クライム(とろ)さんより漫画+挿絵「ロックマンプラス」











































015話『新たなる刺客』

 Dr.ワイリーが送り出してきた新たな戦闘ロボット、
ワープマン、バキュームマンに辛くも勝利したロックマン。
 そして休む間もなく、市街地でフォルテが発砲するという事件が発生した。
フォルテを止めるため、さっそく街へと向かったロックマンだったが…。

「来たな、ロックマン!」
「今すぐ攻撃をやめるんだ!」
 ズドッ!
 ラッシュジェットで市街地に到着し、フォルテの姿を捉えたロックマンは
すぐさまロックバスターで攻撃を放った。

「スピードギア!…ファッハハハ、進化したオレのスピードについてこれるか!」
 フォルテは普段の倍以上の速さでダッシュし、攻撃をかわした。
街の人々は既に避難済みであり、かわされた攻撃は建物に直撃した。
フォルテのこの異常なスピードの動きにロックマンは覚えがあった。

「は、はやい!ギアシステムを組み込んだのか!」
 以前、ワイリーとの戦いで使用したダブルギアシステム。
大学時代のライト博士とDr.ワイリーが開発中に袂を分かつきっかけにもなった
システムである。普段の倍以上のパワーまたはスピードを引き出す事が出来るが、
同時にこれを装着したロボットの身体に大きな負荷がかかるという危険性を孕んでいた。

「次はこっちからいくぞ、パワー…」
 続いてフォルテは攻撃を仕掛ける為、パワーギアへとギアチェンジを試みるが…、
バスターに変形中の片腕から煙が出始めた。
「ちっ、オーバーヒートか…」
 肩を手で押さえて動きを止めるフォルテ。

「ギアシステムには使用制限があるんだ。悪いけどこのまま足止めさせてもらうよ!」
 ヴィヴィヴィ…
 ロックマンはこの隙を逃さず、地面に着地すると同時にエネルギーをチャージし、水色に光り輝く
バスターの銃口をフォルテに向ける。

 ズドォォオオオオオ!!!!!!

「く…ッ!」

 ロックマンが放ったチャージショットがフォルテに命中したかと思いきや…、

「なッ!! 消えたッ?!」
 突如、フォルテの目の前の空間に2メートル程の大きな穴が開き、チャージショットは
その空間の中に吸い込まれた。

 直後、穴が開いた空間の近くで、もう一つ別の空間の穴が開いた。
「…フッ、どうやら間に合ったようだな」
 そしてその穴から見たことのないロボットが現れた。
そのロボットはロックマンやフォルテの身体よりも大きなサイズの黄色いカッターを胴体とし、
それに頭部、両腕、両脚がついており、その各部にも巨大なカッターがついていた。


「誰だッ!!!」
 明らかにロックマンと敵対する存在。その相手にロックマンは銃口を向けた。
鋭い目つきにある赤い瞳がロックマンへ向く。

「ワイリーナンバーα+003、カッターマン」
「カッターマン…!」
 名乗りあげた名前を復唱する。

「またジジィが別のガラクタを…。オレの戦いの邪魔を、する、な…!」
 オーバーヒートを起こしながらも闘志を失っていないフォルテはカッターマンを睨みつけ、
前に出ようとする。

「ワイリー様の命令だ、退却してもらう」
「ふざ…けるな!戦いの勝負はまだついていない…!」
「貴様、研究所にあるギアシステムを無断で持ち出して適当に取り付けただろ!
 アレをまともに使いこなすには貴様の身体の一部を改造してから取り付ける必要がある。
 今のお前ではオーバーヒートを起こしたまままともに戦えんぞ!」
「うるさい!オレに指図するな…ッ!」
「ええい、分からず屋めがッ!」
 カッターマンは腕のカッターで再度、空間に穴を開けてその中にフォルテを蹴り飛ばした。

 ドスッ!

「ぐあーーっ!」
 フォルテは穴の中に消えた。数秒後、カッターマンが開けた空間の穴は全て閉じられた。

「…これで邪魔者はいなくなった」
「…!!」
 カッターマンはロックマンの方へ身体を向けた。

「ワイリーナンバーズは僕が倒す!」
「やれるか? オレのカッターで豆腐のように角切りして麻婆豆腐にしてやんよ!」

 ロックマンとカッターマンの戦闘が始まった。

(街の人々は既に避難済みだ。だけど、無闇に建物を破壊するわけにもいかない。
短期決戦で行くぞ…!)

「やあああああッ!!!」
 カッターマンの姿を捉え、バスターを放つ。

「フッ、バカが」
 カッターマンは腕のカッターで目の前にさきほどと同様に空間に2mほどの穴を開ける。
ロックバスターはそこに吸い込まれた。

「あっ!」
「俺様の能力でお前の攻撃なんか余裕だっつーの」

「くそ…!」
(やつに攻撃を当てるためにはまともにバスターを撃つだけじゃダメか…。
何かフェントでも仕掛けないと…)

「ほな、次はこっちからいくで…!」
 カッターマンはロックマンの周りをダッシュで移動し、次々と空間に穴を開けていく。
「ソラソラソラソラソラぁああーーー!!!」
 続いていくつか開けた穴のうちのカッターマンの傍にある穴の中へ腕から放つカッターを何本か飛ばす。

カッターが穴の中に消えたかと思いきや…、

「うあっ!」
 ロックマンのすぐ左隣に空いている穴からカッターが飛び出してきた。それをかろうじてかわす。

「ッハッハッハーー!!オレ様が開けた穴は他の穴と繋げる事ができるんよ。
ワームホールってやつ~?
 貴様にはこんな芸当できねえだろ~?俺様、最強~!」

「なんてやつだ…!」

「ついでにいいこと教えてやんよ。お前が倒したワープマンは瞬間移動、バキュームマンは
ブラックホール、と、今回のワイリーナンバーズにはワイリー様が盗み出した異星人の技術が
組み込まれているんだぁよぉ~。
地球の技術で戦うお前らなんかに勝ち目はないっつーの!ソラソラソラァーッ!!」
 さきほどと同様にカッターを穴に向けて放つ。
「次はどこから飛び出すかなあ~?」
「…!!」
 カッターが出てくる場所を見破る事に神経を集中させるロックマン。

「ぐあああーーー!!!!」
 ロックマンの背後にある穴から飛び出したカッター数本がもろにロックマンを刻み付け、
ダメージを与えた。

 ガク…。
「ぐ…ッ!」
 あまりの強烈な痛みに足を崩す。

「もう終わりか。案外あっけないのな、ロックマンさんよ」

(僕は…、ここで負けるのか…!このままワイリーロボのいいようにされてしまうのか…!)

 


 その頃。ライト博士研究所。
市街地の防犯カメラから映し出されたロックマンの姿が研究所の巨大モニターに映る。
「ロック…!」
「なんてことだ!」
 ロックマンを見守るロールとライト博士が声をあげた。

「ワイリーめ、宇宙探査機をハッキングし盗み出した地球外文明の技術で挑んでくるとは…!」
「博士!このままではロックがやられちゃう!
 私もロックの所へ戦いに行きます!」
 以前、マーヴルヒーローズとの戦いでロールバスターを使用した経験があるロールはロックマンを
助けに行くために行動を起こそうとした。
「待つんじゃロール!今のお前ではあのワイリーロボの攻撃に打ち勝つことは難しい…」
「そんな…!」
 博士の言うとおりロールの力だけではロックマンを助けに行く事が出来ないと認識し、落ち込む。

「こうなれば以前ロックに組み込んだギアシステムを再び使用するしか手はないか…!」
 以前の戦いで使用したギアシステムを多用する事はロックマンの負担になってよくないと思い、戦闘終了後に
使用にロックをかけるプログラムを施していた。
「ロックが再びギアシステムを使用するには、このギアシステム使用制限解除チップを差し込み、
インストールする必要がある」
「それで、ロックがカッターマンの攻撃を打ち破る事が出来るんですね!」
「打ち破れるかどうかはロック次第じゃが、とにかくこのチップをロックへ届ける事が先決じゃ!」

 近くにいたエディが現れる。
「ボクにお任せポヨン!」
「ああ、頼んだぞ、エディ」
 ライト博士がエディにギアシステム使用制限解除チップを渡した。


 市街地。
 カッターマンの攻撃を食らって倒れているロックマンは微動だにしていない。
「さて、いたぶるのも飽きたし、そろそろトドメでも刺してやるか」
 余裕をこいているカッターマンがロックマンに腕のカッターを向ける。

 研究所。
「しまった、間に合わないか!」
「ロック!立って!!」
 モニターでロールが通信機に向かって叫ぶ。

 市街地。
「うぅ…、身体が動かない…」

 ピュルリ~ララ~♪
 その時、聞き覚えのある口笛が近くから聞こえた。

「スピードギア!ブルースストライクッ!!」
 ズドォォオッ!!



016話『ダブルアタック』


 ピュルリ~ララ~♪
 聞き覚えのある口笛が近くから聞こえた。

「スピードギア!ブルースストライクッ!!」
 ズドォォオッ!!

「ぐああああーーッ!!!」
 何者かに放たれた巨大なエネルギー弾がカッターマンの背中を直撃した。
放ったのは赤いメットに黒いバイザー、そして黄色いスカーフを巻いているあのロボット。
「…ブルース!!」
 倒れて身体が動かない状態で顔を上げるロックマン。

 その頃、研究所からアイテムを持ってきたエディがやってきた。
「お待たせポヨン!」
 エディの頭の扉が開き、ライフエネルギーとギア使用制限解除チップがロックマンに投げ渡される。

 トゥルルルルルルーー!!
 ゲージが上がる効果音とともに、ロックマンの体力が全回復し、立ち上がる。
「…よし!」

「今回のワイリーナンバーズは手強い。協力して倒すぞ!」
 ロックマンの隣に並び、戦闘態勢に入るブルース。
「ありがとう、ブルース!助かったよ」
「フッ」

「ぐぬぬぬぬ…!一人が二人に増えた程度で形勢逆転など出来んぞ!」
 ロックマンにトドメを刺すところを妨げられ、カッターマンは怒りを露わにした。

「ブルースがいれば百人力だ!ギアシステムも回復したし!」
「よし、同時にギアアタックで攻め込むぞ!」
 ロックマンと共にブルースがギアを使った攻撃で攻めようと試みる。
ここでロックマンはブルースがいつの間にギアシステムを組み込んだのかが気になったが、今はそんなことを気にかけている場合ではない。

「「スピードギアッ!!」」
 同時に2人が掛け声を上げ、青く光りながら猛スピードでカッターマンへ接近する。

「くっ、二人ともギアが使えるのか。だが、その力を持っているのはお前らだけじゃねーぞ!!」
 同時にカッターマンの身体も同様に青く光りだした。
「スピードギアァァァーーーッ!!」
 2人の接近をかわし、カッターマンはカッターで空間を切り刻み、2つの穴を開ける。
「そっちが二人がかりならッ!」
 カッターマンは右半身を穴の中へ潜らせ、その右半身はもう1つの穴から現れた。
「こっちは2分割して相手してやるぜッ!!」

「「何ッ!!」」
 穴から飛び出たカッターマンの左半身がロックマンへ、右半身がブルースへと迫る。
もちろんスピードギア発動中のため、移動速度が倍になっている。

「オラオラーッ!!」
 カッターマンは腕からカッターを飛ばすまでもなく直接、腕や脚を振り回す事でカッター攻撃を仕掛けてくる。
「危ない!」
「味なマネを!」
 ロックマン、ブルースはスピードギアでギリギリ攻撃をかわすのに精一杯だ。
2分割したカッターマンにとっては戦力が2人に増えた程度では造作もないのだった。

「フハハハハーッ!!」
「くっ!攻撃を与える隙がない…!」
 振り回されるカッター攻撃を避け続けるロックマン。

「ブルースシールドッ!!」
 カキンッ!
 ブルースは盾を前に出し、カッター攻撃を防ぐことに成功。
「ちっ!」
 カッターマンの腕を振るうカッターが盾によって弾かれる事によって生じた隙を逃さず、ブルースはチャージ攻撃を
カッターマンへ叩き込んだ。
「ブルースストライクッ!!」
「ぐあっ!」

 ダメージを食らった事でロックマンの方に迫っているカッターマンの左半身の動きも止まる。
「よし、今だ、ロックアッパーッ!!」
 エネルギーチャージした力をそのまま拳を振り上げる事でカッターマンにぶちかました。
腕のカッターがへし折れ、落下。
 カラン…。
「やろう…!!」

 カッターマンは体勢を立て直し、腕から新しいカッターをせりだそうとする。
「させるかぁぁぁあーッ!!」
「させんッ!!」

「「ギアチェンジ!!」」

 パワーギアに切り替え、ロックマン&ブルースのダブルバスター猛連射アタック!!!

 ズドドドドドドド!!!!

「や、やべぇえ…!!!
 ぐあぁああぁぁぁあああぁああああーーーーーーーッ!!!!!!!!」

 ドコォォォオオオーーーーン!!!!!

 大爆発を起こしてカッターマンは倒れた。同時に空間の穴も全て閉じられる。

「ち…く…しょう…!…だが、いい気になるな…。残りのナンバーズは…、貴様らが想像もつかない、とてつもない、
能力を持って…い…」
 ガク…ッ!
 最後に、残りのワイリーナンバーズの脅威を匂わせるセリフを吐いて、カッターマンは完全に機能停止した。

「…。なんとか勝てた…。ブルース、君のおかげだ…、そしてエディも。ありがとう」
「やったポヨン!」
「フッ…。俺もワイリーが騒ぎを起こしている時に黙ってなどいられないからな…。
 またピンチの時は駆けつけに来るぜ…!じゃあな!」
「あ…っ!」
 ロックマンはこの後の行動も共にしようと思っていたが、ブルースは先にどこかへ去って行ってしまった。

「こちら、ロック。フォルテには逃げられましたが、別に現れたカッターマンというワイリーロボを倒しました。
これから研究所に戻ります」
『よくやった、ロック。街の後始末と残骸の回収は街の警察ロボに任せるから、後はカッターマンの武器チップ回収を
忘れずにな』
「はい」

 ライト博士に報告の通信を済ませ、カッターマンの残骸の腕から武器チップを回収した。
迎えに来たラッシュジェットに乗って、エディと共に研究所に帰還した。


017話『研究所の悪夢』
 ライト博士研究所。
「ただいま戻りました」
「ワォン!」
「ポヨン!」
 ロックマン、ラッシュ、エディはシャッターを通って、ライト博士がいる指令室に入る。そこにはロールもいた。
「おかえりなさい!」
「おぉ、ロック!よく無事に戻ってきた」

「新しいE缶、持ってきたダスよ」
「サンキュー、ライトット」
 ロックマンは椅子に腰かけ、ライトットが持ってきたE缶を飲んでひとまず体力を補充する。
その後は、メンテナンス用のベッドに横になり、ダメージを受けた際に出来た傷をライト博士が修理していく。
「今回も派手にやられたのぉう…」

 キュィィィーン!

 博士はロックマンの破損したパーツに、持ち替えた修理する為の道具を近づける。
それにしても先端がドリルのように尖っていて危険な感じがする。

「死ねぇええーーい、ルルォォーーーックーーーーッ!!!」
 突如、ライト博士はロックマンの心臓部を目掛けてドリルを突き付けてきた。
「うあーっ!」
 ロックマンは咄嗟に身の危険を感じ、ベッドから飛び起きた。
博士が突き付けてきたドリルはベッドを突き抜け、大穴を開けた。
「ちっ」

「ライト博士…、一体何を…?」
 ライト博士がイキナリロックマンを破壊してこようとしてきた事にロックマンは驚きを隠せない。
まさかライト博士の姿をした偽物…?
「いやぁ~、すまんすまん。ちょっと手元が狂ってしまったのじゃ。
この間導入した新しい機械じゃったからの」
 ライトットが破壊されたベッドを見ると、
「新しいベッドを持ってきたダス」
 気を利かせてロックマンに別のベッドを用意してきた。
「ありがとう、ライトット」
 ロックマンが腰を下ろそうとした、その瞬間。

 ジャキィィイーーン!

 新たなベッドから無数の針が飛び出してきた。
「ひっ!!」
 ロックマンは辛うじてそれを交わした。
「あ、ボタン、間違えたダス。惜しかったダスね。ヒヒッ」
 これは罠か?
 博士といい、ライトットといい、どうも、さっきっから、僕を安心させた瞬間に殺そうとしてきた、感じがする。
一体何が目的だ…?

「ロックマン、すまんダス。今度は大丈夫ダスから、ベッドに横になるダス」
「怪しい…」
「ん?どうしたダスか?」
「ロックよ、安心しなさい。今度は安全に修理するからのぉう」
「みんな、なんかおかしいよ」
「そんなことはないぞ。さぁ、ロール、ロックマンの腕をベッドに縛りつけなさい」
「はい、博士」
 ロールが不敵な笑みを浮かべてロックマンにじりじりと歩み寄る。
「フフフ…」
「こわいよー」
 ロックマンには研究所にいるみんなが敵に見えてきていた。
「禁断症状が出てきておる。ワシの言う事を聞けないロボットは一度頭脳を破壊し、1から作り直さなくては
ならないのぉう」
「破壊するならワスのバズーカーを使うといいダス」
 ベッドに腕を縛り付けられたロックマンは身動きが出来ずにいた。

 ウィィンウィィンウィィン…。

「ライトットバズーカーのチャージ、完了ダス」
「ライトット、悪い子になったロックマンを粉々にしてしまいなさい!」
「言われなくてもそうするダス!!!! グッバイダス~~~!!!」

 ズドォォォオオオオオーーーー!!!!!!!

「やったダスか?」
「ついに我が不良息子が退治されたか」
「家庭用ロボットは最初から私一人で十分だったのよ」 

 煙が晴れた後に現れたのは粉々に…、
なっていないロックマンだった。
「!!!」

「特殊武器『ワープスラッシュ』を使ったのさ」
 ライトットがバズーカを発射する寸前、ロックマンは離れた位置を攻撃できるワープスラッシュで
バスーカーを切り裂いていたのだった。
「バカな…ダス!」
 カラン…。
真っ二つに裂かれたバズーカが地面に落下。

 同様にロックマンは自らを拘束している腕輪を破壊した。
「これでハッキリした。ライト博士、ロール、ライトットは明らかに僕を殺そうとしていたことがね…」

「はっはっはー。というサプライズパーティだったのじゃ。楽しんでもらえたかのぉ?我が息子よ」
「もうだまされるもんか!」
「ひどいわ、ロック。みんな、この日の為にドッキリイベントを準備してきたのに」
「そうダスよ、きっとロックマンは戦いばっかりで疲れて冗談すら受け入れられない思考になっているんダス」

「ところでロックや、新しい武器を開発したんじゃ。ちょっとこっちへ来てくれんか?」
 呆れながらもロックマンは一体なんだろう、と、ライト博士に手招きされる方へと歩み寄った。
「真空…」
「?」
「竜巻旋風脚ーーーーーッ!!!」
 するとライト博士が突然ロックマンの顔面目掛けて高速で連続回し蹴りを繰り出してきた。
 ビシビシビシビシビシビシビシビシ…ッ!!!
「あだだだだだだだだ!!!!!」
 容赦なく、ロックマンは大ダメージを食らって吹き飛んだ。
「実験成功~ッ!」
 真空竜巻旋風脚を終えたライト博士は華麗に着地し、決めポーズを取った。

 ほぼ体力が尽きかけているロックマンは床から起き上がる事が出来ずにいた。
(もうみんな、僕をだましてばっかり…。
僕を壊す事しか考えていないんだ…。ライト博士、僕はもう必要のないロボットなのでしょうか…)
 ロックマンがふと天井を見上げると、見慣れないロボットが目に入った。
(あれは…!)
 そのロボットと目線が合う。
「まさかアイツが元凶…?」

「フッ、バレたか。バレちゃ仕方ない」
 天井に張り付いていたロボットが天井を離れて空中を漂った。身軽で質量を感じない動きをしている。

「私の名はペーパーマン。いかにも、Dr.ライト、ロール、ライトットを操り、お主を破壊せしめんとしたのはこの私だ」
「そうか…」

「ペーパーマン様、最後は私にお任せを。私のハイパーロールバスターでトドメをさしてあげるわ」
 ヴィヴィヴィヴィヴィ…。

 ロールのバスターがチャージ完了する前にロックマンは特殊武器『ワームホールカッター』を使い、
ペーパーマンの目の前の空間に穴を出現させ、カッターでペーパーマンを一刀両断した。
 ザシュ…。
「な…!」
「まるでザコだな…」
 紙で出来ているせいか、耐久力はどの雑魚よりも劣っていた。
「ぬかった…」
 そのままペーパーマンは機能停止した。

 そして…。
「ワシは一体…」
「ここはどこダスか?」
「私ったら、いつの間にバスターを…」
「みんな、元に戻ったんだね…」
 ほっと一息ついたロックマンはその場で倒れた。
 バタッ…!

 数分後。
「ロック…」
 正気に戻ったライト博士、ロール、ライトットにより、ロックマンの損傷個所は修理された。
「ライト博士、みんな…」
「ロックよ、ワシは操られていたとはいえ、自分の息子にとんでもない事をしてしまった…」
「私も博士と一緒にいながら守ってやれなかった…」
「ワスとしたことが…、およよ…、ダス」
 操られていた事を詫びるライト博士、ロール、ライトット。
「いいんですよ、みんなが無事に元に戻れたんなら…。最初は驚きましたけど、電波を使って操って来るワイリーロボが
悪いだけです…」
 ロックマンはこれまでにライト博士、ロール、ライトットたちから受け取ってきた、日々の日常にある
気遣いや優しさから伝わる暖かさをかげがえのない幸せとして感じ取り、感謝していた。
今までロックマンがライト一家から受け取った事に比べたら、今回の被害など、ロックマンにとっては
大したことではなかった。
 たしかに今回、ライト一家から受けたダメージは相当なものだったが、揺るがない信頼関係を築いていた
彼は、ライト一家が、本心でそんなことをするはずがない、とずっと信じていた。
 だから今回の件では、ロックマンはすんなりとライト博士たちを許したのだった。

「ロックよ、こんなワシらを許してくれるのか?そして自らの危険を顧みずにワシらのことまでも助けてくれた。
なんとお礼を言ったらいいか、ありがとう、ロック、本当にありがとう…!!」
「ロック~~!」
「ダス~~~!!」
 4人は抱き合って、取り戻せた平和の喜びをかみしめた。

 もとより、ロックマンは精神年齢が人間の年齢で言う10歳程度に設定されているため、
深く悩み続けたりすることもなく、ライト博士の言う事は素直に受け入れる、ようにプログラムされている。
 しかし、その純粋さが仇となる事件が起ころうとしている事を今の彼は知る由もなかった。

018話『占拠された軍事基地』


 突如、軍事基地から住宅街へ向けてミサイルが複数放たれた。
迎撃システムにより、被害は最小限に食い止められたが、それでも甚大な被害をもたらした。

 ライト研究所、指令室。

「ライト博士!」
「うむ。ロックよ、これ以上被害が出ないうちに軍事基地へ出撃するのじゃ。
だが、今回はこれまでにないほど危険が伴うだろう。十分注意してな」
「はい!」


 ロックマンの無事を心配するライト博士らを背に、ロックマンはミサイルを放った軍事基地へと向かった。


「ここか…」
 いたるところに砲台が設置されており、重々しい要塞と化していた。
内部には小型ミサイルや戦車など数々の兵器が待ち受けていた。
「この奥に指示を出して兵器を操っている奴がいるはずだ」
 数々の強力な兵器のトラップがロックマンを襲ってきたが、設置の仕方がワンパターンでそれほど
手こずるものではなかった。そしてロックマンは制御室へとたどり着いた。
「ここにここの基地を陣取っているボスがいるのか……」
 用心しつつロックマンはシャッターをくぐり抜けた。


「……?!」
 そこは兵器が詰め込まれたこのステージの重厚な雰囲気から一転し、メルヘンチックなパステルカラーで
彩られた巨大な一室だった。
「来たでちゅね」
 その奥に高級な椅子に座っている小柄なロボットが見えた。
「ワイリーロボ……?」
 しかしその姿はよちよち歩きが出来る1歳半くらいの姿をしていた。

「そうでちゅ。あたちの名前はミルクウーマンでちゅ」
 ミルクウーマンと名乗る赤ちゃん型ロボットは哺乳瓶を飲みながら答えた。

 まさか軍事基地から街を襲ってきた相手が赤ん坊だったとは。しかしロックマンは当初の目的を思い出し、
あっけにとられていた状態から怒りを示す表情に戻した。
「街を襲った罪、償ってもらうぞ!」
 心を鬼にしてロックマンはミルクウーマンにバスターを向けた。
 しかし……。
「ぶぇええええええ~~~んんん!!!!!! 恐いでちゅぅぅうう~~~!!!」
 ミルクウーマンが突然大声をあげて泣き出した。
「あ、ゴメン……」
 赤ちゃんに対しては言い過ぎだったかもしれないと、ロックマンは反射的に謝り、バスターを下げた。
「今でちゅ!」
 ミルクウーマンは哺乳瓶をロックマンへ向け、武器をマシンガンに切り替え、猛連射を放った。
 ズガガガガガガガ!!!!!
「うあああああー!!!!」
 ロックマンはもろに直撃を受け、ダメージを食らった。
「ばぁぶばぶばぶー!!! ロックマンちょろいでちゅーー!」
 飛び跳ねて喜ぶミルクウーマン。
 よろけた体勢を立て直し、ロックマンは再びバスターを向けて怒りを顕わにした。
「くそぉ! 赤ちゃんだと思って油断した……。だけど、もう騙されないぞ!」
 続けてマシンガンを放ってきたがロックマンはそれを避けつつバスターをチャージし始めた。
まだ躊躇いがあるのか、せめて苦しみを長引かせないように確実に一撃で機能停止させてやろうと
フルチャージまで溜める事にした。
 ヴィヴィヴィヴィヴィ……
「お次はこれでちゅ!」
 ミルクウーマンは事前に捕らえていた軍事基地にいたロボット数体にアンチエイジングビームを当て
思考回路を赤ちゃん化させて、ロックマンを襲うための準備をしていた。
 ミルクウーマンの近くにあるシャッターから捕らわれていたロボット数体が部屋に入ってきた。
「!!!」
「バァブゥーッ!!!」
 姿を現すなり早々、捕らわれていたロボット達が赤ちゃん言葉を叫びながらロックマンを襲い始めた。
「このロボット……操られているのか!」
 攻撃を避けつつ、ロックマンは行方不明になっていたロボット達であることを確認した。
「ばぁぶばぶばぶばばばばー!!!!
 あたちの下部のロボット達よ、ロックマンをボコボコにするでちゅよーーー!!!」
「バァブゥーッ!!!」
「ぐあー!!」
 ミルクウーマンの指示の元、操られているロボット達はロックマンを襲いかかり、ロックマンは動きを封じられた。
「ばぁぶばぶばぶばばばばー!!!! 面白いでちゅー!!」
 ミルクウーマンはゲーム感覚でコントローラを使ってロボット達を操り、攻撃を繰り出してきた。
「この調子で世界中をゲームのステージにして全部壊すでちゅよーーー!!! ばぁぶばぶばぶばばばばー!!! 
あたちの即死コンボを食らうがいいでちゅーー!!!」
 ロックマンはロボット達のコンビネーションによる猛攻撃を食らった。
「ぐあっ! がはっ! ぐごぉっ!!」
「手も足も出ないみたいでちゅねー! このままノックアウトまでボコったら、
ロックマンも哺乳瓶のアンチエイジングビームを食らわせて脳内を赤ちゃんにして操ってやるでちゅよー!」
 ミルクウーマンはご機嫌状態ではしゃいでいた。だがロックマンはその言動の中で、ある情報に気がついた。
(そうか、あの哺乳瓶の能力で……)
 ロックマンはペーパーマンから入手したペーパージャミンガーに武器チェンジし、操られているロボット達に当てた。
 ビビビビビ……
「今からは僕の指示通りに動いてもらうぞ!!」
「バァブゥーッ!!!」
 より強い電波によるジャミングにより、操られているロボット達はロックマンの支配下となり、ミルクウーマンを
取り押さえようと迫っていった。
「ばぁぶ? あたちのコントローラが効かないでちゅ! ゲームが壊れたでちゅー!!」
 ミルクウーマンはロボット達に押さえられ、哺乳瓶を奪われた。投げ出された哺乳瓶をロックマンがキャッチする。
「これがなければ君はもうロボット達を操ることは出来ないはずだ!」
 ロックマンはロボット達にミルクウーマンを取り押さえるように指示した。
「バァブゥーッ!!!」
 そしてミルクウーマンは椅子に縛りつけられる形となった。
「何するでちゅかー!! ぶぇええええええ~~~んんん!!!!!! みんながあたちの事をイジメるでちゅー!!! 訴えてやるでちゅー!! 恐いでちゅぅぅうう~~~!!!」
「パワーギアッ!!」
 一撃で機能停止させるため、ロックマンはパワーギアを発動し、銃口をミルクウーマンに向け、チャージを開始する。
「かわいそうだけど君のやっていることを許すわけにはいかないんだッ!!」
 ヴィヴィヴィヴィ……
「いけぇえーーー!!!!」
 青と赤の2つのチャージショットが放たれる。
 ズドォオオオオオオオオオオーー!!!!
「もっとミルク飲みたかったでちゅのにぃぃいーーー!!!」
 ドォォオオオオーーン!!!
 ミルクウーマンは断末魔の叫び声を上げ、機能停止……


 していなかった!!
「何ィッ!」
「赤ちゃんをやめるなでちゅ! 赤ちゃんのあたちには身を守る安全装置がいっぱいついてるんでちゅ!」
 エアバッグのようなクッションに守られ、ミルクウーマンのダメージはいくらか軽減されていた。
しかし、残量エネルギーは哺乳瓶が奪われたため、補給する事が出来ずにいた。やがてある問題が起きた。
「アンチエイジングを続けるエネルギーがなくなってきたでちゅ。早く哺乳瓶に入っているアンチエイジングミルクを
飲まないとヤバいでちゅ」
 ミルクウーマンはダメージを受けた身体の状態のまま、よちよち歩きでロックマンの方へ近づいた。
「……反省してもう悪いことしないでちゅから早く哺乳瓶を返すでちゅ!」
「哺乳瓶を返して欲しかったら今までしたことに対して素直に謝るんだ!」
 しばしの沈黙の後……、
「いやでちゅぅぅぅううううううーー!!」
 ミルクウーマンは床に寝転がってジタバタし、駄々をこね始めた。
「やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだぁあ、でちゅぅぅうううーーー!!!!!」
 そして、ついにミルクウーマンのアンチエイジングエネルギーが底を突いた!
「エネルギーがなくなるでちゅぅぅうううー!!! やだやだやだやだやだやだぁぁあああ、でちゅぅうううーーー!!!」
 ミルクウーマンの身体が白い光に包まれ、赤ちゃんの姿から元の姿へと形が変化していく。
 身体を覆っていたアーマーは破損し、身体全体が伸びてゆき、胸やお尻の膨らみが増し、
大人の女性と同様の悩ましい姿へと変化していく。
「……わっ!!!」
 大人の女性の裸体を見慣れていないロックマンは思わず赤面してしまう。
 やがて白い光が消え、姿が変化した女性の裸体がはっきりと見える状態となる。
「いやぁーっ! 何見てんのよ!」
 咄嗟に股を閉じて胸と股の部分を手で覆い隠すミルクウーマン。顔も大人の女性のそれであり、白く美しくなっていた。
「あなたは……!!」
 ロックマンはその顔に見覚えがあった。数か月前、各地の宝石店を襲って一兆ゼニー相当の宝石を盗み出し
逃走した強盗犯ロボット、トランスウーマン。大方、姿をくらます為に別の姿になっていたという所か。
「トランスウーマン!!」
「フッ、バレてしまったわね。ロックマン、この場は去るが、いずれ決着をつけてやるわ!!」
 そう言ってミルクウーマンもといトランスウーマンはワープしてその場を去った。
「……」
 ロックマンは哺乳瓶の内部から武器チップ『アンチエイジングビーム』を入手した。




















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トランスウーマン
  ELITE HUNTER ZERO