃ワルターP38のモデルガン!!・・・・やべえ、欲しい!!!)」
火力武器の多いホー。
実は、彼は銃器好きだったのである!!
「銃・・ウサギ・・銃・・ウサギ・・」
迷いまくるホーを見て不思議がるゼーラ。
「ちょっと〜、何やってるの?早く撃ってよ!!」
・・・・言いながら、ホーの顔の横に自分の顔を近づけた!!!
「・・・・・・・・・わああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
迷っている中で突然現れたゼーラの顔に、ホーは心底驚いた!
思わず銃をまったく別の方向へ撃ってしまう。
「あっ・・・!!!」
そして、弾丸は店のオヤジのカツラを吹き飛ばしてしまった。
「あ・・・・」
二人でボーゼンとなるホーとゼーラだが、すぐに逃げ出した。
「ご、ごめんなさ〜〜〜〜〜〜い!!!!」
「ま、待て〜〜!!!・・・逃げられた。」
追いかけようとしたオヤジだが、ホーのスピードについていけるはずもなかった。
(むしろ追いつけなくて良かったかもしれないが)
そしてその頃、黒とサラーとライクとリルは輪投げで遊んでいた。
「やったぁ!『ボックバンG』取れたよ!!」
ライクは前から欲しかったゲームを手に入れて大喜び。
リルも可愛い馬のぬいぐるみを取れて喜んでいたのだが・・・。
「ぬううううううっ!!!!!なぜだぁ!!!何故とれん!!!!」
サラーは何度も失敗してしまっていたのだった・・。
「お前も下手だな〜・・・そろそろ他行こうぜ?」
「ま、待ってくれ!!今度こそは・・・!!」
半ば呆れ顔の黒に、何度も「次こそは」とせがむサラー。
自分の金を出しているのだが、まるで子供が親にせがんでいるかのようである。
「しょーがねーな、あと一回だぞ!」
「あ、ああ!わかった・・よし、今度こそ入れて見せる!」
そういって輪を持って構え、欲しい景品のバッグを激しく睨みつる。
その体からオーラのようなものが流れる。
「サラーさん、そこまでしなくてもいいと思うんだけど・・」
「まぁ黙って見ててやれよ・・。」
「ハアッ!!!!!!」
サラーの投げた輪は、見事バッグに命中、破壊してしまった・・。
ボーゼントしてそれを見ているリル&ライク、そして店のお兄さん。
ライクがつぶやいた。
「これは入ったとは・・」
「言わねーな。ってーか弁償させられるんじゃねーのか?」
「あ、う・・そ、そんな・・・あああ・・・・!」
がっくりと気を落とすサラー。
「い、いや、一応入れてはいるし・・弁償はしなくていいですよ!は、はい。」
弁償せずに済んだものの、やはり落胆したままのサラーだった・・。
その時、アナウンスが入る。
「え〜、まもなく8時50分から広場で花火の打ち上げを行います・・・」
それを聞いて周りの人々がドッと広場に向かって歩き出した。
黒もサラーを元気付けようと花火に誘う。
「花火か・・おいサラー、花火見て機嫌なおせよ!」
「あ、ああ・・。」
「リルちゃん、ライク、花火見に行くぞ・・あれ?二人はどうした?」
「・・・な?」
なんと、先ほどまでいたリル&ライクがいない。
恐らく先ほどの人波に飲まれてしまったのだろう。
「よし、広場行くぞ!多分そっちの方にいってるはずだからな!!」
二人は広場の方へ飛んでいった。
飛行中も下を見て探してみたのだが見つからず、
広場に行っても探し当てることができなかった。
「まずいな・・取り敢えずゼロ達に知らせとくか。」
連絡するとゼロとアイリスはすぐに広場にやってきた。
「ライクとリルがいなくなったって本当!?」
「ああ、人波に押されてったみたいでよ・・」
「チッ・・取り敢えずでかい声でも出してみるか?」
と、ゼロが息を吸い込んだがサラーに止められる。
「無駄だ。多分花火の爆発音に消されてしまうだろうし・・
花火を見に来た客の邪魔になってしまうかも知れん。
「確かにな・・・迷子センターの呼び出しとかもこういうとき邪魔になるからな・・って」
4人で口をそろえて叫んだ。
「迷子センター!」
思い立ってすぐに迷子センターに行ってみた。
だが二人はおらず、放送してもらっても二人は現れなかった。
その頃、二人は困りながら手をつないで歩いていた。
丁度二人がいる辺りのスピーカーが壊れていたため、
放送も無駄に終わっていたのだ。
「パパ・・ママ・・おじちゃん・・」
「どうしよう・・知ってる人誰もいないよ・・」
そこに、ある男が通りかかり、しゃがみこんで二人に聞いた。
「お前ら、どうした?迷子・・か?」
二人はその男を見て、背筋がゾクッとした。
何故そうなったのか全くわからない。
何の変哲もないこの男に、何かを感じたのだ。
「あ、あの、みんなとはぐれちゃって・・」
「そうかぁ・・そりゃ大変だぁ・・ククク・・・」
男は立ち上がり、そのまま去ってしまった。
「なんだったんだろう、今の人・・」
「そんなのどうでもいいよ!これから私達どうしよう!?」
リルは少し泣いていた。
それを見てライクも泣きそうになる。
だが、兄であるからには妹の前で泣くわけには行かない。
そんな気持ちがあって、ライクは泣かなかった。
だが、妹を泣き止ませるには・・?
「・・そうだ!花火見に行こうよ!!」
「・・え?」
「凄く綺麗なんだって!パパやママたちも花火見に行ってるかもしれないしさ!
さ、いこうよ!」
そして二人は広場へ走った。
途中つまずきそうになったが、花火のあがっている方角を見て広場までたどり着いた。
「パパもママもいないよぉ・・」
「大丈夫だよ!きっと見つかるさ!!」
そこに今度は先ほどとは全く違う男が現れた。
「き、君ぃ、可愛いねえ・・迷子ぉ・・?」
・・・・書いてる作者さえ気持ち悪くなるほどの男が、二人の前に立ちふさがった。
リルはあまりの気味悪さに、涙さえ止まってしまう。
「あ、僕を見て涙が止まったね・・ヒヒ・・・」
「リル、逃げよう!!」
ライクはリルの腕を引っ張って走った・・!
逃げようとしたライクだが、男は太っている割に足が速く、追いつかれてしまった。
「怖がることはないよぉ・・さ、一緒にお父さんやお母さんを
探してあげるから・・うヒヒ・・」
ーーーーーーーープツン。
「・・・・え?」
ーーーーーーーープツン。
「・・・・い?」
二人の中の、何かが切れた。
「俺を目覚めさせて、どうしようって言うんだ・・」
「私を怒らせて何をしようって言うの・・」
その頃、Xとマーは広場の方へ走っていた。
「まったくもう!なんで花火が始まることに気づかなかったのよ!!」
「マーティが舞台の演歌なんか聞いてたからだよ!
普段、全然そんなの聞かないくせに!!」
すると、アナウンスがまた入った。
「みなさん、花火はいかがでしたでしょうか。また来年・・・」
「あ〜も〜〜!終わっちゃったじゃない!!」
「だからマーティのせいだろ!?」
「うるっさいわねぇ!!!消し炭弁当口に叩き込むわよ!?」
「消し炭ってわかってて食べさせてたのか!?ひ、酷すぎ・・・」
ドーン・・・
「・・・えっ?」
花火は終わったはず。
なのに、なぜか音がする。
その方向に行ってみると・・・!
「ライク君、リルちゃん!?」
いたのは、不思議そうな顔をして辺りを見回すリル&ライク、
そして仰向けで口から唾液を垂れ流しながら倒れている気味の悪い男。
「うっ、何こいつ、気持ち悪・・」
「Xさん・・僕たち、みんなとはぐれちゃって・・」
ライクが説明すると、Xはすぐにゼロに連絡してくれ、ゼロ達はすぐに飛んできた。
「ライク!リル!」「やっと見つかった・・!」
「パ・・パパぁ!!!!」
ゼロに呼ばれ、満面の笑顔でゼロの胸に飛び込むリル。
よほど怖かったのだろう、ワンワン泣いている。
だが、ライクは涙をずっとこらえていた。
以前、父親が戦いから帰ってきたときに飛びついて泣いた事もあったのに、
今ではそれをしない。
ライクもまた、男として成長しつつあるのだった・・。
ELITE HUNTER ZERO