晴嵐華さんよりロックマンX小説9「WANTED」
第一話
「あーあ、こんなにしちゃって、後であいつら始末書ね。」
フー、と溜息を付くのは、ハンターベース総司令官であるジルバ
「ったく、だれが庇うと思ってるんだか・・・。」
頭を抱え、三人分の始末書を用意し、補佐レプリロイドに
そのレプリロイドに渡す様に言う。(レノン、カーネル、英鴻)
「まあ良いか、あいつらも辛い出来事がたくさんあったんだし、これくらいは許してあげようかな。」
「ジルバ様、お届け物が届いていますが。」
「届け物?おかしいわね・・・何も頼んだ覚えは無いのに・・・
まさか・・・あなた速くそれを捨てなさい!!」
「え?・・・・キャッ!!」
ジルバがクスクス笑っていると、1人の女性レプリロイドが入ってきて、
ジルバに何やら箱を手渡すが、その瞬間箱が大爆発を起こす。
ドッカーーーーン!!
その頃レノン達は・・・・。
「フッフッフ〜・・・英鴻・・・・覚悟!」
「行け!レノン!」
「ワタシは捕まらないね!」
まだ英鴻との鬼ごっこを続けていた・・・。
ドッカーン・・・・。
「な、何だ??爆発の方向は・・・・ハンターベースじゃねぇか!」
「何だと!?英鴻!鬼ごっこは一時中断だ!ハンターベースに向かうぞ!」
「分かった、さあ行け!カーネル!」
「って何でお前が乗っかってんだよ!」
「フッフッフ、レノン君よ、人には向き、不向きがあるのだよ。」
「どうでも良いが行くぞ!」
ハンターベースの方で爆発があり、急いで向かおうとするカーネルの肩に
英鴻とレノンが乗り、ハンターベースに急いで向かう。
「ほら、ゼロ頑張ってもう少しだから。」
「あ、ああ・・・・終わった・・・後で英鴻に渡さんとな・・・。」
そしてゼロはと言うとたった今始末書を書き終わり、グッタリしているゼロと
笑顔で「お疲れ様」と言う通常アーマーのアイリスが居た。
(メイド服はゼロが顔を真っ赤にして仕事にならない為、着替えた。)
「ゼ、ゼロ!!大変だ!ジ・・・ジルバが・・・・!」
「どうしたの?エックスさん、ジルバさんならお仕事をなさってるけど・・・?」
「・・・・落ち着け、ジルバに何があった?」
「スーハースーハー・・ハァ・・・
前からハンターベースに脅迫状が送られてたのは知ってたよね・・・?」
息を荒げながら、ゼロの元へ来た、エックスをアイリスは不思議そうな目で見つめ、
ゼロは落ち着く様にうながすと、エックスが深呼吸をし、ポツリ、ポツリと話し出す。
「ああ、だがジルバが関与する必要性が無いと、無視していたが・・・まさか・・・。」
「ま・・・まさか・・・。」
ゼロとアイリスが何かに気付き、顔を青くする
「そのまさかだよ、ジルバに脅迫状を送り続けてたレプリロイドが
検査機にも引っかからない特殊な爆発物を送ったんだよ、
それで補佐レプリロイドは安心してそれを持って行ってジルバに渡したんだけど
ジルバがおかしい事に気付いて、爆発寸前に外に投げたのが幸いで・・・
命は取り留めたみたい・・・重傷だけど。」
エックスも拳をふるわせながら言う。
「ゼロ、ジルバさんのお見舞いに行きましょう、ソニアを連れて。」
「ああ、あいつには何回か世話になってるしな。」
「うん、そうしてあげるとジルバも喜ぶよ。」
いちおうジルバには恩があるらしく、皆でお見舞いに向かう。
「あー、死ぬかと思ったわ。」
「死ぬかと思ったって・・・あれは間違いなく死ぬ状態だったぞ。」
「よく生きてたなー。」
「フーム、これは大事件ですな、ハンターベースの全指揮官を狙う事件。」
「まぁね、被害を受けたのが私だけで良かったけど。」
その頃レノン達は一足早く、お見舞いに来ていた。
「でも達悪いのよねー、あの爆弾に実はウイルスが入ってて、
手に負えないらしいのよ。」
「それは本当か?」
「ええ、本当、でもあと一ヶ月ほどすれば完治するって言ってたけどね。」
「そうすると一ヶ月は職務復帰は無理って事だな。」
「困ったことですな、その間の仕事は誰がやれば良いですかな・・・。」
「それは大丈夫、もう決めてあるから。」
アハハ、と笑いながら自分の体の事を笑うジルバが、
一ヶ月の間の指揮官を決める話になると真剣になる。
「もしかしてそれってあの堅物?」
「レノン、シグナスだ、いい加減に覚えろ。」
「ホホウ、ジルバさんが後任に選ぶくらいの人物だ、きっと立派な方なのだろう。」
「あ、今言っちゃうわね、それは・・・英鴻、あなたよ。」
「「い・・・・英鴻だと!?」」
第二話
「ワタシですか??」
後任を英鴻に指名するとジルバ以外が驚いた顔をする。
「ええ、こうみえて英鴻って結構優秀だからピッタリと思って。」
「・・・性格が問題だけどなー。」
「・・・ああ。」
「コラコラ、そこの二人、ワタシで良ければその役目、引き受けましょう。」
「ありがとう、いちおう形だけだから安心して、仕事は代わりの者にやらせるから。」
ジルバが理由を話すと、レノンとカーネルが嫌そうな顔をする、と英鴻がツッコム。
「まあ一生懸命役目を果たさせてもらいます。」
「信用してるわ。」
「・・・まあ一ヶ月だけだしな、なるべく始末書を書かされないようにしような、カーネル。」
「・・・私はほぼ書いてはいない、ほとんどゼロとアクセルだろう。」
ガチャッ!
その時、だれかが病室に入ってくる。
「ジルバさん、聞きました・・大丈夫ですか?」
「ジルバお姉ちゃん大丈夫―?」
「・・・生きてはいるようだな。」
「コラ、ゼロ。」
話の途中にゼロ一行がご到着。
「あら、お見舞いに来てくれたの?ありがとう。」
「体調はどうですか??」
「ええ、大分楽になったわ、ありがとう。」
「ジルバお姉ちゃん痛くない?」
「まあお前の事だろうから死ぬ心配は無さそうだが、いちおう来た。」
無愛想なゼロの言葉にアイリスがジルバにウインクするとジルバもアイリスにウインクし返す。
「別に良いのに、たかが一ヶ月の怪我でしょ?」
「一ヶ月の怪我だからと言って、油断するな、安静にしていろ。」
「はいはい、分かってるわよ。」
「じゃあジルバさんは私が見てるから、皆さんはお仕事に戻って?」
「そうだな、仕事に支障をきたす訳にはいかんしな。」
「てゆーか親父は何時始末書書き終わったんだよ、いつもはもっと遅いのによー。」
「まさか、ゼロさぼったのではないだろうネ。」
「そんな訳あるか!アイリスに手伝ってもらったんだ。」
「そうなのか、ならアイリス、ではお前も仕事に戻れ、ジルバは私が見ている。」
皆が退散しようとすると、カーネルがジルバの看病をすると言い出す。
「え、でも・・・。」
「良いのよ、アイリス、あなたは手の掛かる夫を見てて、
私はカーネルと昔の話でもしながらゆっくりしてるから。」
「ああ、ゼロから目を離すな、あいつは何をやるか分からない。」
「そう、じゃあ私、行くわね、ジルバさん、お大事にね。」
「傷は安静が一番ですヨ。」
アイリスがカーネルとジルバに説得され、部屋を出て行く。
「あれ、アイリスさん、どうしたの?」
「何かジルバさんとお兄ちゃんが良い雰囲気だから出てきたの。」
「そうか・・・あの二人って何時も一緒に居るしな・・・。」
「恋愛的要素ありって感じだな。」
「うむ、ワタシもそう思っていました。」
「れんあいてきようそ?」
色々可能性を予測して話す。
「って言う事は・・・ジルバが俺のお姉さんと言う事になるのか・・・?」
「そう言えばそう言う事になるわね、でもジルバさんとは付き合い長いから・・・
お姉ちゃんになって欲しいな〜。」
「んじゃ俺にとっては叔母さん。」
「カーネルさんとジルバさんが結婚したらどうなるんだろうなぁ。」
「想像がたやすく出来るのが怖いですネー。」
「もう!ソニア分かんない!!」
色々と話す内に少しずつ病院から離れて行く。
『ねえパパ、今日来る子ってどう言う子なの?』
『カーネルと言う子でな、ジルバと大体歳が同じだ、きっと仲良くなれるだろう。』
『そうなの??そのカーネルって言う子、パパが認めるから立派な人なの??』
『ああ、きっと立派になるぞ、私よりもな。』
ジェネラルの巨大な肩に乗りながら、幼き頃のジルバが今日会う、
幼き頃のカーネルの様子を話す。
『パパよりも立派な人なんて居るの?』
『ああ、沢山居るぞ、だからジルバもそう言う人になる様に育ってくれ。』
『うん!ジルバも立派な人になるよ!』
『さすがは私の娘だ、将来が楽しみだな。』
ジルバの将来の事を楽しそうに話すジェネラルを見て、ジルバも楽しそうに微笑む。
『は、初めまして・・・カーネルと申します・・・お会い出来て・・・光栄です。』
『ほほう、礼儀正しいな。』
『あなたがカーネル??』
『あ・・・あなたは??』
幼き頃のカーネルがジェネラルを目にして緊張している時にジルバが話しかける。
『私はね、ジルバって言うの、ジェネラルの娘だよ。』
『そ、そうなんですか・・・初めまして、カーネルと申します。』
『カーネル。』
『は、はい!』
ジルバがジェネラルの巨大な肩から降り、カーネルに微笑みながら挨拶すると、
カーネルも照れながらも、挨拶をすると、ジェネラルに声を掛けられる。
『ジルバとお前は歳も近い、是非仲良くしてやってくれ。』
『は、はい!光栄です!』
『宜しくね、カーネル。』
『あ、はい、こちらこそ宜しくお願いします。』
ジェネラルが笑みを浮かべ、カーネルに言うと、カーネルも笑顔を浮かべる。
これがジルバとカーネルの出会い。
第三話
『ジルバ、今時間あるか?』
『うん、あるけど・・・・ってその子誰??』
『ああ、紹介する、私の妹のアイリスだ、昨日起動したばかりだ・・・アイリス、ジルバにご挨拶は?』
『ア・・アイリスです・・・。』
『やーんv可愛い〜。』
ジルバの部屋をノックし、ジルバがドアを開けると、そこにはカーネルと見かけない少女が居た。
『ねぇカーネル!この子私に頂戴!』
『ハ!?ダメに決まってるだろ!私の妹だ!』
『え〜良いじゃない!私も欲しい!』
『ねぇお兄ちゃん!私お姉ちゃん欲しい!』
『ア・・アイリス!お前までそんな事を・・・。』
『ほら〜!良いじゃない!ね〜アイリスちゃん。』
『ね〜ジルバお姉ちゃん。』
『や、やめてくれ・・・・。』
アイリスとジルバは笑顔だが、カーネルは疲れ切った表情で言う。
「そう言えば、小さい頃、あんな事言ってたわね。」
「・・・・もうそんな事は思ってないだろうな・・・。」
「さあね。」
過去を楽しそうに振り返る。
「それよりも、いったい誰なのかしら、私に爆弾送った奴。」
「ああ、あの爆弾は特殊な物質、素人が手に入れられる品物じゃない。」
「何か、嫌な予感・・・。」
「ああ。」
そう言い、ジルバが窓の外を見つめると、先ほどまで晴れていたのが、ポツリ、ポツリと降り始める。
「ジルバ、私はこれで帰るが・・・安静にしていろよ。」
そうしてどうこう過ごす内に、面会終了時間が来て、カーネルがジルバに言う。
「ええ、分かってるわよ、カーネルも気を付けて帰って。」
「ああ、ジルバも気を付けろ、お休み。」
「お休みカーネル。」
ジルバが手を振ると、カーネルも笑顔で手を振りかえし、部屋を出る。
「フウ、さて・・・疲れたし・・・寝るかな・・・。」
カーネルと話していて、疲れがたまったのか、すぐにスリープモードに入る。
「スウー・・・・・スウー・・・・。」
ガチャッ。
ジルバの呼吸の音だけが響く部屋に、誰かが入る音が聞こえる。
「・・・・・。」
「スゥ・・・スゥ・・。」
「やっと・・・見つけた。」
謎の人物がジルバに向かって手を伸ばす。
「これで・・・終わるんだ。」
「終わらないわ。」
「!」
ジルバに何かを放とうとすると、スリープモードになっていた筈のジルバが目を開け、話す。
「貴様!騙したな!」
「フン、引っかかる方が悪いのよ、お馬鹿さん。」
「くっならば・・・此処で殺してやる!」
謎のレプリロイドが驚き、ジルバから離れると、ジルバが挑発し、レプリロイドが襲い掛かる。
「って・・・何でそうなるのよ!」
ドゴンッ!!
謎のレプリロイドの尋常では無い、殺気を感じ、ベットから飛び降りると、壁が粉々になる。
「俺の名はセル!覚えておけ!お前を殺しに来た!ハンター総司令官ジルバ!!」
「うっさいわね!私はまだまだ生きるのよ!」
「俺が今此処で殺してやる!!」
大声を上げながら、セルと名乗ったレプリロイドから逃げて行く。
「ウイルスに犯されてなければ今頃アーマーチェンジして逃げてるのにーー!!」
「そうはさせるか!!」
「キャッ!」
本当にウイルスに犯されているのだろうか、と言うくらいの勢いで走るが、
セルの放った、エネルギー波で足を負傷する。
「クッ・・・あんた・・・ただのイレギュラーじゃ無いわね・・・。」
「ああ、そうさ、俺はな・・・お前らに滅ぼされたレプリフォースの戦士だったからな!」
「レプリフォース・・・・ですって・・・?」
足を動かそうとするが、ウイルスの影響でまったく動かず、セルのダガーが首に当てられる。
「ああ、そうさ!レプリフォースは俺の誇りだった!
それを滅ぼしたお前を殺すために俺は強くなった!」
「何も知らない癖に・・・・・。」
「あ?」
「何も知らない癖に!ジェネラルの事も!私の事も!知ったような口聞かないでよね!!」
「グアッ!!」
セルが狂気の表情でジルバの首にダガーを食い込ませると、険しい顔をしたジルバがセルを蹴り飛ばす。
「あんた・・・それでレプリフォースの名を語る?おこがましいのよ!」
「な、何だと!ハンターのお前が言うな!」
「うるさいわね!私はジルバ!ハンターベース総司令官でもあり!
レプリフォース全指揮官ジェネラルの娘でもあるのよ!」
「う・・・嘘だ・・・あの誇り高きジャネラル将軍の娘が・・・
レプリフォースを滅ぼしたと言うのか!?」
さっきとはまるで逆の立場になり、ジルバがセルの首にダガーを食い込ませる。
「そうよ・・・私はレプリフォースを滅ぼした・・・だけどね・・・
あんたみたいに父の名を語り・・・愚かな行為をする奴はゆるせない・・。」
「ヒッ・・・。」
「ハンター総司令官ジルバの権威によって、元レプリフォース戦士、「セル」
お前をイレギュラーと認定、廃棄処分とする。」
「グワッ!」
ますますダガーに力を入れ、首にダガーがブスリと刺さる、
そして冷酷な声でセルをイレギュラーと認定し、思考回路を切り、動きを停止させる。
「・・・ハァ・・・殺されるかと思った・・・。」
「!ジルバさん!どうしたんですか!?その怪我!!」
「ああコレ?少しイレギュラーに襲われてね・・・このレプリロイド、
今すぐケイン博士に修理を要請して、今までの記憶を消して・・・・。」
バタッ・・・。
ジルバがその場に座り込むと、見回りの看護レプリロイドがジルバを発見し、
近寄るが、指示を口にして、思考回路が停止し、倒れる。
「たっ大変!今すぐ治療室へ!」
ジルバが倒れたのを見て、慌ててジルバを運ぶ。
「んっ・・・・此処は・・・・。」
「やっと起きたか、体に異常は無いかの?」
ジルバが見知らぬカプセルの中で目を開けると、カプセルの外に1人の老人が居た。
「Dr、ケイン・・・私は・・・・。」
「体に触る、動くでない、儂とてそれ以上重傷になったら手の施し様が無い。」
「そこまで・・・私の体は重傷なのですか?」
「重傷どころか、今のお前さんの状態は死ぬ寸前じゃ。」
まだ上手く機械が起動していないのか、上手く喋れないのを見抜いて、
ケイン博士がキッパリと言う。
「そうですか・・・セル・・・はどうなりましたか?」
「あやつか、あやつならもう修理済みじゃ儂を舐めるでない。」
「私はこのような状況なので何も出来ませんが・・・
セルを普通の家庭に・・・行かせてあげて下さい。」
「分かった、もう喋るで無い。」
「ありがとうございます・・・。」
自分の事よりも、セルの事を気にして、ケイン博士が苦笑し話すと、
安心したのか、ジルバがスリープモードに入る。
「こやつも手が掛かるのぉ・・・じゃが、ゆっくり休みが良い、ジルバ。」
「・・・・・。」
スリープモードに入ったジルバを愛おしそうに見つめるケイン博士。
「あー!よく寝た!さすがはケイン博士ね!一日で直っちゃった!」
「お前は普通のレプリロイドとは作りが違うからのぉ。」
「まぁね、それじゃぁ私仕事に戻るわ、一ヶ月休むつもりだったけど、
皆に迷惑は掛けられないもの。」
「ああ、あまり無理をするでないぞ。」
ケイン博士に笑顔でお礼を言い、研究室を出る。
「辛いこともあったけど、私はやっぱりこの仕事が好きだわ・・・
やめられないわね、だから・・・・パパ。
レプリフォースに居た頃とは全然違うけど・・・・・見守っててね。」
朝日に向かって自分への誓いを立てると、ハンターベースに向かって歩いていく。
ELITE HUNTER ZERO