Another of 4「捕食者と復讐者達」



幾多の大戦を経て多大な犠牲を払いながらもハンター達の活躍で巨悪は尽く壊滅した世界。
誰もが望んだ平和がやっと訪れたと思われたがその平和はある日脆くも崩れ去る。
ディバインバグと再生イレギュラーの対決に決着が着いた事に合わせ地上に無数のバグがばら撒かれたのだ。
これはフィリアが予め計画していた事であり、地上は瞬く間にバグで覆いつくされた。
それこそ「1匹見たら30匹いると思え」と言われるほどに。
フィリアが与えた情報も相まって世間は当然の如く大混乱に陥った。
そう、悪用しようとする輩が出てきたのである。

「この力で世界征服してやるぜぇーっ!!!」
「ハンター共に復讐してやるぞ…!」
「ヒッヒッヒッヒ、金になるぞ~!」
「バグが欲しいバグが欲しいバグが欲しい…」

バグで得た力を思うがままに振るう者、闇市場に流して金儲けに利用しようとする者、
そして致死量以上のバグと同化してしまい巨大バグを生み出す者も現れだした。

「たかがロードアタッカーズがここまで強くなるなんて…!!」
「これがガードロイド如きがやった事か!?」
「喰われるーっ!!」

バグが量産型レプリロイドや非戦闘用レプリロイドの性能も飛躍的に上げる事、
そしてレプリロイドの欲望を開放するので元は大人しいレプリロイドまでイレギュラー化する事が多発した事で
この事態は一層深刻化した。
本能のままレプリロイドやメカニロイドを喰らい、そればかりか生物だった時の名残や体に電気が流れていて
感情の発生源でもあるという事で人間や動物までも喰らう巨大バグも世間を恐怖のどん底に叩き落した。

ハンターを始めとした様々な機関はこの事態を収束するためにバグの回収や管理、場合によっては破壊する事を決定し
一部の実力者にはバグとの同化が推奨された。
当然S級ハンター3人もその中に入っていた。

「頭の中で声がするんだけどよ、『広くて快適だ』とさ」
強大な戦闘力と高い闘争心を持ち、その出自によるボディの性質からゼロは大量のバグと同化出来た。
「僕の中のバグは『美味い!美味い!美味い!』って言ってるけどこれっていい事なのかな?」
アクセルも残酷さを含む性格やその出自故のボディの性質のおかげで大量のバグと同化出来た。
「うう、バグとの同化が上手くいかない…バグが言うんだ、『何だこれ不味すぎる!この宿主は最悪だ!』と…」
一方エックスはバグとの同化が上手くいかなかった。
エックスの争いを好まない性格がバグに合わなかったからである。
「バグについてもっと調べてみる必要があるわね」
エイリアが言う。

そしてゼロとアクセルは特に強大な反応が出ている2ヶ所にそれぞれ出撃する事となった。
ゼロはテクノピアに、アクセルはハイウェイに出撃する。

テクノピアでは…
「本当にここにいるのかよ…」
今は無人の廃墟となったテクノピアの裏町でトルクがとある人物を探していた。
「本当じゃ、ほーれもうすぐそこにおるぞ!」
トルクの中でバグとなったフィリアが言う。
程なくしてトルクは意中の人物を発見。
その人物は薄汚れた服を身に纏った痩せこけた老人で、かつての面影は失われつつあるが
テクノピアの元市長、ヴェルトその人だった。
テクノピアでの一連の騒動の後人気のないこの場所にひっそりと住んでいたのだ。

「よう、随分久しぶりだなあ…!」
「き、きき貴様は…死んだ…はずの…」
トルクが不敵に言い放ち、かつて目の前で死んだはずの人物の出現にヴェルトは明らかに動揺した様子で後ずさりしながら言う。
「ヒーヒヒヒ、ワシもおるぞ~!」
トルクが掲げた手から小さなフィリアの頭部が出現して言う。
「あの時は世話になったからなぁ、その礼をさせて貰うぜ!!」「覚悟は出来たかのう!?」
恨む理由は違えどトルクとフィリアは共通の恨みを持つ相手にその感情を向けて迫る。
ヴェルトは自分の死を悟ったが…実際はその場ですぐ殺されるという生易しいものではなかった。
「貴様には死んでもらうが、その前にあの時以上の生き恥を晒させて貰うぞ!」
フィリアがそう言うとトルクはヴェルトの身ぐるみを剥がしてしまった。
そして体中に落書きをしていく。
内容は勿論グロ要素やメタル要素、パンク要素を含んだものである。
「ギャアアアア何をする!!!!!」
悲鳴を上げるヴェルトに構わずトルクはヴェルトを突き飛ばした。
「死にたくなかったら逃げろ!!」
トルクが嘲笑気味に言い放つ。
「ヒィィィ助けて、助けてぇ~!!!!」
ヴェルトは駆け出そうとするもののすぐトルクに追いつかれてはまた突き飛ばされる。
それを繰り返す内に彼等は人のいる市街地へと向かっていった。

やがて市街地に入りヴェルトは全裸である事にも関わらず必死で逃げ、それにすぐ追いついたトルクはまた突き飛ばして進んでいく。
「どうだいまのご気分は、市長さんよぉ!!」「ア¨ア¨アアアアアァァァァアアア~ッ!!!!!!!!」
この光景を見た町の人々はどよめく。
「裸のジジイがイレギュラーに襲われてるぞ!!」
「このジジイどこかで見た事が…ってヴェルトじゃねーか!!!」
「どうする、助けるべきか!?」
「こんな奴助ける価値ねーよ、あのイレギュラーも相当ヤバそうだしよぉ…」

それらに目もくれずトルクとヴェルトが交差点に差し掛かった時…
「よぉーし、もう充分生き恥は晒させたし、そろそろ死んで貰うか…!」
トルクはそう言って拳を固める。
その時だった。

「そこまでだ!!」「何!?」
横から声がしたと思うとそこから放たれたバスターの光弾を喰らって
トルクは大ダメージを受けて吹っ飛んだ。

「チィ、誰だ!?」
トルクはすぐに立ち上がり声と攻撃が発生した方向に向かう。

そこにいたのは群衆をかき分けるように現れたゼロだった。
「フィリアがビビりまくってたゼロのお出ましか…!」
「今までの実験の成果を試す絶好のチャンスじゃ、ヒーヒヒヒ!!」
トルクは一転高揚感を露わにしフィリアも違った理由で興奮する。

そして、ゼロとトルクは互いに少しずつ近づいていき、攻撃のタイミングを伺い…
同時に互いの得物をぶつけ合った。
その際の衝撃は凄まじく両者を中心に突風と地割れが発生した。
武器と武器、力と力、技と技のぶつけ合いが暫し続いたが徐々にゼロが押され気味になる。
しかしある時…
「真の力を見せてやる!!」
ゼロはハイパーモード「ブラックゼロ」を発動しトルクを吹っ飛ばす。
「チッ、噂は伊達じゃねぇって事かよ…!」
トルクが吐き捨てるように言う。
その後形成が逆転しゼロが押し始める。
両者が互いの武器をぶつけ合いつつゼロが人気のない場所に誘導していく。
偶然にもゼロが誘導した先は裏町であり、結果トルクは元来た道を引き返す形でその場から消えていった…

ここまでが一瞬の出来事でその場に残された人々は暫し茫然としたがある時その中の一人が口を開いた。
「ヴェルトが新しいネタを引っ提げて帰ってきたぞぉーっ!!!」
声の主はかつてヴェルトをネタにして楽しんでいた者の一人だった。
それに合わせて他の人々もその事で騒ぎ出す。

「撮れ撮れーっ!!」「ネットに拡散しろぉーっ!!」
「か、か、勘弁してくれぇ~っ!!!!」
町の人々は嫌がるヴェルトに構わず彼を晒し者にし始める。
中にはかつてのヴェルトの被害者もおり、彼等はヴェルトに唾を吐いたり足蹴にしたりもした。

そんな時だった。
「やめんか!!!!!!」
1人の長身の老人の一括で群衆はピタリと動きを止めた。
彼は元レジスタンスのリーダーで現市長のビリーヴだった。
「追い詰められた者にこのような仕打ちをするなどかつての彼や先程のイレギュラーと変わらないではないか!!」
ビリーヴのその言葉に誰も反論できない。
「済まなかった、彼等を代表して詫びよう」
ビリーヴはそう言ってヴェルトに自分が羽織っていたコートを掛けた。
「ウア¨アアアアアアアアアアァァァァァン!!!!!!!!!!!!!!!!
ウア¨アアアアアアアアアアアアアァァァァァン!!!!!!!!!!!!!!!!
ウハハハア¨ァァアアアン!!!アーンアンアンアン…」
ヴェルトは自らの政権が崩壊したとき以上の大号泣でビリーヴにすがりつく。
「(やだ、カッコいい…)」
このやり取りをみた人々は一様にそう思ったという…

その頃裏町にて…
「重波斬!」「クソッ…!!」
トルクの攻撃をゼロが重波斬で押し切った。
「このまま押し切ってやるぜ、断地炎!!!!」
追撃を加えようとするゼロだったが…

「調子に乗るな!」「何!?」
トルクはゼロの技にカウンター技で応じる。
「こうなったら俺も真の力って奴を見せてやるぜ!!」
そしてトルクはエゴイスティックビーストを召喚してこれと合体してエゴイスティックウォリアーと化した。
しかも背中からフィリアと同じ蝶の羽根が生えている。その名も「バタフライエディション」。
これにより高速飛行が可能となるばかりかカウンターの成功率も上がった。
ゼロの周囲を暫し高速旋回し、タイミングを見極めるとゼロ目がけて突っ込んでいくトルク。
「龍炎刃!!」
「甘いぜ!」「ぐうっ…!!」
ゼロは自らの攻撃を2倍にして返されてしまった。
「どうだ、自分の攻撃を倍にして返される気分は!!!」
嘲笑を響かせるトルク。
ゼロは地面に激突したがすぐに立ち上がり、殺気を漲らせる。
「やるじゃねぇか、だがこっちにはまだ奥の手があるんだよ…!はあああ!!」
そしてゼロはアブソリュートゼロを発動。
するとゼロに宿るバグ達が活性化した。
アブソリュートゼロ発動時の凶暴性がバグに一層力を与えたのだ。
「それでこそ潰し甲斐があるってもんだぜ…!」
「分際ってものを教えてやるぜ、雑魚野郎!!!」
上空で対峙した両者。
その直後両者は上空で暫しの間激闘を繰り広げていく…

ハイウェイでは…
「またここに来る事になるなんて…あーあーあの時より派手に壊されちゃってるよ…」
アクセルが向かったハイウェイは自身がゼロと出会った場所である。
そして同時に第1次シグマ大戦時にエックスがVAVAに敗北した場所でもある。
道中バグによって強化されたボール・ド・ボーやビーブレイダーが立ちはだかるが今のアクセルの敵ではない。
しかしアクセルがビーブレイダーをまた1体撃墜した時、このステージの強大な反応の発生源が
彼の前に姿を現した。
その正体はバグズディメンションでの戦いを勝ち抜いて外に出てきたVAVA-VIその人だった。
「VAVAか、ヤコブの時以来だね。地獄からはるばる戻ってきたところ悪いんだけどさ、もう1回…」
言いかけるアクセルの言葉が徐々に詰まっていく。
VAVA-VIの内に宿る途轍もなく恐ろしい存在…ディバインバグの存在を感じ取って戦慄したからである。
「中に…いるんだね…?」
アクセルは思わず問い、VAVA-VIは不敵な様子で答える。
「ああ、俺がディバインバグを倒し、そいつは今俺の中にいる。その所為で腹が減って仕方がねぇんだよ」
そう言うとVAVA-VIの片手が変形し小さなディバインバグの顔の形を成す。
「喰わせろよぉ~!」
VAVA-VIの手のディバインバグの顔がそう言うとVAVA-VIはそれをアクセルが先程撃破した
ビーブレイダーの残骸に近づける。
そしてそのディバインバグの顔が息を吸い始めたかと思うとビーブレイダーの残骸が光の塊に姿を変え、ディバインバグの口に吸い込まれていった。
「何!?」
それを見たアクセルは戦慄する。
「面白いだろ、こうやってレプリロイドやメカニロイドをエネルギー体に変換して自分のエネルギーに出来るんだよ。
まずはメインディッシュであるエックスが来る前に、前菜のお前を喰ってやろう!!」
「(これは…本当にヤバいかも…)」
アクセルはホワイトアクセルを発動し、VAVA-VIを迎え撃つ。

一方ハンターベースでは…
「出来たわエックス、このバグは貴方と同化出来るはずよ!!」
エイリア達技術者が人為突然変異させたバグの作成に成功した。
このバグは所謂「偏食・ゲテ物食い」のバグであり従来バグが嫌う「優しい、穏やか、建設的」な感情を好むのだ。
結果としてエックスはこれらのバグとスムーズに同化出来るようになった。
「皆有難う、これで力になれるよ!」
そう言ってエックスは出撃先を見定める。

テクノピアでは…
「クリムゾンエンド!!」「ウガッ!!」
「昇龍拳!!!」「グゲッ!!!」
徐々にゼロが押し始めてきていた。
「おい、ここは引くべきじゃろ!リボーンバグはもう無いぞ!!」
慌てるフィリアがトルクに言うものの…
「誰が…テメーなんぞの…指示を…受けるかよぉ…!」
強情に跳ねのけられる。
「負けて…負けてたまるかよ…!!」
「いい加減負けを認めちまえよ、あぁ!?」
そして立ち上がってはまたゼロの攻撃を喰らうトルク。
「(これだけ…これだけの準備をしてもまだ足りんかったのか…!?
それとも、バグをばら撒いたのが仇になったか…)」
思わぬ苦戦にトルクの内部で歯噛みするフィリア。
何度攻撃を受けても立ち上がり、時折反撃するトルクであったが次第に追い込まれていく。
「(そうだ、いい事思いついたぞ!)」
フィリアは何かを思いついた。


ハイウェイでは…
「あれ、体が…変だぞ!?」
スクラッチバグの効果を伴ったVAVA-VIのパンチ系の技を喰らい続けたアクセルは自らの異変に気付く。
即ち全ての面において弱体化していたのである。
「フィリアよりずいぶん時間が掛ったがようやっと効いてきたか…ゴールデンライト!!」「ああっ…!!」
アクセルは殴り飛ばされ地に倒れ伏す。
そこへVAVA-VIが近づいていき、見下ろす。
「思ったより長く楽しめたがそろそろ頂くとするか…」「喰ってやるぞぉ~!」
そのままVAVA-VIはディバインバグの頭と化した片手をアクセルに近づけるが…

「させない!!」
横からの声と共にVAVA-VIはバスターの光弾に吹っ飛ばされ捕食を妨げられた。
攻撃してきたのはこの地点に出撃してきたエックスであった。
VAVA-VIはすぐさに立ち上がり、歓喜した様子で大喝する。
「待っていたぜエックス、貴様に復讐する時をよ!!」
「お前が何度蘇ろうとも俺はその度に倒し続けるだけだ!!」
エックスも負けじと言い放つ。

「エックス、気を付けて、奴には、相手を…弱体化させる…力が…」
「分かった、あとは任せてくれ!」
エックスはアルティメットアーマーでVAVA-VIに挑む。

「プラズマチャージショット!!」「フライトショット・Ω!!」「な!!」
「ノヴァストライク!!!」「リモートブロック!!!」「ううっ…!!」
しかしアルティメットアーマーで以てしてもエックスは徐々に押されていきパンチ系の技を喰らって弱体化する。
「どうしたどうした、こんなもんか!?」
嘲笑うVAVA-VIを余所にエックスはおもむろに立ち上がる。
「こうなったらもう、あれを使うしかないな…」
そう呟くや否やエックスは最新のアーマー「ギガアーマー」を纏う。
その結果エックスの全ての性能が上昇し反撃に転じる。
只のノーマルショットですらVAVA-VIに相応のダメージを与えられるようになり、
隙をついてエックスはアクセルの体力をアイテムで回復させ、自らとアクセルの体の異常をバグを使って解除した。
「そんな力を隠してたなんてよ、だったらこれだ!!」
VAVA-VIはバグフォームを発動させた。
しかも背中からは2対、計4本のディバインバグの脚が生えている。
その名も「アラクニッドエディション」。

「レッグマゲドン!!」
VAVA-VIは自身の腕と背中に生やしたディバインバグの脚でエックスを滅多打ちにし始める。
「く…うおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!」
これに対しエックスは暫し耐えた後片手につき1本ずつディバインバグの脚を掴んだ。
その直後エックスはVAVA-VIにジャーマンスープレックスを決めたのだった。

この衝撃で橋が音を立てて崩れ去り、VAVA-VIは橋にめり込んだ状態で橋の破片ごと地面に落下した。
「今だ、いくぞ!!」
エックスはアクセルと共にVAVA-VIに連射攻撃を加え始めた。
ダブルアタックを発動させるつもりである。
やがてアタックゲージは溜まり切った。
「「これで決めるぞ!!!!」」
エックスとアクセルはダブルアタックを決めようとするが…
「馬鹿が、こっちもアタックゲージは溜まってんだよ!!」
VAVA-VIはそう言うと両肩の砲台を切り離しダブルアタックならぬトリプルアタックを発動させた。
「喰らえぇーっ!!!!!!」
「それそれそれそれそれぇーっ!!!!」
「死ねぇーっ!!!!」
激しい攻撃をぶつけ合った結果3人とも大ダメージを負ったが、すぐさに立ち上がり次のダブル(トリプル)アタックに備え始める。
こうして戦いはいつしかダブルアタックとトリプルアタックの応酬となっていった…

一方テクノピアにて…
「兜割!!!」「が…は…!!」
ゼロの攻撃でトルクが致命的なダメージを受け、意識が途切れかけた時だった。
「今じゃ!!」
フィリアはトルクが所持しているワープバグを強制的に起動させた。
そしてトルクは他の地点へ転送されこの場から姿を消した。
「チッ、逃げられたか!!」
止めを刺そうとするもののトルクを取り逃がしたゼロはクールダウンしてその事を報告した。

そしてハイウェイ。
「ハァ…ハァ…ハァ…畜生…!!」
エックス、アクセルのダメージも大きかったがVAVA-VIのダメージがそれを上回っていた。
そしてまた、エックスとアクセルのアタックゲージが溜まった。
それに合わせてエックスがVAVA-VIに向かった時だった。

「何、バグズコロニーに行け…?そこに勝利への鍵がある?
確かに認めたく無いが…今は引き際…だな…」
バグズコロニーとは、バグズディメンションのステージを構成するコロニーである。
VAVA-VIはそこからの思念波を拾うと仕切り直しの為か、そこへワープして姿を消した。
「ク、逃げられたか…!!」「ヤコブの時も1回じゃ勝負はつかなかったよね…」
エックスとアクセルは残念そうな面持ちで報告した。

その後、エックス、ゼロ、アクセルは皆大ダメージを受けていた為体制を立て直すべく帰投した。
ハンターベースでは既に新たなバグが開発され、3人はそれらのバグとも同化して
体力の回復は勿論新たな力も得た。
ハンターや各機関の努力によりこの時既にバグを利用したイレギュラーはあらかた掃討されたが
ある1ヶ所にて依然強力な反応が出ている事が判明した。
それはバグズコロニーのある場所であり、VAVA-VIとトルクはそこにいると結論付けられた。
そしてエックス、ゼロ、アクセルはバグズコロニーを目指す。

その頃そのバグズコロニーでは…
「ここに戻ってくる事になるとはな…」
VAVA-VIはバグズコロニーに到着した。
するとVAVA-VIの脳内に新たな思念波が飛んできた。
「何?今度はバグズコロニーを喰え…何という突拍子もない話だなオイ」
「俺は喰いてぇぞぉ~!!」
思念波の内容を理解したVAVA-VIは当惑したがディバインバグは乗り気である。
「こんなん入るのかよ?本当にやるぞ?」
半信半疑でVAVA-VIは手にあるディバインバグの顔を床に近づけようとするが…
「いいからやれよぉ~っ!!」
ディバインバグはVAVA-VIの腕を引っ張るかのように強引に床にかぶりつく。
そして、息を吸い始めた。
するとVAVA-VIのいる場所が光り出し、そこを中心に光が急速に広がっていく。
バグズコロニーの別室にて。
「いいぞ、やりおったわ!!」
思念波の発信源であるフィリアはトルクの体内で歓喜した。
ちなみに瀕死のトルクはそのボディをバグズコロニーのコンピュータに繋げられていた。
やがて光は広がりトルクをも飲み込む。
「何だ、コロニーが光に覆われていくぞ…?」
エックス達も遠目にこの事態を確認した。
やがてコロニー全域が光に覆われた時…
その光の塊はVAVA-VIの手のディバインバグの口に一瞬で吸収されてしまった。
「何だ!?今度は消えたぞ!!??」
エックス達はこれを見て嫌な予感を覚えた。
コロニーは消え、その場にはVAVA-VIだけが残されたが…
「ウ…ウ…グオオオオオオオオオオオオオオオオオオーッ!!!!!!!!!」
VAVA-VIが暫し唸ったかと思うと雄叫びを上げ、それと同時に大地が震撼した。
その直後今度はVAVA-VIが光に覆われ、その光が急速に広がっていく。
光は形を成していき、これまでと全く別の存在へと姿を変えていく。






そして…破壊の絶対王者が、ここに降臨した。





その存在は人の上半身に蜘蛛の下半身を持ち蝶の羽根を背に生やしていた。
頭部は上半分がトルクを、下半分がVAVA-VIを思わせる顔をしており頭にはフィリアを思わせる触手を生やしている。
胴体はデスワームを思わせる形状で肩部はエゴイスティックビーストの獣の顔と
ディバインバグの顔を合わせたような形状をしており
背中にはバグフィリアとほとんど同じ蝶の羽根が生えている。
下半身はバグフィリアとほぼ同じだがバグフィリアの頭部があった場所は巨大な砲門が着いていて
腹部の後部にはライドチェイサーを思わせる巨大なエンジンが左右に1基ずつ付いている。
サイズはバグフィリアよりもさらに巨大化しておりボディカラーは紫がかった銀色である。



「無理」「無駄」「無謀」
この存在を目にした3人にはこの言葉が頭をよぎった。
ディバインバグ、そしてバグフィリアをも超える壁が目の前に出現したのである。
例えるなら地球を破壊出来るほどの巨大な隕石が目で確認できる所まで迫ってきたぐらいの絶望が、3人を襲った。
「………」
暫し沈黙が続いたが、最初に口を開いたのはエックスだった。
「お前は…一体…」
するとその存在はサイズに見合った大音量の声を響かせ、一言だけ答えた。
「…ヴァルグリア…」

そしてヴァルグリアは両腕で大地をえぐり取り、その超巨大な塊を投げつけた。
「「「くっ…!!!」」」
3人は散り散りになって回避したが、結果その塊は遥か彼方へ飛んでいき、地面に激突するとともに
天を突くほどの粉塵を舞い上がらせた。
「全部…喰ってやる…全部…壊してやる…全員…殺してやる…」
続いてヴァルグリアは下半身の砲門にエネルギーをチャージし始めたかと思うとそこから
放射状の極太レーザーを放った。
目の眩むほどのその光芒はあまりに広大な領域を一瞬にして焦土に変えた。
これまでのヴァルグリアの攻撃で壊滅した地域の範囲や死者の数は想像したくもないほど甚大だった。
その結果…

「やめろぉーっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
一瞬の内に起こった惨劇を目にして、エックスは張り裂けんばかりの怒号を響かせた。
「これ以上の破壊は…もうやめろ!!!!!!!お前が…お前達がどれだけの力を持っていても…
俺は…俺は諦めないぞ!!!!!!差し違える事になっても…絶対に食い止めてやる!!!!」
エックスの怒りの叫びにゼロとアクセルも続く。
「そんなお前だから今まで皆付いてきたんだよな。俺も座して死を待つつもりは無ぇぜ!!!!」
「敵が現れたら倒す…それだけだよね!」
彼等もまた、理解はしても納得はしないのであった。

エックスはギガアーマーを纏い、ゼロはアブソリュートゼロを、アクセルはホワイトアクセルを発動させた。
この時バグの影響でエックスもアクセルもこの形態なら高速飛行出来るようになっている。
そして3人はヴァルグリアの周囲をぐるぐると旋回しながら特殊武器やサブウェポン、
攻撃用バグで攻撃を始めるも効いている様子は見られない。
逆にヴァルグリアの自在に操れる頭部の触手、変幻自在な背中の羽根、
強靭な手足、下半身のレーザー砲から来る攻撃はいずれも即死級の威力と
回避が困難な攻撃範囲を兼ね備えているので3人は針穴に糸を通すが如き慎重さで
攻撃と回避を繰り返す。
「こうなったら自爆させてやる!!」
ヴァルグリアがエックスに殴りかかってきた時エックスはヴァルグリアに自分を殴らせるよう誘導を試みるも
すぐに気づかれ自身に拳が当たる前にそれを止めてしまうのだ。
こんな気力も体力も削る戦いがいつまで続くのかと思われた矢先レイヤーから通信が。
「皆さん、聞こえますか?敵の防御はあまりに強力です。
故に内側から攻撃するのが最も有効と思われます。
相手はその巨大さ故中に入る隙間もその分大きいと思われますが…」
「隙間…か…」
エックス達は頭を懸命に回し始める。
…とちょうどその時だった。
「喰ってやる…」
ヴァルグリアがデスワームと同じバキュームミキサーを仕掛けてきたのだ。
今は吸い込み攻撃の途中で、回転刃が開いている。
強烈な力で吸い込まれる3人だったが…

「「「そこだ!!!!!!!!!!!!!!!!」」」

3人は同時に同じ事を考え、自分からヴァルグリアの胸部に突っ込んでいった。
エックス、ゼロ、アクセルの順に中に入ったがアクセルが入ったとほぼ同時に回転刃が閉じられた。
「うわー間一髪だったよ…」
アクセルが声を漏らす。

するとどこからともなく声が聞こえてきた。
「馬鹿め、同じ過ちを犯すと思ったか!!こんな時の準備はしてあるわい!!!」
声はフィリアの声だった。
意図してか否か、フィリアの人格がヴァルグリアの人格から一時的に分裂して喋ったようだ。

「同じ過ち…VAVAも内側からディバインバグを倒した、という事か…」
エックスが察したと同時に無数の敵が3人に襲い掛かってきた。
それは一見過去に倒したボス級のレプリロイド達やジェイルキーパー、エビルスレイヤー、
ディメンションズマスター達であったが皆ボディカラーはモノクロであり、
データから再現されたコピーで意思もない。

「こんなので俺の心を折れると思ったか!!!」
並みいるボスのコピー達をエックスは次々と撃破していく。
ゼロの前にはライドアーマーに頭部と翼を付けたようなレプリロイドのコピーが現れた。
「悪いな、今の俺には生きてる本物がいるんだ、偽物は消えろ!!!龍炎刃!!」
ゼロはアイリスのコピーをためらわず撃破。
「なんか見た事ない敵もいるね、でも、やるしかないよね!!」
アクセルが初見であるスパイダーズスレードのボスや中ボスのコピーを
それぞれの攻撃を分析しつつ何とか撃破していく。

「バグで調べたんだがどうやら脳に当たる部分が中枢のようだ!上を目指すぞ!!」
その場の敵をあらかた葬るとエックスが弱点を突き留め、3人は上へと向かう。
その道中でもボスのコピーが次から次へと襲い掛かり、3人はダメージを受けながらも進んでいった。
やがて3人は脳に当る部分に到達し、突入する。
その中央には壁に半分埋まった目玉のような赤い球体があった。
「何か、あからさまだよね…」
アクセルがつぶやく。
「ああ、これで…これで終わらせてやるぞ!!!」
3人が赤い球体…コアに攻撃を加えようとした時だった。
「甘い、甘いわ!!」
フィリアの声と同時にVAVA-VI、トルク、フィリアのコピーが現れた。
「何としてでも俺はお前を…お前達を倒す!!!」
エックスはVAVA-VIのコピーに挑む。
「トルクだったか…モノクロになっても大して変わらないなお前は」
皮肉を言いつつゼロはトルクのコピーに挑む。
「じゃあ僕は余ったあんたって事で」
アクセルがフィリアのコピーに挑む。

暫し3対3の激戦がヴァルグリアの脳内で展開する。
VAVA-VI、トルク、フィリアのコピーはいずれも強力でエックス達は暫し苦戦を強いられたが
徐々に戦いを有利に進め始めてきた。
何故ならVAVA-VI達のコピーはそれぞれ単独で戦っているのに対し、
エックス達は時折連係プレーも見せたからである。
そして遂にはファイナルストライクの発動条件も満たされた。
「俺達には守るべき物がある。自分の事しか考えないお前達に負ける訳には、いかないんだ!!!
ソウルストライク!!!!」
エックスは次から次へと分身を生み出しそれらが次々とノヴァストライクを放っていく。
「無限幻無零!!!」
零が無数の幻無零を放つ。
「ダブルインフィニティクラッキング!!!!」
アクセルが2丁のバレットから光弾を連射する。この弾は全てクラッキング効果があり
通常弾より威力も高い。
3人の攻撃は瞬時にVAVA-VI達のコピーを消し去り、コアに到達した。
「馬鹿な…馬鹿な…認めん…認めんぞ…」
そしてコアが破壊されると所々が爆発し始めた。

「離脱するぞ!!!」
3人はヴァルグリアの外に飛び出す。
彼等が目にしたのは頭を抱えて苦しむヴァルグリアだった。
その直後…
大爆発が発生し爆心地には巨大なキノコ雲が発生しヴァルグリアのボディは爆発四散した。

「終わったんだな…」
エックスが呟く。
「ああ…」
ゼロがそれに続く。
「うん、反応が消滅してるね、間違いないよ」
アクセルが反応の消滅を確認する。
3人は帰投した。

「今回の被害も過去の大戦と並ぶ規模のもので、俺は正直悲しいよ。
だけど落ち込んでいる暇なんてない、前に進み続けるしかないんだ!!」
悲しみを堪えエックスはその決意を示す。
「ああ、止まったら終わりだからな。だから、止まるんじゃねぇぞ…」
ゼロが鼓舞する。
「あんな敵に勝ったんだからもうどんなのが来ても怖くないね!!」
アクセルが意気込む。

今回の事件の被害は甚大極まりないものだった。
しかし復興作業にはバグの力が大いに役に立った。
これは優れた力が使い手次第で救いにも破滅にも繋がるいい例として後に語られる事となる。

その頃、どことも知れぬ場所にて…
「エックスめ、俺もお前への復讐を…諦めないからな…!」
ハエの姿の通常バグと化したVAVA-VIが呟く。
別の場所でも…
「あーあー、虫になっちまったか、暫くは虫なりの自由を満喫するのも、悪くねーかもな…」
スズメ蜂型のバグになったトルクが楽観的に言う。
さらに別の場所にて…
「畜生畜生畜生、テメーら、覚えてろよぉ~!!」
ひらひらと飛び回りながら蝶型のバグになったフィリアが絶叫する。
またさらに別の場所。
「腹が減ったぞぉ~喰わせろよぉ~」
蜘蛛型のバグと化したディバインバグは相変わらず腹を空かせていた。
彼等がその後どのような運命を辿るかは、誰も知らない。

Another of 4 完
ELITE HUNTER ZERO