クライム(とろ)さんより漫画+挿絵「ゼロアイ新婚編」
『雪のバレンタイン』(ゼアシン005話)
2月13日、夜。ラティとブレスが寝静まった頃。
寝室で家族4人で横になっていたところ、アイリスがゼロの手をギュッと握りしめてきた。
数日前にこの日の夜に久しぶりに二人きりでデートをする約束をしていた。
心地よさそうにかわいい寝息を立てて眠っているラティとブレスに別れを告げ、
外へ出る支度をしたゼロとアイリスは二人きりのデートを開始した。
2月中旬の夜となれば、外の気温がかなり下がっているのだが、それに反して
二人のアツアツぶりは続いていた。
夜道。ゼロとアイリスのコートがぴったりくっついて寄り添いながら2人は歩いていた。
ちらほらと雪が降っており、白い息が漏れる。
「さむいね~」
「あ、ああ」
気温は一桁で手にも寒さが堪えるが、久しぶりの二人きりの夜道ということで両者の心が浮ついており、
寒さはさほど気にならなくはなっていた。
アイリスはゼロが手を入れているコートのポケットに手を入れて、ゼロの手と絡ませてきた。
「お、おい…」
突然の出来事に戸惑うゼロ。
「ふふっ、あったかぁ~い」
ポケットの中でゼロの手を握ったり摩ったりしてアイリスは互いの手を温め合った。
そしてゼロは指でアイリスの手を撫でまわす。
「やぁ~ん、くすぐったぁ~い」
「ヒヒッ」
ちょっとしたイタズラ心でアイリスを喜ばせる。
「久しぶりにこうして二人きりで歩いていると初めてデートした時の事を思い出すね…」
「ああ、そうだな…」
繁華街。ふと、近くにゲームセンターがあるのが二人の目に入った。
「ちょっとやっていこうよ」
アイリスがゼロの腕を引いてきた。
「うっし、たまにはゲームの中で暴れてみるか」
二人がゲーセンの中に入ると、様々なアーケードゲームの筐体から発せられる音や音楽が
ごちゃまぜに耳に鳴り響いてきた。
「ゲーセンか~。久々に来たな」
普段、ハンター業務や育児に追われていて二人きりのデートする機会が減っていたことも
あって、ゲーセンに入るのは久しぶりだった。
しばらく様子を眺めて歩いていると一つのゲーム機に目が留まった。
「お、新作か」
『ロックマンアビリティ』という元はパチスロの作品がゲーム化されたものだった。
今作の新キャラの他に過去シリーズのキャラも使用でき、二人で協力プレイも可能だ。
「二人でプレイ出来るのね!」
「よし、やるか」
ゲーム機の前に長椅子が置いてあり、アイリスは1P側に座るゼロにぴったりくっつけて
座った。
コインを投入する。
ピロロォ~ン。
効果音と共にタイトル画面が現れ、ボタンを押すと、キャラクターを選択する画面が現れた。
「お、たくさんいるな」
「どれにしよう~?」
レバーを操作して、選択可能なキャラを眺める。
「オレは、主人公のコイツにするぜ」
ゼロはロクアビ版のロックマンを選択し、決定ボタンを押した。
「じゃあ、私はヒロインの子」
アイリスはそのヒロインのロールを選択。
雪原ステージ。
キャラの背後からの視点で3DCGで表現されたロックマンとロールがライドチェイサーで
雪原を駆け抜ける。動きがリアルでスピード感ある背景も迫力だ。
しばらく進むと中ボスっぽい巨大なカニ型の敵が現れた。ライトチェイサーから降りた
ロックマンとロールが戦闘態勢に入る。
「来たな!」
「いくわよーッ!」
操作はシンプルで、左レバーで移動、Aボタンで攻撃、Bボタンでジャンプ、Cボタンで
武器チェンジだ。
ズドドドド!!
先手必勝と言わんばかりにAボタンを連打して敵にダメージを与えていく、ゼロとアイリス。
敵に着実にダメージを与えており、敵の体力ゲージがみるみる減少していく。
ドカァアーーン!!
あっという間に敵は破壊された。
「ま、最初のステージだしな、こんなもんか」
「ラクショウね」
しばらく進むと敵の基地の中に侵入、ボスが現れた。巨大な大型のボス、マオー・ザ・ジャイアント。
「ちっ、嫌な事を思い出しちまうぜ」
元は実際にハンターベースで起きた事件の物がモチーフになっていて、デザインもほとんど同じだった。
こいつもラクショウ、かと思われたが、途中から犬型のザコ敵が現れ、思わぬピンチに陥った。
ゲームの腕が上手いと敵が強くなるシステムのようだ。
「ちっ、ザコの犬が邪魔だッ!」
連射でザコをなぎ倒す。
「あ~ん、このザコの犬の動きが早くて避けられない~」
ザコの動きが早く、避けるのも、攻撃を当てるのにも苦戦するアイリス。
「む~~~」
思い通りに動かせなかったりして焦り出し、よりゲームにのめり込んでいく。
もにゅ!
(うぉっ!)
なんと、アイリスが熱中するあまり、密着しているアイリスの太ももがゼロに押し込まれてきた。
この絶妙な柔らかさと張りと生暖かさのハーモニーによる甘い誘惑に我を忘れ、ゼロはドキドキしてしまった。
「あっ!」
ドカァァアーーーン!!
ゼロが気を取られている所で敵にやられてしまった。
GAMEOVER。
「あぁ~ん、やられたぁ~」
「ミスっちまったか…」
(まあ、ゲームだし、ハンターの実戦では、より大胆な技を繰り出せるんだが、
操作に手こずって苦戦しちまったな…。そして、突然、密着してきたアイリスの太ももの感触に
クラクラしちまった…。オレとしたことが…)
「やられちゃったけど楽しかったね」
「そうだな」
ゲームを終えてゼロが立ち上がると、アイリスはゼロの腕を抱き寄せて顔を寄せてきた。
ゼロはさきほどの胸のドキドキが冷めないまま外へ歩き出した。
(こんな感覚も久しぶりだな…。ハンター業務の忙しさで忘れかけていたが、アイリスとデート
し始めた頃はこんな感じでドキドキの連続だったな…)
喫茶店。
ゲーセンを出た二人は近くの喫茶店に寄ることになった。
「ちょうど小腹が空いてきた頃だ」
「二人きりだし、カップル専用のドリンクが飲みたいな」
「いつか一緒に飲んだなあ。久しぶりに再チャレンジするか」
店員を呼んで『マオー・ザ・ジャイアントジュース』を注文。
「さっきのゲームを思い出すな」
「そだね」
時間帯が深夜ということで周りの客もカップルが多かった。
「やっぱり隣に座ろ」
テーブルを挟んで向かい合わせで座っていたアイリスだったが、長椅子に座っているゼロの
隣にアイリスが密着してきた。
「フフフッ」
「お、おい。近すぎないか」
思わず慌てふためくゼロ。
「周りもカップル多いし~、私もゼロに甘えたくなってきちゃった」
「ま、まあ、久々のデートだし、いいよな…」
近頃はラティやブレスがすねないように遠慮してアイリスと必要以上にベタベタ密着するのは
避けていたのだが、今は二人きりのデートだ。遠慮するのも野暮だとゼロは思った。
「さっき、ゲーセンでもドキドキしてたでしょ?」
「バ、バレてたのか」
「フフッ、ゼロが慌ててたのがおかしくって。思わず付き合い始めた頃の事を思い出しちゃったなぁ」
「ははは、実はオレもだ」
「ゼロ…」
「アイリス…」
互いの目を数秒見つめ合った後、互いの意思が通じ合い、二人は口づけを交わした。
「うぅ~ふぅ~ん」
「ちぅ~」
数分後。
「あのぉ~、お客様~?」
注文したカップル専用ドリンクが二人の前に運ばれた。
「あ、来たぞ!」
「あ、え、は、はい!?」
ゼロとアイリスは慌てて、お互いの口から口を離した。
「ではまた、ご注文の時はお呼び下さいませ~」
店員は去っていった。去り際に笑みが浮かんで見えたのは気のせいではないはず。
「よし、飲むか」
巨大なドリンクには2本合体したストローが刺さっている。
「これ、二人で吸うやつか」
「もちろん!」
先が二つに分かれており二人で同時に吸わないと飲めない、ラブラブストローというやつだ。
今更照れる仲でもない気がするが、久しぶりという事で気恥ずかしい感じがした。
「ちゅーー」
「ちゅーーー」
二人同時に吸う事でストローにジュースが送り込まれていく。
「プッ、クスクス…」
アイリスが突然ストローから口を離して笑い出した。
「?どうした?」
「ゼロがストローで吸ってる時の顔がおかしくって」
「ははは」
実はゼロはアイリスにウケてもらおうと、飲んでいる最中に意図的に目を泳がせたり
変な顔をしておどけてみせたりしていた。
再びストローで吸う二人。
「プッ…」
アイリスはまたストローを口から離した。今度は手で口を押えている。
数秒後、アイリスは自身を落ち着かせ、
「ちょっと。飲んでる最中に変な事するのやめてくれな~い?」
アイリスは笑いをこらえるのに精一杯だ。
「わりぃわりぃ、アイリスの反応が面白くて、つい、な。ははは」
次は、ジュースに盛られているデザートのオレンジをアイリスが手でゼロの口元へ運んでいく。
「はい、あぁ~ん」
「あぁ~ん」
もぐもぐ。
その頃、自宅で眠っているラティとブレスは…。
「ぶぇえ~~ん、ぶぇえ~~ん」
ブレスが目を覚まして、目の前からアイリスがいなくなっていることに気づいて泣き出していた。
「うぅ~~ん」
その鳴き声に気づいて近くで寝ているラティも目を覚ます。
「ぶぇええ~~~~ん、ぶぇええ~~~~ん!!」
泣き声の声量がさらに増していく。
「ブレちゃんが起きちゃった…。あれ、パパとママは…?」
ベッドの近くにあるテーブルの上に置いてある書き置きに目が留まる。
『パパとママは、ひさしぶりにデートにいってきます。
パパとママがいないあいだ、ブレスのことをおねがいね。 ママより。』
「なんだ、パパとママ、出掛けちゃったのか~」
「ぶぇええ~~~~ん、ぶぇええ~~~~ん!!」
ラティは泣いているブレスを抱きかかえて、あやし始めた。
「ブレちゃ~ん、泣いちゃダメでちゅよ~~。パパとママはお出かけ中でちゅよ~~」
「ぶぇええ~~~~ん、ぶぇええ~~~~ん!!」
ブレスを揺らしてあやし続けるラティ。
「ぶぇええ~~~~ん、ぶぇええ~~~~ん!!」
「う~~ん、泣き止まないでちゅね~…。お腹が空いたのかな、それともおしっこ、かなあ…」
そこでラティはある事を思い出した。
「ああ、そうだ。パパとママがいない時のために世話をするコピーロイドがあるんだった」
寝室の外にある、そのコピーロイドは、スイッチを入れると、あらかじめインプットしてある人と
見た目、質感、人格が本物そっくりに再現され、指令を出すと指示通りに動き、その時に
経験した事の記憶がインプットしてある人と後で融合する事が出来る、というものだ。
「こうなったら、ママのコピーロイドにお願いした方がいいわね」
ラティが赤ん坊の頃も、ゼロとアイリスがハンターやオペレータの仕事で忙しい時は、
この育児用のコピーロイドにお世話になったことがある。
ピッ。
コピーロイドの鼻にある赤いスイッチを入れる。インプットしてあるデータはアイリスが選択されている。
わずか数秒で、小さな黄色い人形だったコピーロイドが巨大化して、アイリスと本物そっくりの姿に
変身した。鼻が赤くなっている以外はアイリスと見分けがつかない。
「こんばんは、アイリスのコピーロイドです。アイリスへ送る記憶を一時的に構築する事が出来ます」
「こんばんは、もう一人のママ。えっと、今、パパとママがいなくて、ブレスが泣いちゃってて…」
「わかりました。私の出番ですね」
コピーロイドはブレスの元へ行き、抱きかかえた。
「ぶぇええ~~~~ん、ぶぇええ~~~~ん!!」
「ブレちゃ~ん、ママでちゅよ~~」
コピーロイドがブレスをあやした。
「ぱぁーぱいー!ぱぁーぱいー!」
すると、ブレスはコピーロイドにおっぱいを要求してきた。
「おっぱいでちゅね~、ちょっとお待ちくだちゃいね~」
コピーロイドでもおっぱいも出るように設計されている。
ラティはコピーロイドの背中のハッチにあるパネルを操作して、『甘えん坊レベル』をMAXに
設定した。甘えん坊レベルMAXはブレスに対して最高に喜びを与える接し方をする、という
設定である。
アイリスの姿をしたコピーロイドは服をさっそく脱ぎ始めた。ブレスに安らかな眠りを提供するには
生まれたままの姿でブレスを抱いて寝るのが最善だと考えたためである。
さすがに全裸はマズイと判断したのか、下着はつけたままで、ブレスが飲むおっぱいのところだけ、
下着を外した。
「ぱぁーぱいー!ぱぁーぱいー!」
これにブレスは興奮し始め、コピーロイドのアイリスのすべすべのボディに思いっきり抱きつき始めた。
「ふふふ、甘えん坊さんね」
「ぱぁーぱい~~~」
ブレスはおっぱいをしゃぶりながら、再び眠りについた。
「これで一安心ね」
ラティはほっと胸をなでおろし、再び隣で眠りについた。
喫茶店。
食事を終えて、会計を済ませた、ゼロとアイリス。時間は0時を過ぎていた。
「のんびり飲んでたらけっこう時間経っちまったな」
「ゼロったら、飲んでいる時、私を笑わせすぎよ」
「ははは」
「ブレスはぐっすり眠っているかしら」
「ラティもついているし、大丈夫だろ」
「そうね」
しばらく歩いて、二人は近くにある公園のベンチに座った。
「ふふっ、実は今日はゼロに渡したい物があるのでした」
「え?なんだ…?気になるな…」
アイリスは水色のコートのポケットからピンクの紙で包装されているハート型の箱を取り出した。
「今日、2月14日、はバレンタイン。だから…」
アイリスはハート型のチョコをゼロに手渡す。
「おぉおーー、チョコレート?!うわぁあ~、ありがとう、マジで嬉しいぜ…」
「フフッ」
ゼロは大喜びしてアイリスからチョコを受け取った。同時にゼロはアイリスがとても愛おしく感じ、
瞬間、アイリスを抱き寄せた、強く…。
「ゼロ…?」
アイリスを抱き寄せている最中、ゼロは、数年前、レプリフォース大戦で大破したアイリスが
修理され、無事に元の姿に戻った時の事を思い出していた。
「ゼロ…」
その時もゼロはアイリスを強く、強く、抱きしめていた。
「すまない…。お前の気持ちも分かってやれず、辛かっただろう…。
そして誓おう、アイリスを、もう、2度と一人ぼっちにはさせないことを…!」
「ゼロ…」
アイリスは涙した。それから、アイリスの気が沈んだ時にはゼロがさりげなく励ますようになった。
そしてアイリスはそんな彼により深く、惹かれていった。
ゼロは、この時の事を思い出すと、心の中でもう一度、アイリスを幸せにすることを誓うのであった。
「アイリス、今までありがとう。そしてこれからもよろしくな…」
「うんっ!」
「そうだ、帰りにゲーセンでプリクラ撮って帰ろうぜ。そして今度の休日にはラティとブレスも連れて
4人で記念写真撮りたいな」
「いいわね、ラティとブレスもきっと大喜びするわ」
(以下はゼアシンに関するイラストです。)
ELITE HUNTER ZERO