晴嵐華さんよりロックマンX小説14「Person whom neptune loved 〜海神が愛した人〜」
第一話
Person whom neptune loved 〜海神が愛した人〜」
「なあ、知ってるか?神威鳳衆の噂・・・。」
「神威鳳衆?何だそりゃ?」
1人のレプリロイドが作業をしている別なレプリロイドに話しかける。
「知らないのかよ!神威鳳衆の事!」
「だから何だよ、その神威鳳衆って・・・詳しく説明しろよ。」
「神威鳳衆ってのはな、連邦政府がな・・・。」
知らない、と答えたレプリロイドにもう1人のレプリロイドが驚いた様子を見せ、
神威鳳衆の事を説明し始める・・・。
ちなみに神威鳳衆とは、あらゆるレプリロイドの中でも、
選りすぐりの戦闘能力を持つレプリロイドの事で。
戦場に一度出れば、1000人の働きをし、その強さを発揮する。
そしてそれぞれが偉大な人物であり、争いを嫌い、平和を求める。
まさに、この世の覇者と言うべき存在・・・。
連邦政府はこのレプリロイド達を敬意と恐れを込め、そのレプリロイド達に神、
または帝王と言った特別な称号を与えた。
「ってな訳なんだ、すげえ奴ばっか居るだろ?」
「成る程、そりゃすげぇ訳だ、なんてったってうちの隊の隊長と副隊長が入ってるからな!」
「隊長は絶大な力を誇って、海神をも従えた「白神」副隊長は130年以上生きてる「海神」、
普通に考えりゃすげぇ事だよな。」
「俺達は幸せだよな、神威鳳衆が2人も居る部隊に居るんだからな。」
ハハハハハハ。
「・・・・神威鳳衆・・・か。」
自分たちの隊長、副隊長の事を話ながら、作業場に戻っていくレプリロイドの姿を、
青い長髪の男が見送る。
コンコンッ。
「どうぞ。」
ガチャッ。
ノックの音が室内に響くと、美しいソプラノの声の人物が簡潔に言葉を述べると、扉を開く。
「お前の言うとおりだ、相当な噂になって居る様だな、神威鳳衆は。」
トスッ
「そうでしょ?まったく迷惑な話よ、
ただでさえ隊員が増えて邪魔なのに、あなたはそれで良いのかしら?海神さん。」
「だが支援には困らないだろ?白神さん。」
青い長髪の男、ポセイドンが隊長室のソファーに座ると、
死神部隊・隊長時代のジルバが嫌そうな顔で答える。
「こんな事なら隊長になんてなるんじゃ無かったわ。」
「大勢のお偉いさんの前で俺を30秒で倒した奴が何を言う。」
「しょうがないでしょ、あんたが弱かったから。」
本人が側に居ると言うのにキッパリと言い張る。
「普通本人が居る前で言うか・・・・?」
「私は言うわ、普通じゃ無いもの。」
「それと、さっき連邦政府から命令が来た、裏組織を1つ潰せ、だそうだ。」
テッテッテ・・・トスッ。
ポセイドンがジルバの机に1枚の紙を起き、自らも机の上に座る。
「・・・・無理な相談ね、良いわ、早速やるわよポセイドン、
隊員は半分出撃させて、残りの半分は後方で援護、良いわね?」
「了解、隊長。」
ポチャンッッ・・・シュンッ。
ジルバが立ち上がり、ポセイドンに命令をすると、ポセイドンが了解、と呟き終わると、
体を水分に変え、何処かへ消える。
(ポセイドンは自らの体を水に変え、移動することが可能。)
「さて・・・・・私はポセイドンの戦いでも見学してるかな。」
カチャッ・・・スッ・・・。
そう言うと、自らの武器、サイディフェンスダガーを取り、立ち上がる。
「・・・・・パパ、ごめんね。」
ギュッ・・。
ジルバが床に目を伏せて拳を握りしめ、自らの父、ジェネラルの名を呟く。
―――でも―――
「戻るわけにはいかない、私は・・・あなたを止めなきゃいけないから。」
バタンッ・・・。
何かを思い、やがて視線を上げ、部屋を出る。
第二話
ザワザワザワ・・・・。
ジルバとポセイドンから遠く離れた廃ビルに居ないはずの人の声が響く、
そう此処こそがジルバに命令された壊滅させられる裏組織のアジトである。
「なあ聞いたかよ、また死神部隊に裏組織が潰されたらしいぜ・・・。」
「マジかよ、これで何個目だ?」
「そろそろ俺達も危ねぇんじゃ・・・。」
ドンッ!!
廃ビルに居る人物達が不安げに話していると、大きな音が響く。
「てめえら、ふぬけてんじゃねぇ!白神だろうが何だろうが!俺に叶うわけ無ぇだろうが!」
この人物達の親玉的存在の男と思われるレプリロイドが大声を上げる。
「そ、そうだよな・・・ボスが居る限りは白神も手出しが出来ねぇ筈だ!」
ワハハハハハハ!・・・ザワザワ・・・。
親玉の男の言葉に再び活気を取り戻し、馬鹿騒ぎを始める。
「白神は手を出さずとも、俺が手を出すが??」
「だっ誰だてめぇ!!!」
此処には居るはずの無い人物の声が響き、動揺の声が広がる。
「俺の名は海神・・ポセイドン、白神の代わりに貴様らを潰しに来た。」
「か、海神!!ヒイイイイイッ!!!!」
「あっ親分!!待って下さい!!」
天井の柱の部分に座っている人物が“海神”ポセイドンである事を知ると、
先ほどまでの威勢は何処やら、親玉のレプリロイドが真っ先に逃げ出し
手下達もそれを追う様に逃げていく。
「やれやれ、見苦しい・・・さっさとケリを付けるとするか・・・。」
ヒョイッッ・・スッ・・・。
ポセイドンが柱から身軽に飛び降り、自らの武器、海神の矛を転送し、構える。
トスッ!
「どっどけぇぇぇぇ!!!!!」
ポセイドンが華麗に着地すると、1人のレプリロイドがポセイドンに向かってくる。
それを見て、溜息を付き、静かに立ち上がると海神の矛を構える。
「海の裁きを受けるが良い・・・ウェーティング・クロー。」
ザアアアア・・・ドスドスドスッ!!
海神の矛を地面に突き刺すと、此処には無いはずの水がこんこんと湧き出てくる。
そして海神の矛を抜き去り、空中で一回転させると、また海神の矛を突き刺す。
再び海神の矛が突き刺された瞬間、水で出来た槍がどんどん飛び出す。
「死ねぇぇぇぇぇぇ!!!!!!・・・・!うわあああ!!!」
1人のレプリロイドが海水の鋭い柱に気付かず、突進していき、海水の柱に突き飛ばされる。
だが、気付いた時にはもはや、レプリロイドの半数が全滅、無駄なあがきである。
「ばっ化け物だ・・・神威鳳衆・・・“海神”。」
「それはどうも、さて・・・任務・・・完了だ。」
ザバアアアアアッッ!!!!!!!
ポセイドンに追いつめられ、親玉が最後の言葉を呟くと、
ポセイドンが巨大な波を起こし、全てを洗い流す。
「・・・終わった・・・ん・・・?」
ザバッザバッ・・・。
何かに気付くと、水浸しの建物の中を、何処かに向かって歩き出す。
バシャッ・・・シュウンッドゥンッ!!
「隠し扉か、たいした年の入りようだな。」
壁の前で立ち止まると、壁を衝撃波で壊し、隠し扉を発見する。
「調べてみるか・・・。」
バシャッバシャッバシャッ・・・。
そう呟くと、隠し扉を開け、階段を下りていく。
第三話
ウィン・・ウィン・・ウィン・・。
「これは・・・あいつら・・・こんな物を持っていたのか・・。」
ポセイドンが、隠し扉の最下部にたどり着き、目の前の景色に唖然とする。
「超高性能・・ウイルス・・フラネル、か。」
「ダレ?アナタハ・・イツモミテイル・・・ヒトタチジャナイ・・・。」
「ああ、此処にいる奴らは殆ど俺が破壊した、お前を解放する、少し大人しくしていろ。」
カチャカチャカチャッ・・・ピコン!ピコンッ!・・・ガシャァンッ!!
ポセイドンが機械を操作すると、フラネルを閉じこめていた機械が音を立てて崩れる。
「・・・これで良い、お前は此処に居ない方が良い、速く此処を立ち去れ。」
「・・・アリガトウ、海神サン・・・。」
「礼は良い、速くいけ、また捕まるぞ。」
機械が壊れるのを見て、ポセイドンがフラネルに去るよう促すと、フラネルが礼儀正しく一礼すると
ポセイドンが微笑を浮かべ、手を振る。
「ホントウニ・・アリガトウ。」
シュウウンン・・・。
「・・・ありがとう、か・・。」
フラネルがお礼を言い、消えると、ポセイドンが消えるような声で呟く。
ガチャッ。
「遅かったな、ジルバ。」
その時、誰かが部屋に入ってきて、ポセイドンが入室者に声を掛ける。
「少しね、邪魔が入ったのよ。」
「ほう、外に敵がいたのか、結構頭の良い奴らだな。」
「でも、私の敵じゃ無かった。」
ヒュンッ・・・ゴトンッ。
ジルバがサイディフェンスダガーで風を切ると近くにあった機械が音を立てて崩れる。
「ったく、お前は何処まで強くなるんだろうな。」
「さあね、私自身でも分からないわ。」
「さて、帰還するぞ、俺は午後から用がある。」
ポセイドンが少し複雑そうな顔でジルバに帰還すると声を掛け、通信機を取り出す。
そしてジルバから目線を外すと、それを操作し始める。
「用?・・・ああ、カトレアの事ね。」
「なっ何でお前に分かったんだ!?」
(・・分かりやすい奴。)
ジルバがポセイドンの発言の答えを考えていると、ある人物が思い浮かび、
試しにその人物の名前を口にしてみると
予想通りの反応をポセイドンが見せ、ジルバが内心呆れ気味で呟く。
「あんたの用と言えば、書類処理か恋人の所に行くぐらいでしょ。」
「・・・それが悪いか。」
(開き直ってるし・・・。)
冷静にポセイドンの行動パターンを口に出していくと、ポセイドンが赤い顔を地面に伏せながら反論すると
それを見てジルバがまたまた内心呆れ気味・・・では無く、本当に呆れて言う。
「そう言えば、カトレアの体調、大丈夫?」
「ああ、今のところは落ち着いている、だが・・・まだ分からない。」
「・・・そう、気を付けてね・・・何たってカトレアは・・・。」
―――人間なのだから。―――
海神は長い時を生きてきました、そして今・・海神は恋をしました。
自らとは異なる人間に。
これは罪なのか否か、それは誰にも分からない・・・・。
第四話
「あ、そう言えば・・此処から近くに街があるのよ、寄っていかない?任務も早く終わったし。」
「・・・そうだな・・此処にはめったに来ないからな、行ってみるか。」
「じゃあ街の中心にある噴水で待ち合わせね。」
「了解。」
シュンッ!
ポタッ・・ポタッ・・シュンッ!
ジルバが思いついた様にポセイドンに提案すると、
ポセイドンもそれを受け入れて、一瞬でジルバがその場から消え
ポセイドンは体を水分に変え、瞬間移動する
「・・・さて、何処に行こうかしら・・・って・・・行き倒れ?」
「うっ・・・。」
(まだ生きてる・・放って置くわけにいかないしね・・・あー私って何でこんなにお人好しなんだろ。)
ポセイドンと別れ、歩いている途中に、行き倒れを発見し、一度は通り過ぎようとするが
やはり気になってしまい、引き返し、その女性の細い体を抱き上げる。
「・・・此処は・・・?」
美しい茶色い髪に赤い瞳の女性、趙 英蘭が目を覚ますと、起きあがって周りの景色を確認する
(見たことが無い・・部屋・・たしか私は意識を失って・・・。)
「気が付いた?お嬢さん。」
「!」
必死で記憶の糸を辿っている最中に、自らの声とは違う声が響き、辺りを見渡すと
印象に残る腰まである銀色の髪、そして全てを見透かすような金色の瞳の人物、
ジルバが椅子に座っていた
(・・まったく気配がしなかった・・この人・・・何者?)
「そんなに怖い顔しないでも良いわよ、捕って食う訳じゃ無いし。」
「・・・あなた・・誰?」
「ジルバよ、何処にでも居るフツーのレプリロイド、宜しく。」
英蘭が目を見開いて言うが、ジルバは笑顔で英蘭に話しかけると、英蘭が警戒しながらジルバに
名前を尋ねると、ジルバが変わらない笑顔で名前を名乗る
「・・・助けてくれてありがとう・・私は・・趙 英蘭・・・。」
「英蘭ね、可愛い名前、あなたは中国の方から来た人でしょ?」
「な、何でそれを・・?」
「だってここら辺ではそう言う名前を付けないもの」
英蘭もいちおう敵では無い、と判断し、自らの名前を述べると、
ジルバにズバリと当てられ、何故かと聞き返してみるとジルバが英蘭に理由を答える。
「あなたってするどいのね・・やっぱり普通のレプリロイドじゃ無い。」
「これでも結構私、お嬢様育ちなのよ?見えないけどね。」
「・・・面白い人なんですね、ジルバさんって。」
クスッ。
ジルバがふざけてみせると、英蘭がクスクスと笑いはじめ、ジルバもそれを見て微笑する
「あっ、そろそろ行かないといけないわ、ゴメンね、英蘭。」
「そうなんですか・・それは残念です」
「いちおう此処のホテルの持ち主は私の知り合いだから料金はいらないわ、
好きなだけ此処に居てくれて構わない。」
「良いんですか?」
「ええ、あなたみたいに綺麗な瞳をしている人には親切にしてあげたくなるの、
また会いましょう、英蘭。」
ギイッ・・・ガチャンッ
ジルバが英蘭に向かってウインクをして優しく扉を閉める
「・・・珍しいじゃない?あんたがこうやって姿を現すの。」
「・・・気まぐれですよ、ただの・・ね。」
部屋に出ると、向かいの壁の椅子に座って居る、紫色の様々な宝石や金があしらわれているフードを被った
男性に声を掛けると、男性もジルバに向かって言葉を返す
「それにしても、あんたも随分出世した物ね、ネフィリアス。」
「ええ、久しぶりにあなたの顔が見たくなったのですよ・・・姉上。」
「そう、ありがとう、私の愛しい愚弟ちゃん。」
ジルバがネフィリアスと言う男に話しかけると、ネフィリアスが立ち上がり、
ジルバの目をみて話すと微笑んでジルバが冗談を言う
「偽名では無く、本名で呼んで貰いたいものですね。」
「分かったわよ、ドッペル、これで満足?」
「はい、満足しました。」
ドッペルが肩をすくめて言うと、ジルバがしぶしぶ、ネフィリアスの本名、「ドッペル」と言うと
満足そうな笑みをドッペルが浮かべる
「で、本当の用件は何?」
「姉上に会うのが本当の用件で、ついでの用件は・・新しい予言をお知らせしに参りました。」
「・・・あんたの予言はマシなのが無いわよ・・・・まあ良いわ、言って。」
「分かりました。」
ジルバが溜息を付いて、ドッペルに話しかけると、
ドッペルが意味ありげな笑みを浮かべ、ジルバに話しかけると
何かを感じ取ったのか、頭を抱え、ジルバが嫌そうに承諾すると、ドッペルが楽しそうな笑顔を浮かべる
「えー・・・コホンッ・・・様々な戦いが終決しす時・・新たなる闇がこの世界を包むであろう
世界は絶望と悲しみに包まれ・・地には骸が積み重なり・・死を喰らう者が骸を踏み砕く
海は枯れ・・海神は愛する者を失った悲しみで自らを滅ぼし・・悪しき剣に海神は喰らわれる
俊足を持ちし少年は闇を討ち滅ぼす者達と出会い・・共に戦い・・勝利を収める
白銀なる髪に黄金の瞳を持ちし者は呪縛を解き放ち・・闇なる者を存在ごと打ち消す
赤き瞳の血のつながりを持つ二人の者達は決別し・・それぞれの道を歩み・・やがて戦う
白き翼と美しき異なる瞳を持ちし少年は・・戦いの中・・女神の愛を知り・・大きく成長する
竜なる帝王は仲間なる者達と信仰を深め・・天を仰ぐ竜となり勝利を掴む
呪われし瞳を持ちし者は・・・信頼できる者達と出会い・・その呪われし瞳の呪いが解ける
そして様々な戦いが終わりし時・・紅蓮の破壊神は誠の愛を知り・・
闇なる王を打ち砕く・・・って感じです。」
「随分長いわね・・・。」
「ええ、吾輩も驚きましたよ、こんな長い予言は久しぶりなのですからね。」
ドッペルが長い予言を読み上げると、ジルバが口を開き、嫌そうな 顔をすると、
ドッペルも困った様な苦笑を浮かべ肩をすくめる
「・・今の所この予言の意味はサッパリ分かりません・・
ただ、とてつも無く悪い内容でしょうね♪」
「あんたねー・・・。」
「大丈夫ですよ、最後に闇は滅びるって出ましたし。」
「でも予言と言う物は変わりやすい物よ、些細な出来事で予言が変動した事もあるしね。」
ドッペルがニコニコ微笑んで言うと、ジルバが呆れたように溜息を付く
「でも・・予言はとても貴重な物です、必ず良い結果をもたらしてくれますよ。」
「・・そうね、あんたの言葉、いちおう信じてあげるわよ。」
「ありがとうございます、それよりも姉上・・時間は宜しいのですか?」
ドッペルがジルバを励ます様に言うと、ジルバもクスクスと笑ってドッペルの方へ笑顔を向けると、
ドッペルが気付いた様に金の懐中時計を開き、時刻を確認し、ジルバに懐中時計の時刻を見せる
「げっ!ヤバイわっ!ポセイドンと待ち合わせしてたんだった!じゃ、じゃあねドッペル!」
ダダダダダッッ!!
「あっ、・・・行ってしまいましたか・・まあ良いでしょう・・・・出てきなさい、そこの者。」
ジルバが驚いた様に目を見開くと、ドッペルに簡単な挨拶を交わし、一目散に走り去っていくと、ドッペルが
名残惜しそうに溜息を付くと、ゆっくりと後ろを向き、気配のする方に視線を向ける
「フッ、俺の気配に気付くとは・・たいした奴だな・・だが俺の姿を見て生きていられると思うな!」
バババッッ!!!
「ほう、さしずめ・・白神を暗殺しようとやって来た・・裏組織の回し者ですか・・
ハァー・・姉上も手伝ってくだされば宜しいのに。」
ヒョイッ
ザクザクザクッ!
視線の先から出てきたのは、全身黒のアーマーで覆われた忍者型のレプリロイドで、
その忍者型レプリロイドが一瞬でドッペルに向かって何かを発射するが
ドッペルが軽い身のこなしでそれを避けると
地面にはおびただしい数のダガーがドッペルの居た場所に刺さる
「なっ・・避けただと・・貴様・・並のレプリロイドでは無いな・・」
「ええ、でも・・気付くのが遅かった様ですね。」
「何?」
ブシュウウウウウッ!!!
「グワアアアアッ!!・・・き、貴様・・・いったい何を・・・した!?」
忍者型レプリロイドが驚いた様にドッペルに話しかけるが、
次の瞬間には忍者型レプリロイドの体が亀裂を起こし
体中からオイルが吹き出し、苦しそうにドッペルを睨み付ける
「吾輩は何もしてませんよ、ただ此処に立っていただけです。」
バキバキバキッ!
「グワァァッ!・・・白神を倒す前に・・・殺られる・・・とは・・無念・・。」
ブシュウウウッ・・・バンッ!!
ドッペルがニコニコしながら話していると、忍者型レプリロイドの体にどんどん亀裂が入り、最後には
体全体が破壊され、最後に電子頭脳が爆発し、機能を停止する
「フゥ、無駄な力を使ってしまいました・・。」
「ネフィリアス様。」
「何の用だ、レプリフォースに何か動きがあったか?」
「はい、このままですと、数ヶ月後には相当な規模の戦争が起こる可能性が高いです。」
「・・そうか、新しい動きがあったら知らせろ。」
「了解しました。」
シュッ・・。
ドッペルが近くの椅子に座っていると、自らの借りの名前を呼ぶ声が聞こえ、
振り返ると、其処には自身の部下が立っており、状況を聞くと、
部下から目をそらし命令を伝えると、一瞬で部下が消える
「・・父上、あなたはいったい何を考えているのやら・・。」
そう言うと、全てを拒絶するかの様に目を閉じ、風の音を耳に澄ませる
「・・さて、そろそろ戻りますか・・吾輩の帰るべき場所・・光の無い世界へ・・。」
スウウゥゥ・・・。
言葉を深刻そうに呟くと、ドッペルが歩き始め、1歩、1歩を踏みしめて行く内に
どんどん体が透けていきやがて、風に飛ばされるように完全に消えて無くなる
第五話
「さて・・何処に行くとするか・・・全く考えていなかった・・。」
ポチャンッ・・・スタッ
一方ポセイドンも街に到着、自らの体を水分から通常のアーマーに戻し、辺りを見渡す
「さーて・・どうするか・・。」
ドカンッッ!!
「・・・って何の音だ?・・・まったく俺には休む暇も無い様だな・・。」
タッタッタ・・・
何処に行こうか考えていると、ポセイドンの耳に何やら尋常では無い音が響き、
溜息を付きながらも職務を全うする為に現場に向かう、はっきり言ってゼロとは大違いである
「アイヤー!ワタシとしたことが不覚、こんな所に逃げてしまうとは・・。」
「ヘッヘッヘ、やっと追いつめたぞコラァ!」
「貴様と飛星のせいで俺らの組織は潰れたんだぞ!」
「それはアナタ達がワタシと飛星に手を出したのが悪いんですヨ。」
「やかましい!くたばれぇぇ!!」
シュッッ!!
(こりゃ少しだけ・・・ヤバイかも・・しれないですネ・・。)
英鴻が、品の悪いレプリロイド達に追いつめられ、自分たちの組織を潰された事に対しての怒りを表すが
当の英鴻は冷静に言い返すと、それが逆効果だったのか、レプリロイドが英鴻にダガーを振り下ろす
ポチャッ・・・ポチャッ・・・ザバァッ!!!
「何だ?・・・ウワァ!!」
「み、水が何でこんな所に!?」
「でっ出れねぇ!!」
「大人しくしろ、水檻からはもう出れない。」
「おや、助かったようですネ。」
いきなり水の音が聞こえたと思ったら、次の瞬間にはレプリロイド達が皆、一つに集められ、
水で出来た檻に閉じこめられ、ポセイドンがゆっくり歩いてくると、英鴻が安心した様に溜息を付く
「大丈夫の様だな、その様子では。」
「ありがとうございマス、それにしても見事な腕前、ワタシ感服致しましタ。」
「これくらいは誰にでも出来る、それよりも速く行ったらどうだ?また狙われるぞ?」
「いえ、もう大丈夫です、ワタシの相棒が来たようですかラ。」
「相棒?」
トンッッ・・・
ポセイドンが英鴻に向かって微笑を向けると、英鴻が一礼し、感謝の意を述べると、
ポセイドンが速く行くように促す、英鴻がポセイドンが居る方向と違う方向を向いて話すと、
次の瞬間には何者かが着地する音が聞こえる
「随分派手に逃げ回ったようだな、英鴻。」
「見てたなら助けてくれれば良かったのに・・お前は気が利かないないなぁ・・飛星。」
「飛星・・・あの竜帝か、お目にかかれて光栄だ。」
「そう言う貴殿もあの海神とお見受けする、こっちこそお目にかかれて光栄だ。」
徐々に飛星が歩いてくると、英鴻が疲れた様な表情を見せ、名前を呼ぶと
ポセイドンが気付いた様に飛星の顔を見ると、飛星もポセイドンの顔を見て、言葉を呟く
「所で、その海神さんがこんな辺境の地に何か用がおありで?」
「少し近くまで来た物でな、この街を見学して行こう、と上司にせがまれ、此処に居る。」
「ほほう、白神さんですね。」
「そこまで知っているのか、たいした物だな、あんたらの情報網は。」
飛星に何故此処に居るか、と言う理由を聞かれ、ポセイドンが困ったようにジルバの事を話すと
英鴻が即座にそれを見抜き、言うと、ポセイドンが感心したように二人を見る
「ああ、有能な部下達が良く働いてくれているのでな。」
「それは羨ましい。」
「それよりも宜しいのか?我々の様なヤクザ者とこうやって話していて。」
飛星が部下達の話をすると、ポセイドンが自分とジルバの関係を思いだし、心底羨ましい、と呟くと
本題に入るように、飛星がポセイドンに向けて、確認を取る
「俺は此処に見学に来ただけだからな、別にあなた方に危害を加える覚えは無い。」
「それは良かった、海神ともあろう者に潰そうとされたら、
我々もさすがに無傷で勝てる自信は無いからな。」
「あなた達ならば俺が本気でかかったとしても負ける事は無いだろう。」
「でもこちらも大きな損害を被ると思いまス。」
ポセイドンが此処に来た理由を話すと、飛星も少し安心した様に顔をゆるめ、英鴻もポセイドンに
まるで今日会ったかの様に思えない程、親しげに話す
「まあ・・・俺はあなた達とは戦いたく無い、俺とあなた達が敵対しない事を祈ろう。」
「こちらもそう思っている、海神殿」
「ありがとう、竜帝殿」
スッ
ポセイドンが海神、と言うのにふさわしいおおらかな笑みを浮かべ、飛星に握手を求めると
飛星もその意味が分かったのか、ポセイドンに手を差し伸べ、2人は握手を交わす
「会えたばかりで惜しいが、そろそろ俺は失礼させて貰うとする。」
「それは残念だ、また会ったら酒でも飲み交わそう。」
「あなたの無事をお祈りしマス、海神さん。」
ポチャッ・・ポチャッ
ポセイドンが名残惜しそうに飛星と英鴻に軽く挨拶をすると、体を水に変え、ジルバと
待ち合わせをしている所に自らを転送する
「さて・・出てきたらどうだ?・・先程から其処に居るのは分かっている」
「え、誰か居たんですか飛星?」
「オヤオヤ、さすがに竜帝殿にはバレてしまいましたか・・・まあバレて当然ですけど。」
ザッ
飛星がポセイドンを見送ると、建物の上を見上げ、其処に居る何者かに声を掛けるが、
英鴻は気づいてなかった様でポカン、とした表情を見せると、何者かが建物から飛び降りてくる
「こんな所で同業者と会えるとは思わなかったな、何か我々に用でも?」
「いえ、用は御座いませんよ・・・ただ近くに来たのでご挨拶を、と思ったまで。」
「それはどうも。」
飛星が警戒気味に紫色のフードの男、ドッペルに話しかけると当のドッペルは警戒心0な様子で
自分の考えをあかすと、飛星も僅かながら警戒を解く
「そう言えば、もう少しで中国にお帰りになるそうですね・・
吾輩達も張り合う相手が居なくなって寂しいです。」
「中国に帰るのは私と英鴻だけだ、これからも部下達は此処に残る。」
「飛星、話してばかり居ないでワタシにも紹介して下さイ。」
「申し遅れました、吾輩の名前はネフィリアス・・
通称「赤兎」と呼ばれています、どうかお見知りおきを。」
ドッペルが思い出したように呟き、寂しそうな声を出すと、
飛星が冷静に真実を述べ、会話に加わることが出来ずに居た
英鴻が抗議の声を上げ、ドッペルが礼儀正しく偽名を名乗り、英鴻に向かって一礼する
「いちおう裏組織「Rotted apple」を取り仕切らせて貰っています。」
「・・・Rotted apple・・・腐った林檎・・・デスね。」
「吾輩にピッタリな言葉なのでそのまま組織名にしました。」
「自己紹介が済んだのなら早々に目的をお教え願いますか・・赤兎殿」
「竜帝殿には全てお見通しですか・・。」
フー・・シュッ!
英鴻がドッペルの組織の名前を聞いて、正直な気持ちを口に出すと、
ドッペルがハッキリと理由を言う
そして、それを見ていた飛星がドッペルに向かって、呆れたような溜息を付くと、ドッペルが飛星に向かって何かを投げつける
パシッ!
「これは・・・チェスの駒・・?」
「それを差し上げます、Rotted appleと忠義堂の和解の証です。」
「随分急なお話だ・・だがこちらにとってこれ以上に良い条件は無い・・有り難く頂いておこう。」
「赤兎殿は随分気前が良いのですネ、このチェスの駒、最上級のダイヤとルビーで出来てますヨ。」
「まあ吾輩の職業上よく集まりますので、お裾分けです。」
飛星がドッペルの投げた物を受け取り、改めて確認すると、
飛星の手の中には透明に輝き、美しい宝石が埋め込まれている
チェスの駒のキングがあり、ドッペルが和解の証として飛星に受け取る様促すと、
飛星も真意を聞き、チェスの駒を受け取ると
すかさず英鴻が飛星の手の中からチェスの駒をひったくり、観察を始めると、
ドッペルが英鴻の様子に驚きながらも説明をする
「失礼かもしれぬが、1つお願いをして宜しいか?」
「吾輩に叶えられることならば何でも。」
「あなたの顔を見せて欲しい、これから我々は和解を結び、様々な所で協力をし合う事も多くなろう
だが、相手に不信感を持っていてはそれは実現しない、だからお願い申す。」
「ほほう、それは珍しいお願いですね・・こうやって顔を隠しているのは、
自分の顔が好きでは無いからです・・けど
竜帝殿のお願いであっては断るわけにはいかないでしょう。」
パサッ
飛星がドッペルに向かって、お願いをすると、ドッペルが少し戸惑った様子を見せるが、すぐに自らのフードに
手を掛け、やがてフードを後ろにずらす
サラッ
「これで宜しいでしょうか?」
「変わった髪の色をしてますネ、染めたのデスか?」
「いいえ、これは地毛なんです、それにこの瞳の色も」
「理解のある方で助かった、感謝致す。」
「こちらこそ和解を受け入れてくれた事を感謝しなくては」
スッ
ドッペルがフードを外すと、血の様な長い赤い髪と全てを見透かす、
金色の瞳が現れ、英鴻が珍しそうにドッペルに聞くと
ドッペルが少しだけ地面に視線を落とし、言うと、飛星がドッペルに向かって礼を言い、
あまり見せたく無いのか、ドッペルがすぐにフードで顔を隠す
「それではこれからやらなくては行けない事があるので吾輩は失礼させてもらいます。」
「ええ、我々も失礼させて頂くとしよう。」
タッタッタ・・・。
ドッペルが飛星に向かって話しかけ、飛星とドッペルがお互いにすれ違おうとする瞬間
「 」
「!」
「どうした英鴻?」
「いや・・なんでも無い、それよりも早く行きましょう。」
「・・・ああ。」
タッ
ドッペルがすれ違いざまに英鴻に向かって何かを喋ると、
英鴻が目を見開き、咄嗟にドッペルの方を向くが
そこには何も無く、英鴻の様子に不信感を抱いたのか、飛星が声を掛けるが、英鴻は平静な態度で飛星に返事を返すと再び2人は歩き出す
『妹さんは生きています、ですがあなたと何時か戦いを交えるでしょう。』
(何故ワタシと英蘭の事を・・ネフィリアス殿が・・・そして最後の言葉は・・いったい・・。)
運命の秒針が回り出した時、時計の上の役者達が踊り出した、
赤兎、竜帝、若仙人、海神、白神達は運命を交差させ
今宿命と言う舞台の上で鎮魂歌に合わせて踊り出す
役者は揃った
後はLeading part(時)と言う主役が来るのみ
だが劇は始まっている、そして終末と言う次の章へ進む・・・。
第六話
『フリージア、港まで逃げろ!』
『で、でも・・・兄さんは・・・』
『必ず後から行く!早く逃げろ!逃げるんだ!』
「はっ!」
ガバッ!!
「はぁ・・はぁ・・・夢・・・。」
薄紫色の髪に金色の瞳をした少女、フリージアが呼吸を荒くして、ベットから飛び起きる
彼女は近く前に家族を人斬り部隊によって奪われたが、兄の手によって逃走に成功し、ここに居る
「・・・兄さん・・・。」
自らの兄の事を思い出し、再び、枕に顔を埋め、涙を流し始める、まだこの少女にとって
兄と言う存在はとても大きく、そして偉大な物だった
それを奪われ・・フリージアは今・・・絶望の淵に居た・・。
「・・・・ひとまず・・・起きよう・・。」
ムクッ・・・。
涙を拭き、ベットから起き、自分の身支度を整え始める
「もう大丈夫なの?」
「はい、有り難うございました・・泊めて頂いて・・。」
「そう・・困ったことがあったら何時でも戻ってきて良いのよ・・?」
「・・・はい。」
身支度がある程度済み、自らを泊めてくれた1人の老婦人に向かってお礼を言い、立ち去ろうとすると
婦人がフリージアに向かって心配そうな視線を向けると、フリージアが悲しそうな笑みで答える
「・・・どうしようかな・・・。」
老婦人の家から出たのは良いものの、何をすれば良いか分からず、裏路地の一角で座り込み、顔を伏せる
「ねえお嬢ちゃん、お母さんはどうしたの?」
「!」
「なあなあ、俺らと遊ばねぇ?」
「あ、あの・・やめて下さい・・。」
「まあそんな堅い事言わないでさっ!」
グイッ!
「痛ッ!」
フリージアが物思いに浸っていると、いかにも柄が悪そうな少年達がフリージアを取り囲み、
当のフリージアは少年達を拒否しているのだが、その様子に気付かず、
少年の1人がフリージアの腕を力いっぱい引っ張り、その力でフリージアは声を上げる
「おい其処の馬鹿共 そいつを離せ」
「あぁ?何だてめえ!」
ザシュッ!!
「あっ!ギャアッ!血が!血が!!」
「血ぐらいで喚くな・・耳障りだ・・・消えろ。」
「ヒッヒイイッ!!」
ダダダッ!!
少年達が振り返ると、其処には全身を鎧で纏ったレプリロイドが立っており、
少年が口答えをすると、鎧を纏ったレプリロイドが
背中に背負っている長刀を一降りすると、たちまち少年の手に切り傷ができ、
見慣れない血に怯え、凄まじいスピードでその場を去っていく
「・・・・・。」
タッ
「あっ・・待ってください。」
「・・・何だ。」
「助けてくれて・・・有り難うございました。」
「・・・気にするな。」
鎧を纏ったレプリロイドがその場を去ろうとすると、たちまちフリージアが呼び止め、
鎧を纏ったレプリロイドがフリージアに向かって振り返ると、たちまちフリージアがお礼を言うが、
鎧を纏ったレプリロイドからは表情が伺えず、感情のこもらない声でフリージアに話しかける
「もし・・良かったら・・お名前を教えてください、あっ私の名前は・・フリージアです。」
「・・・・ラフェスタ。」
「ラフェスタさん・・・素敵なお名前ですね!」
「?・・・それよりも・・お前、此処で何をしている・・
此処は子供が来るところでは無い、早々に立ち去れ。」
「・・・良いんです、どうせ・・・帰るところは・・もう無い・・ですし・・。」
「・・・・・着いて来い。」
鎧のレプリロイド、ラフェスタが名前を名乗ると、フリージアが笑顔をラフェスタに見せ、
それを見たラフェスタが少し目を見開くが
すぐに無表情な顔に戻し、早々に此処を立ち去る様にうながすが、フリージアが地面に視線を落とすと、
ラフェスタがフリージアに着いてくるよう促すと
自分はさっさと歩いていってしまう
「あ、はい・・。」
(何故・・・私はこの様な小娘に・・・こんな事を・・・だが・・何故だ・・
とても・・暖かい気持ちになる・・。)
カツッ・・・トコトコ・・
フリージアが自分より頭2つ程身長の違うラフェスタに追い付こうとするが、
歩幅がかなり違うので、しだいにフリージアが離されていき、
それを見たラフェスタが内心で自分の行動に疑問を投げつけるが、
自然にフリージアの歩幅に自分の歩幅を合わせる
(あれ?・・何か・・ラフェスタさんの歩く速さ・・遅くなったような気がする・・・気のせいかな?)
「しばらく歩くぞ、お前、体力はある方か?」
「いちおう常人ほどは・・。」
「・・・・そうか。」
フリージアがラフェスタの歩幅を見て、疑問に思うが、ラフェスタに声を掛けられ、
その考えは中断させられラフェスタの質問に答えると、当のラフェスタはフリージアの答えを聞くと、
また前を向き、歩き始める
「・・・・此処だ。」
「此処って・・・家・・・ですよね?」
「・・・この家をお前にくれてやる・・・好きに使うが良い。」
「えっ、この家を?」
「・・・不満か?」
「いっいえ、全然・・そんな事無いです!」
ラフェスタとフリージアが1時間程歩くと、其処には普通の家が有り、
フリージアが不思議そうに家を見つめると
ラフェスタがいきなりこの家を指さし、フリージアに向かって言うと、
フリージアが驚愕し、目を見開く
「あまり彼処には近づくな・・彼処にはまともな奴らが居ない。」
「・・・はい。」
「・・・最低限の生活に必要な物は揃っている、後は自分で何とかするが良い・・後、これもやる。」
シュッ!
「わっ。」
パシッ
ラフェスタがフリージアに彼処に行ってはいけない、と教えると、フリージアに向かって何かを投げ、
それをフリージアがキャッチする
「これって・・・カード?」
「それがあれば大抵の物は買えるだろう・・大事に使え。」
「でっでも、貰えません・・・悪いです・・。」
「気にするな。」
「でも・・・。」
「・・・・・らちがあかないな・・・なら・・・この家を掃除しておけ」
「それだけで・・良いんですか?」
「構わん・・・私は滅多な事では此処には来ないからな・・。」
フリージアに渡したのは、1枚のカードで、フリージアがそれを受け取ったのを確認すると、
後ろを向いて、去ろうとしたラフェスタをフリージアが呼び止め、説得をすると、
ラフェスタが少し考え、1つの提案を出す
「あっあの・・・聞きたいことが幾つかあるんですけど・・良いですか?」
「・・・・手短に話せ。」
「じゃあ・・ラフェスタさんは今何歳ですか?」
「・・・25だ。」
「家族構成は?」
「妹が1人居る」
「妹・・・。」
(・・・兄さん・・・。)
話題を出そうと、フリージアが一生懸命、ラフェスタを喋らそうとするが、妹、と言う単語を聞くと
自分の兄の事を思い出し、地面に視線を落とす
「・・・理由は知らんが・・早く休め・・今のお前は・・消えそうだ。」
「!・・あっ・・はい・・。」
「どうした。」
「・・ありがとうございます。」
ガチャッ・・バタンッ
「・・・ありがとう・・・か。」
ラフェスタが何かを感じ取ったのか、フリージアにそう言うと、フリージアがおぼつかない足取りで
家に入ろうとするが、立ち止まり、ラフェスタがどうしたのか、と声を掛けると、
フリージアがお礼を言い、家の中に入っていくと
ラフェスタが目を見開き、次の瞬間には微笑を浮かべ、暗い夜道に消えていく
「意外だね、兄さんがこう言う事をするなんて。」
「・・・・ミラージュ。」
「ごめんね、盗み見するつもりはなかったんだけど。」
「・・・お前が此処に居ると言う事は・・・あいつが目覚めたのか?」
「うん、それに・・あいつじゃ無くて、レノンよ。」
ラフェスタが歩いていると、建物の上から少女の声が聞こえ、ラフェスタが上を見上げると、
そこには月明かりに照らされ風に水色の髪を靡かせているレプリロイド、ミラージュが居て、
ラフェスタがミラージュにレノンの事を聞くと、ちゃんと名前を呼ばない
ラフェスタを見て、ミラージュが注意をする
「まだ赤子の知能しか無いらしいな、それに戦闘能力も。」
「大丈夫よ、レノンは必ず強くなる、絶対に。」
「・・・妙な意地を張るんだな・・あい・・レノンに対しては。」
「そう?」
ラフェスタが冷静に分析し、話すと、ミラージュはそれを気にした様子は無く、むしろ嬉しそうに話し
ラフェスタがミラージュの様子を見て、不思議そうな顔をする
「あっレノンの事は良いとして、さっきの女の子は誰?」
「・・・フリージアと言うらしいが・・ほかの事は分からん。」
「へー・・今度フリージアちゃんの所に行ってみよ!」
「・・・そう言えば・・・大体お前と歳が近かったな・・。」
「本当?」
ミラージュがずっと聞きたかった様子で、フリージア事を聞くと、
名前しか聞いていなかったので、ラフェスタがミラージュに
フリージアの名前を教えると、興味津々な様子で後々の計画を立て始める
「ねえ明日行ってみて良い?」
「・・・・どうせ駄目と言っても行くつもりだろう・・・。」
「うん!」
「・・・・シグマには何かしら理由を付けて・・言い訳をしておく。」
「ありがとう兄さん!大好き!」
「・・・・そうか。」
ミラージュが目を輝かせてラフェスタにお願いをすると、ラフェスタがミラージュに折れ、
シグマに言い訳をしておく
と言うと、ミラージュがラフェスタに抱きつき、ラフェスタの顔が少し赤くなる
トントンッ!!
「んっ・・・何だろ・・・?」
扉を叩く音がしたので、ベットから起きあがり、眠たい目をこすり、フリージアが扉の方へ向かって行く
「はい・・どなたですか?」
ガチャ
「こんにちはフリージアちゃん。」
「えっ・・・どうして私の名前を・・・?」
「あっ、自己紹介が遅れました、いちおう昨日のしかめっ面の男「ラフェスタ」の妹のミラージュです。」
「あっ・・ラフェスタさんの・・・。」
『家族構成は?』
『妹が1人居る。』
フリージアがドアを開けると、其処に立っていたのは、ミラージュで、
フリージアが不思議そうな顔をすると
ミラージュがあわてたように自己紹介すると、フリージアが昨日のことを思い出す
「いきなり押しかけちゃってごめんなさい。」
「いえっ、全然そんな・・・。」
「もし良かったらだけど・・一緒にお買い物にでも行かない?」
「え、お買い物?」
「うん、服とか色々買おうかと思って、一緒に行かないかな?って誘ってみたの。」
「・・・・えっと・・お買い物なら・・。」
「ありがとう!じゃあ行こう!」
ミラージュがフリージアに向かって自己紹介すると、昨日のラフェスタとの会話を思い出し
、不信感を少しだけ解くとミラージュがいきなり出かけようと誘い、フリージアが引き気味で答えると、
手を引いてどこかに向かう
「あっあの・・・いったい何処へ行くんですか・・?」
「おいしいって評判のクレープ屋さん!」
(・・・この子、普通の女の子みたい・・)
フリージアがミラージュの様子を見て、安心したように溜息を吐く
「そう言えばフリージアちゃん、兄さんから聞いたけど、あんな所で何してたの?」
「・・・・それは・・。」
「あっ、喋りたくなければ良いよ、誰にだってそう言う事あるし。」
「ミラージュさん・・・ありがとう。」
「さんは付けなくて良いよ、ほとんど歳変わらないだろうし。」
「え、でも・・結構違うような・・。」
「私まだ16歳だし、同じ十代には変わりないし、ね?」
フリージアが顔を曇らせると、それを見たミラージュが何かを感じ取ったのか、この話題を打ち切る
「うん・・・ありがとうミラージュちゃん。」
「どういたしまして、あっそろそろ行かなきゃいけない・・。」
「そうなの?」
「うん、ゴメンねフリージアちゃん、また暇があったら来るから。」
フリージアがミラージュに向かって笑顔を見せると、ミラージュも笑顔で答えるが、
何かを思い出したのか急に顔を伏せ、フリージアに対して謝る
「ううん、気にしないで。」
「じゃあ、これあげる。」
チャラッ
「ペンダント?これって・・・。」
フリージアがミラージュに対して言うと、ミラージュが何かを取り出し、フリージアの手の上に乗せる
「また会いに来るって約束。」
「良いの?これ・・貰っちゃって・・・。」
「うん、フリージアちゃんと私、もう友達でしょ?」
「うん・・そうだよ。」
「だから、これをあげる。」
ミラージュがペンダントの意味を話すと、フリージアが戸惑い気味にペンダントを見つめると、
ミラージュが悲しそうな笑みを浮かべ、フリージアに話しかけると、
何かを感じ取ったフリージアが黙ってペンダントを手に取る
「じゃあねフリージアちゃん!」
「あっ、うんっ!」
タッタッタッタ・・・
「あれ?・・・何でじゃあね・・なんだろう・・またね・・じゃ無いのかな?」
ミラージュがフリージアに手を振り、何処かに走っていくと、
取り残されたフリージアが1人疑問を浮かべる
タッタッタ・・・ピタッ
「誰?」
「ご機嫌麗しゅう・・ミラージュ様」
「サタン、何の用?」
「シグマ様からの命令です、貴方様を直ぐにお連れしろ・・・と。」
ミラージュが裏路地に入り、近くにあった気配に向かって、声を掛けると、そこから出てきたのは、
科学者の様な白衣に身を通しているサタンで、ミラージュに向かって頭を下げながら、
シグマからの命令を伝える
「・・・成る程、私はシグマの心臓だもんね、それに近頃ここら辺には“竜帝”が居るって噂もあるし」
「さすがはミラージュ様、ですから早くお戻り下さい、シグマ様がお呼びで御座います。」
「分かったわ、転送装置を起動して。」
「・・・貴方様のご命令ならば・・・今すぐに」
カチャカチャッ
ミラージュがシグマの考えを一瞬で見抜くと、サタンが素早くミラージュを連れ戻そうとしていると、
ミラージュもそれが分かったのか、転送装置の起動を要請する
(・・・ごめん、フリージアちゃん、約束・・・果たせそうも無い・・。)
「転送装置の起動、完了致しました、どうぞお入り下さい、ミラージュ様。」
(・・・さよなら、フリージアちゃん)
シュンッ!
サタンが転送装置を起動すると、ミラージュが心の中でフリージアに向かって、自分の想いを
語っていると、無情にも時間が来てしまい、サタンがその事を告げると、
もう二度と訪れる事が無いであろう、街を眺めて、消える
第七話
「ぜーはー・・・ぜーはー・・・よっ良かったわ・・間に合って・・。」
その頃、「白神」ジルバは、街の中心にある噴水に座って、肩を上下しながら深呼吸をしていた
ポチャッポチャッ・・・シュンッ!
「あ、ジルバ、もう来てたのか?」
「あんたは良いわよねー・・・その便利な能力があるから・・・。」
「まあな。」
「まあそれは良いとして・・さっさと行きましょうか・・。」
スッ
ジルバが噴水に座っていると、少し遅れて「海神」ポセイドンが到着し、ジルバが息一つ上がっていない
ポセイドンを見て、その能力を羨ましい、と言うと、ポセイドンが素っ気ない顔で言う
「ああ、たしか近くに転送装置がある、それを利用しよう。」
「ええ。」
タッタッタ・・。
ポセイドンがジルバの先を歩きながら、転送装置の事を話し、
それを聞いたジルバがポセイドンの後を歩いていく
シュンッッ!
「隊長、副隊長、任務ご苦労様でし・・・!!!!!」
オペレーターが任務を終え、帰還したジルバとポセイドンに一礼し、顔を上げた瞬間、青ざめ
ポセイドンとジルバから一歩退く・・その目線には・・。
(カトレア・・・もう少しで会えるぞ・・・フフフフフフフ。)
「ちょっとポセイドン、オペレーターが怖がってるわよ。」
「はっ、も、もしかして・・顔に出てたか??」
「ええ、もうバッチリ。」
ポセイドンが不気味な笑みを浮かべていて、さすがにジルバも一歩退き、
不気味な笑顔を浮かべているポセイドンに注意すると、
ハッとポセイドンが我を取り戻すと、ジルバに己の様子を聞き、ジルバが呆れた様子で言う。
「しっしまった・・何せカトレアに会うのは20日振りだから・・・。」
「たった20日じゃない、このカトレア馬鹿。」
「失敬な!恋人を愛して何が悪い。」
(・・・何かこいつ雰囲気変わったわね・・・。)
ポセイドンが頭を押さえ、自分で反省していると、ジルバが呆れた様にポセイドンに話しかけると、
またまた開き直りそれを見て、入隊時のポセイドンの雰囲気を思い出す。
『私の名前はジルバよ、宜しく、いちおう白神って言われているの、好きに呼んで構わないわ。
それで、あなたの名前は?』
『・・・俺の名前はポセイドン・・・宜しく頼む・・。』
入隊時、ポセイドンは物静かで、殆ど喋らなく、今とは正反対にジルバの方が喋っていた。
「まあそれは置いておいて・・・ジルバ、お前も一緒に来ないか?」
「え?何で私が?」
「カトレアが少し前からお前に会いたいと言っていた、もし良ければ、だがな。」
「ふーん・・まあ今日は用事も無いし、行くわ。」
「ありがとう、これでカトレアも喜ぶ。」
ポセイドンが話題を変え、ジルバを誘うと、不思議そうな顔をするジルバが
本当に良いのか?と聞き返すが
笑顔でポセイドンが答えると、ジルバも微笑を浮かべ、承諾する。
「ポセちゃんは・・・来る、こない、来る、こない・・・来る・・・ヤッタ!ポセちゃん来る〜!」
ある無人島の庭園の中で、まだあどけなさが残る、女性の声が響く、その肌の色は白く、まるで真珠の様で
その言葉を発する唇は淡いピンク色、そして風に靡かれた黒い髪、目の色は海の様な青い色
まるで彫像の様な美しさを放つ女性・・・ちなみにポセちゃんと言うのは、ポセイドンの事である。
「この前は会えなかったからなぁ、速く会いたい・・・。」
「カトレアー!」
「この声・・・ポセちゃんっ!?」
カトレアが寂しそうにしていると、1人の男性の声が聞こえ、カトレアが立ち上がり、辺りを見渡すと
走ってくるポセイドンと、その後ろを歩いて付いてくるジルバが見える。
「会いたかった!カトレア!!」
バッ!!
「私も会いたかった!」
ポセイドンがカトレアに抱きつこうとすると、カトレアもポセイドンに向かって走っていく・・が、しかし
世の中はそう簡単には出来ていなかった。
「ジルバさん!」
ダキッ!
「は?」
カトレアがポセイドンの横を通り過ぎると、ポセイドンの後ろに居る、ジルバに向かって抱きつく。
全く予想していなかった自体に、ジルバ自身が驚いて居る。
「カトレア〜・・・。」
「嘘だよっ、お帰りポセちゃん!」
ダキッ!
「おっと。」
カトレアの方に向かってポセイドンが情けない声を出すと、
カトレアがポセイドンの方に走っていき、ポセイドンに優しく抱きつき
ポセイドンがそれを慣れた手つきで受け止める。
「寂しかったか?」
「うん、寂しかった。」
「カトレア。」
「ポセちゃん・・。」
スッ・・。
ポセイドンがカトレアの身体を少し離し、自分よりも随分背が低いカトレアを見下ろし、声を掛けると
カトレアが自分よりも随分背が高いポセイドンを見上げ、言葉を返すと、
それを合図とした様に、2人の距離が縮まって行く。
「お二人さん、暑いのは良いけど、中に入らない?」
「「!」」
そしてやがて重なろうとした、その瞬間、存在自体を忘れ去られていたジルバが2人を止めると
カトレアとポセイドンが目を見開く。
「ご、ごめんなさいっ、あっ私エネルギーの準備してきますね!」
ピューッ!
「ジルバァ・・・。」
「うるさいわね、さっさと入るわよ。」
テッテッテ・・。
カトレアが顔を真っ赤にして離れ、屋敷に向かって走っていくと、
ポセイドンがジルバを恨みがましい顔で見るが
当のジルバはまったく気にしておらず、さっさと屋敷に向かって歩いていく。
「そう言えば、この屋敷の周りには・・随分とたくさんの白い花が咲いているんだな・・。」
「ん?ああそれね。」
「それって・・お前この花の事知ってるのか?」
「いちおう女ですもの。」
ポセイドンが屋敷の周りを囲む、白い花を見て、呟くと、
ジルバがまるで何故その花をカトレアが植えているのか知っている振りをする
それを不思議に思ってか、もう1回ポセイドンがジルバに聞き返すと、ジルバが肩をすくめて言う。
「女だから?・・・まあ良いか。」
(分かってないわね・・・。)
一瞬考えるが、すぐに諦める姿を見て、ジルバが少し呆れる。
「ジルバさん!ポセちゃん!エネルギーの用意出来ましたよー!」
「ああ、分かった、今行く。」
「分かったわ。」
そうして、話している内に、カトレアが2人に向かって手を振りながら、
声を掛けると、ポセイドンが早足でカトレアの所へ向かい
ジルバもそれに続いてゆっくり歩いていく。
「それにしても、また増えたんじゃ無い?家の中の花。」
「あ、気付きましたか?何か花を育てるのがこのごろ楽しくて・・。」
「カトレアらしい理由だな。」
屋敷の中に案内されると、ジルバが屋敷の中に飾ってある様々な色鮮やかな花々に気づき、
カトレアが理由を答えるとポセイドンが微笑し、言う。
「あ、ポセちゃん、1つお願いして良い?スプリンクラーのシステムが壊れちゃったの・・・
直してくれない?」
「ん?ああ、分かった、今直してくる。」
タッタッタッタ・・。
「・・・それで?話って何?カトレア。」
話して居る内に、カトレアが何かを思い出したように呟き、
ポセイドンにスプリンクラーの修理を依頼すると、ポセイドンが小走りで
スプリンクラーのシステムがある部屋へ向かって部屋を出ると、ジルバがいきなり話を切り出す。
「ええ・・・ポセちゃんの前では言わなかったんですけど・・・。」
「・・・大体の事は医者から聞いてる・・相当悪いのね・・病気。」
「・・・はい。」
カトレアから笑顔が消え、不安そうな表情でジルバに話し始めると、ジルバが会話を打ち切り、
カトレアの方を向き、言うと不安そうな表情を取り払い、精一杯の笑顔で答えるが、
体は正直で、手は震え、顔色は青白い。
「もう・・こうして会えるのは最後かもしれません・・・。」
「・・カトレア・・もっとポセイドンを頼ってあげて、あいつは結構強いんだから。」
「ううん、強いからこそ・・言わない方が良いんです・・ポセちゃんには・・・
前を向いて歩いて欲しいから・・。」
青白い顔で笑顔を浮かべると、ジルバがカトレアの手に自らの手を置き、
包み込みながら話すと、カトレアが首を横に振り、柔らかに否定する。
「分かった、もう何も言わない・・カトレア、私はあなたに会えて良かった・・
ずっと・・忘れないわ。」
「・・ジルバさん・・・ポセちゃんはとても良い人です・・ですから、どうか・・見守ってあげて下さい。」
「・・・分かった、あなたの頼み・・命を変えても果たすわ。」
ジルバが悲しそうな笑みを浮かべると、カトレアもジルバを悲しそうに見つめ、
ジルバがカトレアの前で誓いを立てる。
ガチャッ・・!
「カトレア、修理が終わったぞ、これで大丈夫だ。」
「うん!ポセちゃんありがとう!」
「良かったわねカトレア。」
先ほどの雰囲気とはうって変わって、ジルバとカトレアが笑顔でポセイドンと接する
そして、それに気付く事無く、ポセイドンが何時も通りの態度で接する。
「あっ、夕日・・・。」
「あら・・綺麗ね、夕日に花が照らされて。」
「カトレアが毎日欠かさず愛情を注いでいるからな・・。」
カトレアが外の様子に気付き、声を上げると、ジルバが庭に目を向け、その光景に魅了されていると
ポセイドンが笑顔でカトレアに視線を向ける。
――神様、私はもうすぐ命が尽きる身です、ですけど・・とても大切な人が居ます。――
――その人は私と違って全てを持っていたのに、何も持っていない私を選んでくれた
とても優しい人です――
――ですから・・神様、私の愛する人・・ポセイドンにどうか・・
あなたの加護を・・お与え下さい――
こうして・・少女は自らの愛しい人の為に、神に祈りを捧げた・・自分の命と引き替えに。
ザアアアアア・・・。
「今日は嫌な天気ねぇ・・雨なんか降っちゃって。」
「そうでも無い、雨は全てに潤いを与える貴重な恵みだ。」
「そうかしら・・?」
ピピピピピッ!
ジルバが自分の部屋から窓を見上げ、嫌そうに雨を見て、呟くと、
ポセイドンが苦笑しながら雨のありがたみを話すと丁度、ジルバの通信機に連絡が入る。
「こちらジルバ、何か用?・・・えっ・・・そう・・分かった、説明しておくわ。」
ピッ・・。
「どうした?急に暗くなって。」
「・・・ポセイドン、良く聞いて・・カトレアが・・・。」
ジルバが通信機に向かって言葉を発すると、次の瞬間、ジルバの目が見開かれ、
暗い声でポセイドンの方へ向き、一言ずつポセイドンに言葉を発していく。
「・・・・たった今亡くなったそうよ・・・。」
「・・・そう・・か。」
「・・休暇を与えるわ・・カトレアの所に・・行ってあげて。」
「・・・すまない。」
ガチャッ・・・。
ジルバの発言を聞くと、顔を下げ、ポセイドンが震えた声で返事をし、ジルバに休暇を与えられると
静かにドアを開け、廊下に出て行く。
ガクッ・・・。
「カトレア・・・すまない・・・すまない・・・。」
ポタッポタッポタッ・・・。
ポセイドンが廊下に出た瞬間、今まで堪えたいた物が一気に出て来たのか、その場に座り込み
青い瞳からは絶え間なく、透明な水、涙が溢れ、床をぬらす。
「お前を愛してしまった・・・レプリロイドの俺を・・許してくれ・・・。」
自分の顔を手で押さえつけながら、誰にでも無く、自分への懺悔をポツリ、ポツリと口に出していく。
ポセイドンの技
技その1:ウェーティング・クロー
(水を太い柱状に変え、攻撃する技、単純だが水柱の圧力はレプリロイドでも簡単に
潰されてしまう凄まじい物。)
ちなみにポセイドンは水脈を探すのが得意なので、何処でも使用可能
技その2:水檻
(水を檻じょうに変え、相手を中に閉じこめる技、ただの水と思い出ようとすると
水の圧力に潰されるので脱出不可能な技)
技その3:ニードル・ブルー
(水を凄まじい衝撃を与え、弾丸の様な威力をもたらす)
ちなみに装甲が薄いレプリロイドにしか効かないのが弱点(笑)
技その4:ウェーティング・アロー
(自分の周りに竜巻を起こし、水を矢の様にして飛ばす)
ニードル・ブルーより射程距離が長く、威力も強く、一気に大量発射できる
ちなみにダイヤモンドも軽く壊すので要注意技
技その5:水破
(水を衝撃波として発射する)
威力はウェーティング・アローよりも上だが、命中率は劣る
技その6:オーシャン・リング
(好きな距離を水で囲むことの出来る技)
主に相手を窒息させる時や相手を水圧で潰すときや自らの有利な状況で戦う時に使用
技その7:水体
(これを使うと、体が水になって物理攻撃が効かなくなる)
主に接近戦で使用
技その8:サウザント・ウェーヴィング
(空気中の水分から大量の水を作り出し、大波として繰り出す)
ポセイドンの砂漠で海の約半分程の水を作れる能力を利用して水を大量に作り出し水圧を極限にまで高めてあるので
波に触れた瞬間お陀仏になりますね
技その9:ノアの箱船
(ポセイドンの最強の技で周辺20kmにある全ての水分を吸い上げ、攻撃に利用する)
効果はサウザンド・ウェーヴィングと同じだが、大きさ、水圧ともに桁外れの技、それにしても水分を
吸い上げて攻撃なんて迷惑な技ですよね(笑)
技その10:ウォーター・リカバリー
(これは戦闘に使用する技じゃ無くて水を作る時に使用します)
攻撃をする時にもポセイドンは空気中の水分から水を作り出しますが、それはあくまで戦闘時に
使用する水なので、量が少なく足りないので、この技を使います。
この技だと戦闘時に水を作り出すよりも10倍近くの水が作れます。
第八話
シュンッッッ!
「あー・・・ポセイドンの家がこんなに転送データを取得するのに苦労するとは思わなかったわ・・・。」
ジルバがポセイドンの家の前の海岸に転送され、疲れた表情で体を伸ばす
「・・・それに、あいつ・・・防犯装置ぐらい解除しておきなさいよ。」
チャキッ
ビイイインッ!!・・・バンッバンッ!!
「って、早速撃ってきたわね・・望む所よ、交響詩=シンフォニック・ポエム。」
フィイイイン・・・シュッ・・・ドォンッ!!
メカニロイドが一斉に銃弾を撃ってくると、ジルバは慌てること無く、
自分の武器、サイディフェンスダガーを
構えると、周辺の光を集め、球体状のレーザーにして発射すると、メカニロイド達が呆気なく壊れるが、
どんどん他のメカニロイド達が騒ぎを聞きつけ、ジルバに向かっていく
「ったく・・面倒くさい・・・即興曲=アンプロウプチュ。」
シュッビイイッ!!
ザシュッ!
ドカッ!
バキッ!
ジルバが何かの構えを取ると、メカニロイド達がジルバに攻撃を次々に命中させるが、
ジルバは全くよけずその後もメカニロイド達の攻撃を受け続ける
「ったく、この技は相変わらず痛い・・さて・・冥界の番人に裁かれよ!」
シュッッ!
バキバキバキィッ!!!!
ジルバが自分の愛用武器サイディフェンスダガーを振りかざしたと思いきや、
メカニロイド達が一気に傷を負って壊れ
何時の間にかジルバのアーマーがメカニロイド達に攻撃を受ける前の状態に戻っている
「はぁ、もうメカニロイドは居ないみたいね・・ポセイドンに文句言ってやんなきゃ・・。」
チャキッ
ガチャンッ・・・バキッバキッ。
溜息を付き、武器を仕舞うと、花だらけの屋敷に向かってゆっくりとメカニロイドの残骸を
嫌がらせのように踏んづけて歩いて行く
「・・・あっ、そう言えば・・・防犯装置を解除するの・・・忘れてた・・。」
ちなみにポセイドンはアーマーを外し、自らの長い髪を後ろで束ねて、只今ガーデニングの最中
これを見て、誰がこの男を「海神」と分かるだろうか。
「まあ大丈夫だろう、あいつなら死にはしないだ・・・」
ドカッ!
「ちょっとポセイドン、防犯装置くらい解除しときなさいよ。」
ポセイドンが続きの言葉を言おうとした次の瞬間、「白神」ジルバの目が覚める様な一撃が入る
はっきり言って普通のレプリロイドならジルバの蹴り一発でとっくに死んでいる
「ああ、すまない、すっかり忘れてた。」
「今度やったら蹴り一発じゃ済まないわよ。」
「覚えておく、それはそうと・・。」
「何よ?」
さすがは「海神」ポセイドンなのか、ジルバの蹴りをさほど痛くは感じてないらしく
なおも花に水をやり続けている
「カトレアの墓参りに行く、お前も一緒に来てくれ。」
「当たり前よ、その為に来たんだから。」
「ありがとう。」
ポセイドンが視線を少しだけ伏せてジルバにお願いすると、
ジルバがさも当然の様に言うと笑顔で立ち上がる
パサッ・・
「来るのが遅くなってごめんなさい、カトレア。」
「いや、きっとカトレアも喜んで居るだろう、お前が来て。」
ジルバがカトレアの墓に花を供えて、ジルバが黙祷を捧げると、ポセイドンがカトレアの墓を
優しく、そして悲しそうな瞳で見つめる
「そう言えば、あんたあの白い花、何で屋敷の周りにあんなに植えてあると思う?」
「あの花が何か・・?」
「・・カトレアが生前、自分が死んだらあの花の事をポセイドンに教えて欲しい、
って遺言を残してたの、だから教えてあげるわ」
「カトレアが?」
ジルバが立ち上がり、屋敷に植えてある白い花の話をすると、
ポセイドンが意味が分かっていない様な顔をして
聞き返すと、ジルバが決心したような声で話し始める。
「あの花の名前はプリムラ・シネンシス・・・
カトレアは自分の命の期限を知って・・私に聞いてきたの・・・。」
ジルバが花の名前を言い、ポツリ、ポツリとカトレアの事を話し始める
『ジルバさん・・・私・・・どうしたら良いんでしょう・・・。』
『・・カトレア・・大丈夫よ、きっと治るから。』
『・・分かってるんです・・もう・・私には時間が無いって・・だから・・
ポセちゃんに・・何かを残したい・・。』
『・・カトレア・・。』
ある病院の病室で、ベットに横たわっているカトレアに向かってジルバが話しかけると、
カトレアがベットに視線を落とし、悲しそうに呟くと、ジルバも床に視線を落とす
『・・・ねえカトレア、そう言えば・・・
ポセイドンが今日持ってきたラベンダーの花言葉を知ってる?』
『ラベンダーの・・花言葉?』
『「あなたを待っています。」だって・・あいつもキザよね。』
『花言葉・・・そうだ・・・!』
ジルバがこの空気を何とかしようと、ポセイドンが持ってきたラベンダーを
カトレアに見せ、花言葉を教えると
カトレアが急に目を見開き、思いついたようにベットから起きあがる
『ど、どうしたの?カトレア・・。』
『思いついたんです・・・ポセちゃんに・・残せること・・。』
『もしかして・・・花言葉?』
『そうです、あの・・もし良かったらジルバさん・・・協力してくれませんか?』
『もちろんよ!やるならとことんやらなきゃ!』
カトレアが突然何かを思い出したように言うと、ジルバもカトレアの考えていることが分かったのか
カトレアに向かってとびきりの笑みを浮かべる
だが 海神は人に憎しみを覚え 赤き破壊神によって海の底で眠りにつかされた
だがその眠りは邪悪なる剣によって覚まされてしまい
海神は悪しき者達の手に落ちる
―――カトレア 俺は もう 誰も死なせたくない
だが 俺は 闇に飲まれてしまった―――
―――俺に ティルヴィングの力に 打ち勝つ力 を 闇を打ち破る 力を―――
―――もう 前の様に ソニア を 傷つけたく 無い 涙を 見たくない―――
ティルヴィングに体を支配されながらも、自分の意志を僅かながら取り戻し、
何とかしようとするがまったく体が動かなかった
―――誰か 助けてくれ―――
そして、最後に誰かに向かって手を伸ばし、意識を無くす
「!」
バッ!
「どうしたんだソニア?」
「何か・・・誰かに呼ばれた気がしたの。」
ポセイドンが意識を失った同時刻、ソニアが何かを感じ取ったように後ろを見るが、誰も居ない。
そんな妹の異変に気付いたレノンがソニアに対して声を掛けるがソニアもあまり分かっては居ない様子。
「聞き間違えだな、よく有ることさ。気にすんな。」
「うん。そうだね。」
タタッ
レノンがソニアに異変の理由を聞き間違えだと言うとソニアも納得し、レノンに向かって
走っていく。
(・・・ポセイドンさん。もうちょっと待っててね・・・今、ソニアが助けてあげる。)
(・・・・聞き間違えじゃ無い・・・たしかに俺も何かが聞こえた・・
絶対にソニアはポセイドンを助ける為に
何かやらかす・・だから俺が見張ってないとな。)
ソニアが内心でポセイドンの事を想っているとその姿をレノンが見て
絶対にソニアの行動に注意を集中させる。
こうして人々の想いは交差してどんどん沈んで行く。
歴史の審判とは時として残酷な決定をする事がある。
だが人はそれを乗り越え歴史を積み重ねていく
この歴史で誰が生き残り、誰が死に絶えるかは誰も知らない。
知っているのは・・・気まぐれな赤兎と神しか居ない。
赤兎は気まぐれで人の運命を狂わす。
そしてそんな中海神は闇に沈んだ。
海神は光を求め
少女は海神の為に祈り
堕天使は少女を守ることを誓う
様々な想いが交差する中
歴史は進んで行く
ELITE HUNTER ZERO