Another of 3「特別な存在」



「(僕は…一体どうしてしまったんだろう…いつもあの人の事ばかりを考えている…あの人の事を考えると胸が苦しくなる…
この感覚はあの時以来だ…ノワールと再び1つになった時の…)」
ハンター達と共にロードキングダムを撃破した新世代レプリロイドのリュミエールは現在とある悩みを抱えていた。
 
ロードキングダムの事件の後、それまで独善的かつ独裁的だったリュミエールは考えを改め
他者の意見を聞くようになりマインドコンタクトによる人々への感情操作を解除した。
この際リュミエールはある程度の自身への反発やセイントサンクチュアリへの離反が発生する事は覚悟していた。
結果としてそのような事態は発生したもののその規模は彼の予想に対して遥かに微々たるものだった。
それはランバートとある6人のレプリロイド達の力が大きかったからである。
リュミエールの感情操作はある程度心身の強いレプリロイドには効かない。
セイントサンクチュアリのレプリロイドではロードキングダムに引き抜かれたレプリロイド以外ではその6人には効かなかった。
即ち彼等6人は事件前、そして事件の当時も自分達の意志でリュミエールに付き従っていたのだ。
事件後彼等は「六聖将」という地位を与えられロードキングダムとなった面々に代わってリュミエールに次ぐ戦力としてセイントサンクチュアリを守っている。
六聖将は皆相応の人望と影響力を持ちそれが事件後の人々のリュミエールへの支持に大きく貢献したのだ。
またこれまでリュミエールがしでかした事は業の深いものも多かったが以下の理由で条件付きでイレギュラー認定は免れた。
 
それはまずリュミエールが殺した人数よりも救った人数の方が遥かに多かった事。
そして殺した面々は相応の悪事を働いており世間一般からも十分嫌われていた事。
リュミエールに加担した一般人達も同罪だと彼等自身が主張した事。
これからの世界の復興と発展にリュミエールの力が必要な事…等々である。
そして条件とはある期間内で無償で世界の復興や発展に協力し続ける事で合った。
これらの事からリュミエールは世界を立て直すのは1人では到底不可能だと改めて悟った。
六聖将もハンター達と親交を深めつつ世界の復興と発展に尽力している。
 
そんなある日、ギガンティス島にて…
 
「おおおお!!!サウザンドスティンガー!!!」
「甘い!疾風牙!!」「ぬおっ!?」
 
セントラルタワー内の訓練場でゼロと白いアーマーで槍と盾を持った比較的大柄な青年型レプリロイドが激しく武器と技を交えていた。
レプリロイドの名はパラディーノ。
六聖将のリーダーであり彼等の中では最強の戦闘力を誇る。

両者の気迫は凄まじく訓練と思えぬ激戦がしばし続いたがある時遂にパラディーノが怯んだ隙を突きゼロがセイバーをパラディーノの顔に突き付けた。
 
「勝負あり、だな」
「ハッハッハ、ゼロの旦那にはまだまだ敵わねぇなぁ!!」
パラディーノが残念そうながらも豪快に笑いながら言う。
 
「いや、前回より大分腕を上げたと思うぜ?」
「まだまだだ、世の為、人の為、そしてリュミエールの旦那の為!!
俺はもっともっと強くなってやるぜぇーっ!!」
ゼロの言葉に対し飽くなき向上心を見せるパラディーノ。
 
「中々骨のある男だな。お前ほどの男が何故リュミエールに従っているのか不思議でならん」
カーネルが言う。
「何を言う、俺はあの人の世界を救うという志の高さに惹かれたんだ。
目標をでっかく持つ事は素晴らしい事じゃないか。
それが1人では出来ない事に気づいてくれた事、そして俺を必要としてくれた事…
こんなに熱い事があるか!?燃える!燃えるぜぇーっ!!!」
周囲をドン引きさせる程の熱弁を展開するパラディーノではあるがゼロやカーネルとは馬が合うらしい。
 
「最も、事件や争いが起こらないに越したことは無いのですけどね」
緑色の神官のようなアーマーを纏ったプラチナのような長い髪とエメラルドグリーンの澄んだ大きな瞳と
誰もが振り返りそうな端麗な顔貌と華奢な体格が特徴のレプリロイドが苦笑しながら言う。
レプリロイドの名はアモール。六聖将の1人である。

「そうね、平和が一番よ」
アイリスも苦笑しつつ賛同する。
「誰もが互いに愛し合い、笑い合える世の中が一番です。
綺麗事だと人は言いますけどそれを実現する努力は大切ですよ」
平和を愛する心の強いアモールはアイリスやエックスと馬が合うらしい。
「ん?早速…」
ふとアモールは何かを感じたのか不安げな顔をして訓練場を出ていこうとする。
「どうかしたのかしら?」「良からぬ事が起こっています…」
アイリスの問いかけにアモールは顔を曇らせつつ答え、廊下へと向かう。
そこでアモールが目にしたのは悪い意味で体育会系のギガンティス総督府兵士達による後輩へのいじめであった。
 
「コネだけで入ったテメーに現実の厳しさを教えてやるぜ!!!」
「これは先輩による愛の鞭さ、有難く受け入れろや!!!」
「ヒィ~、か、勘弁してくださいぃ~っ!!!」
先輩レプリロイド達は如何にも強面で対して後輩レプリロイドは気弱そうな外見をしていた。
 
そこにアモールが割って入った。
「あの~、お二人さん、何があったのか知りませんが無抵抗の相手にこういう真似はよくないと思います…」
 
「何だぁ姉ちゃん、テメーにゃ関係ねーだろ!!」
「俺達といい事してくれるっつーならやめてやってもいいけどよぉ、ぐへへへへ…」
知性と品性をまるで感じさせない先輩レプリロイド達がアモールに言う。
「わわ、僕は男ですって!それにこんな事をするに至った経緯を聞かせて貰えませんか?」
アモールは自らが男である事を明かしつつ先輩レプリロイド達に尋ねる。
「ふざけんな、こんな可愛い男がいるか!!訳はこいつが弱い事、態度がなってねー事、リアクションが面白い事…そんなとこだ!!」
「それだけ…ですか?お二人に何か悩みやストレスがある、とか
この方にそれだけの非がある…とかではないんですか…?」
そう言ったっきりアモールは暫し沈黙をする。
 
「恥を知りなさい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
数秒後、彼はその華奢な体格からは想像できない怒号を響かせた。
その表情も原型を止めぬほどの鬼の形相と化していた。
 
 
彼の大音量の怒号はこの場一帯を震撼させるほどであった。
「何だ!?」「ああ、始まったか…」
訓練場にいた面々は様子が気になりアモールがいる所へ向かう。
パラディーノは何かを察したようであった。
 
彼等が目にしたのは腕を組み仁王立ちして説教を垂れるアモールと正座して縮こまって震えながらそれを聞く先輩レプリロイド達であった。
見た目は先輩レプリロイド達の方が遥かにゴツい為珍妙な光景である。
「いいですか、本当に強い者は弱き者を守るんです!!
自分より弱い者を虐げて強くなったつもりでいるのは愚かしい事ですよ!!
それは強さを誇示しているんじゃなくて、弱さを露呈している事なんです!!
分かりましたか!!?ちゃんと頭に入りましたか!?」
「「ごめんなさい…グス…ごめんなさい…」」
先輩レプリロイド達は涙目になってただただ謝るばかりである。
「ほら、悪い事したら謝る!!!!!」
「「ヒック…ごめんなさい…ごめんなさい…」」
アモールは謝罪を促し、先輩レプリロイド達は後輩レプリロイドに謝罪をする。
 
「いえ、いいですって、頭をあげてください先輩方!」
慌てつつ後輩レプリロイドが言う。
するとアモールは元の表情に戻り彼に優しく言う。
「先輩想いなんですね。その気持ちを大切にしてくださいね」
そして先輩レプリロイド達に向き直って優しく言う。
「貴方達も今のこの方の心遣いと先程の僕の言葉を、決して忘れないで下さいね」
「ウ、ウオオオオ~~~~~ン、俺達が、俺達が間違ってやした、アモール…の兄貴!!!」
「兄貴と呼ばせて下せぇ~っ!!!!!!」
号泣してアモールに縋りつく先輩レプリロイド達。
これまた珍妙極まりない光景である。
 
「怒ったアモールはおっかなさ過ぎて俺でも怒らせたくねぇ。
ま、俺はあいつを怒らせるような卑劣な真似はしねぇがな、ハッハッハ!!!」
パラディーノが苦笑しつつ言う。
「今のような事が起こると僕はとてもとても悲しいです…」
悲し気な表情で呟くアモール。
「世の中嫌な事もあるけどよ、今夜のライブでパーッと忘れちまおうぜ!!!」
「はい!!」
笑顔で言うパラディーノの言葉に対しアモールは表情を明るくさせて答えるのであった。
 
一方スカイルームにて…
「ブヒョーッ!!!!!これがエックス氏のフィギュアコレクションブヒか!?
どれもクオリティが高過ぎるブヒ!!!インスピレーションが湧いてくるブヒ~~~~ッ!!!!!!!」
激しく興奮した様子で肥満体型のオタクを思わせる容姿のレプリロイドがエックスに語る。
彼の名はフィギャード。
六聖将の1人でカリスマフィギュア師でもある。

「ハハ、気に入ってくれて何よりだよ。
このコレクションは辛い戦いの中のささやかな楽しみだったからね…」
エックスは過去の戦いを思い出しながら言う。
「ムムム、この『ギャルズコレクション』は特に素晴らしいブヒ!!エックス氏…パンツ見てもいいブヒか!?」
興奮冷めやらぬフィギャードがエックスの耳元で囁く。
「ちょ、それは本人達に失礼だよ…!もしかして、『彼女』のフィギュアでも既にやっているのかい?」
エックスは赤面し、目を細めながらフィギャードに尋ねる。
「ヒ、ヒィィ~怖い事思い出させないで欲しいブヒィ~~…」「??」
これに怯えたフィギャードをエックスは不思議そうに見るのであった…
 
所変わってガウディル研究所。
「ほほう、これがフォースメタルジェネレータか…!興味深い…実に興味深い…」
天秤のような頭部を持つ長身痩躯のレプリロイドがその身長差の為身をかがめてシナモンの胸元を覗き込みながら言う。
彼の名はサイエン。
六聖将きっての発明家兼スナイパーである。

「貴様!何シナモンの胸を凝視しているグワか!!セクハラか!?セクハラグワか!?」
「誤解しないで頂きたい、ガウディル博士。私は飽くまでフォースメタルジェネレータに対しての知的好奇心を抱いているだけの事。
仰るような趣味など持ち合わせてはいない」
カッカするガウディルに対しサイエンは冷静に応じる。
「(『あの娘』と外見年齢が変わらぬ娘など、私の興味の対象外なのだよ…)」
サイエンは内心呟く。
 
一方でギミアラ採掘場の工事現場にて…
「おおおおお!!!ここはもう終わったぞぉーっ!!」
「俺の所も終わった。次は何をすればいい?」
マッシモと共に石像のような巨漢レプリロイドがあくせく働いていた。
彼の名はグライア。
六聖将一の巨体と怪力を誇る。

「ヒェ~重機何台分の働きをしてるんだあの人達…」
「マッシモさんは分かるけどあのグライアって人も凄ぇ馬鹿力だなぁ…」
周囲の工事用レプリロイド達は只々感心していた。
「今夜のライブの為にもこんな仕事さっさと片付けんとなあ!!」
「うむ。『あの娘』の姿と歌は皆の癒しになる。…俺にとってもな」
夜に行われる「ライブ」の為に精を出すマッシモとグライア。
結局作業は当初の見込みよりかなり早く終わり作業用レプリロイド達は大いに喜んだ。
彼等の中にもライブを楽しみにしていた者が多かったからだ。
そうこうしているうちに日も暮れた。
それに伴いセントラルタワーに設けられた特設ステージでライブが始まろうとしている。
会場は満席であり、ハンター達やギガンティス島の主力レプリロイド、リュミエール、六聖将の男性陣は特等席で見物していた。
やがて会場の照明が消え、ステージにスポットライトが舞い、遂には1人のレプリロイドを照らす。
そのレプリロイドはピンクのショートヘアに青くくりっとした目、深い青の大きな帽子、
肩を露出した深い青のアーマーと小柄な体格が特徴の少女型レプリロイドだった。
彼女の名はシュクレール。
六聖将の紅一点でありそのスピードは六聖将最速である。

 
「みんなー、今日はわたしの為に来てくれてどうもありがとーっ!!
思いっきり歌って踊るから楽しんでってねーっ!!!!!!」
「「「「「「「「「「ワーワーワー」」」」」」」」」」
シュクレールの声に応じて歓声が上がる。
 
「早速だけど、わたしにはバックダンサーはいらないんだよー。
何でって?これを見れば分かるよー!」
そう言うとシュクレールの背後から何人ものシュクレールが出てきた。
「凄い!どうやってんだ!?」「かわいー!!!!!」
そして何人にも増えた「シュクレール達」はキレキレのダンスをしながら熱唱を始める。
 
「凄い速さで動いてるね…」
「おまけに凄く器用ですよ…」
シュクレールの姿を目で追えるアクセルとパレットもこの芸当に感嘆する。
そしてふとアクセルが目を横にやるとリュミエールが顔を赤らめてぽけーっとした表情でシュクレールを見つめているのに気づく。
 
「あれあれー?リュミエールにもこんな面があったなんてー」
アクセルが茶々を入れる。
「ち、ちち違いますよ!!僕は決してそんな感情なんて…」
明らかに取り乱した様子で否定するリュミエール。
 
「これはもう誤魔化せませんよ?」
パレットも悪戯っぽく微笑みながら言う。
 
「そんな…僕は…それにそもそも僕なんて恋をしたりされたりする資格なんて…ありませんから…」
リュミエールは悲し気に言う。
「もしかしてまた自分がした事気にしてるってワケ?
そんな事言ってたらキリないよ。僕やゼロ、ダイナモなんてどうなるのさ?」
「………」
アクセルにそう言われたリュミエールは過去に自身がシュクレールに言われた事を思い出す。
 
その昔リュミエールは「罪人は恋をする資格もされる資格も無い」と主張していた。
それに対しシュクレールは異議を唱えたのである。
「恋をするのに資格なんていらないんだよー。それはどんな人にも凄いパワーをくれるし、
止める権利は誰にも無いんだよー」
当時はこれを綺麗事と吐き捨てたリュミエールだったが今はこの事に対して悩み苦しんでいる。
過去にしでかした事への罪悪感とシュクレールに対する胸の高鳴りの間に揺れているのであった。
 
ライブは大盛況の果てに無事終わり、シュクレールは控室に入った。
そしてソファーに突っ伏した。
「あああああ、今日もリュミエール様はお美しくカッコよかったよーっ!!!!
そのリュミエール様がわたしの歌をこんなに近くで見てくれるなんて~えへへへへへ…!!
六聖将になって前よりリュミエール様にお近づきになったけどこの調子で、いつか一人の女として…見て貰いたいよぉ~…!!!!!!
えへへ…!!!!えへへへへへへぇ~…!!!!!!!!」
足をじたばたさせ真っ赤な締まりのない顔で悶えるシュクレール。
彼女もまた、リュミエールに惚れていたのであった。
かなりの下心も伴って…
 
こうして平和な日々が続いていく。
しかし全ての者が現状に納得している訳ではなかった。
「ギヒヒヒヒヒヒ!!!!!!!今に見ているでゲス、世の中のゴミ共め…」
新たな悪は着実にその計画を進めているのであった…
 
ある日の事…
「ん、メットールか?随分ボロいなぁ」
「ってバットンボーンかよ!!」「襲ってきたぞ!!!!」
突如メットールのメットを被ったバットンボーン「メットンボーン」が大量に出現し一般人に危害を加え始めた。
メットンボーンはかなりボロボロの姿だったがその見た目に反しかなりのパワーだった。
それに留まらず複数のレプリロイドやメカニロイドを組み合わせ姿でボロボロの外見のイレギュラーの出現が相次いだ。
「ディグレイバーの頭がレイビットの胴体に付いたディグビットだーっ!!」
「ノットベレーの頭がガビョールにくっついたノットビョールが出たぞーっ!!」
メディアで報じられるこうしたイレギュラーは「ジャンクロイド」と名付けられ世間を騒がした。
ジャンクロイドはその珍妙な姿ゆえに事件と全く関わりのない者は笑いのネタにしたが
被害者にとってはたまったものじゃない。
 
「嫌だぁーっ!!こんなカッコ悪いイレギュラーに殺されたくないーっ!!」
暴走するジャンクロイドから逃げ惑う一般人達。
そこへエックスが颯爽と現れこれを撃破する。
しかしその直後エイリアから通信が。
「エックス!また新たなジャンクロイドが出現したわ!場所は…」
「(またか…こんな事、誰が、一体何の為に…)」
倒しても倒しても湧いてくるジャンクロイドに困惑しつつエックスは新たな現場に向かう。
 
ジャンクロイドの話題が巷で持ちきりになった頃、その元凶は公共の電波を乗っ取りその姿を現した。
世界中のテレビに突如特徴的な髪型と髭の小柄な老人型レプリロイドが映し出され声明を発表した。

「ギヒヒヒヒヒ、ワシの名はイディオット…
貴様等が言う『ジャンクロイド』を造ったのはこのワシでゲス!!
目的はそう、旧き者の、捨てられし者の逆襲でゲス!!
生きてるレプリロイドもメカニロイドも、みんなワシの作品の部品にしてやるでゲス~っ!!!!!」
「ふざけるな!!死者に鞭打つような真似…俺は絶対許さないぞ!!!」
エックスは憤りを露わにする。
「あんなガラクタの部品になるなんてゴメンだぜ!!!」
ゼロが吐き捨てるように言う。
「こういうおかしな奴が出てくるから僕達の出番が無くならないんだよね~」
アクセルは怒りを込めつつも軽い口調で言う。
 
暫くするとジャンクロイドの残骸から特殊なパラロイドと特殊なマメQと特殊なウィルスを融合させた「パラQ」が摘出され
これがジャンクロイドの核となりパワーも与えている事が判明した。
これに伴いジャンクロイドへの対策がなされ撃破もスムーズに行えるようになっていった。
その結果ジャンクロイドは只々笑いを提供する為だけの存在に成り下がっていった…
 
これに対してイディオットはキレた。
「ムキーッ!!!!!こうなったら…ワシ特製の刺客を投入してやるでゲスぅ~!!!!!
憎いあいつのいる所にはワシ自ら出向いてやってやるでゲスーッ!!!!!」
 
まずハンターベースに送り込まれたのはアジールの頭部とベルガーダーの胴体を融合させた「アジガーダー」、
ペンギーゴの頭部とナウマンダーの胴体、シュリンプァーの鋏を融合させた「シザーズ・ペンマンダー」、
バイオレンの上半身とアジールの下半身を融合させた「バイジール」だった。
何れも自我は無くただイディオットの命令通りに動いている。
「アジール、今度は人面犬になってしまったか…昇竜拳!!!」
哀れみの表情でエックスはアジガーダーを撃破。
「良かったなペンギーゴ、でっかくなれて…よ!!龍炎刃!!」
皮肉を言いつつゼロはペンマンダーを撃破。
「上半身に比べて下半身が貧弱すぎるでしょ!!」
バランスの悪さを突いてアクセルはバイジールを撃破。
 
続いてギガンティス島に送り込まれたのはホーンドの上半身とマッドノーチラスを融合させた「シルバーホーチラス」、シャドウの頭部とヒポポプレッサーの胴体を融合させた
「シャポポプレッサー」、ジャンゴ―の頭部とボロックの胴体を融合させた「ジャンボロック」であった。
「地獄に送り返してやるぜホーンド、ベルセルクチャージ!!!」
当時の憤りを思い出したマッシモはホーチラスを撃破。
「かつての敵とは言えこんな姿にされるのはあんまりですよ…!」
シナモンは悲しみつつもシャポポプレッサーを撃破。
「これじゃ自慢の悪声もスピードも出ないじゃないかい、散華!!」
半ば呆れつつマリノはジャンボロックを撃破。
 
そしてセイントサンクチュアリでは…
「全ては貴様の…貴様等の同胞を用いた計画から始まったのでゲス、ワシの転落人生は…!
貴様だけはこの手で葬らないと気が済まないでゲス…!!!」
イディオットは数体の刺客を放ちセイントサンクチュアリのバリアを破り強行突破を試みていた。
その刺客とはダックビルモールの背中のメカニロイド「ホール・ド・K君」を背負いラフレシアンの杖を手にしたナインテイルズの「ホール・ド・テイルシアン」、
サンダースライマーとシャドーデビルが融合した「シャドースライマー」、ウルフシグマとサーゲスタンクの下半分が融合した「ウルフタンク」、
クラーケンとオクトパルドが融合した「ランチャー・クラーケン」、
イーサ&ソウェルにマオー・ザ・ジャイアントの頭部と腕が付いた「イーサ&ソウェル&マオー」、
プレス・ディスポーザーとボルト・クラゲールが融合した「プルト・ディスゲール」であった。
「ナインテイルズ…出来れば生きてるお前さんと戦ってみたかったぜ…パラディンコンビネーション!!」
パラディーノは槍と盾を遠隔操作し自らも渾身のタックルを決めテイルシアンを撃破。
「死んだレプリロイドを使って魔改造などフィギュア師として許せんブヒ!出番ブヒ!!」
フィギャードは戦車や戦闘機で構成されるミニチュアの軍隊を召喚しそれらに指令を出してランチャー・クラーケンを撃破。
「無駄な破壊はしない…実弾モードで行くとしよう」
サイエンは専用の銃「サイエンスライフル」でシャドースライマーを撃つ。
すると弾丸に込められた強酸がシャドースライマーの内部に宿るパラQを溶かし機能を停止させた。
「相手がメカニロイドなら何も苦しまなくていいです…グラビティフィールド!!!!」
アモールは自らを潰しにかかってきたディスゲールを逆に重力操作で潰す。
「これしきのパワーで俺と張り合うか…愚かな…」
グライアはイーサ&ソウェル&マオーの突進を片手で受け止めそのまま持ち上げ上空に投げ飛ばした。
結果イーサ&ソウェル&マオーは遥か彼方へと消えていった…
「忌々しい過去の争いの遺物…滅びなさい!ヴァーチュスフォーカス!!」
リュミエールはヴァーチュスフォーカスでウルフタンクのパラQのみを的確に破壊して機能を停止させた。
 
次々と自らの「作品」を撃破され続けたイディオットは完全にブチ切れとうとう自ら出撃する。
自らが廃材で作り上げた巨大ロボット「スクラップゴーレム」に乗って。
「己己己ぇ~っ!!!!!どいつもこいつも調子に乗りおってからにぃ~っ!!!!!!
こうなったらワシ自ら貴様等をこのスクラップゴーレムのパーツにしてやるでゲスぅ~っ!!!」
スクラップゴーレムは廃材から造られただけあって左右非対称でゴミの塊みたいな不格好な姿をしていた。

その巨大な足を踏み鳴らし、大地を揺らしながら侵攻するスクラップゴーレムの進む先にはシュクレールがいた。
「うわーデッカー…そしてカッコ悪ー…
君がこの事件の犯人だねー?わたしはシュクレールだよー。六聖将の一人として、ここは通さないよー!」
「ほざけ小娘がぁーっ!!!!」
シュクレールの一見弱そうな容姿とその間延びした口調から
完全に舐められていると感じたイディオットは激昂しスクラップゴーレムの巨大な拳で殴りかかる。
が、しかし拳がシュクレールを捉えようとした正にその時、
シュクレールは突然その場から姿を消した。
「どこ狙ってるのかなー?」
シュクレールはつい先ほどとは全く異なる位置に姿を現した。
「ええい、今度こそ…!」
イディオットは再度スクラップゴーレムでシュクレール目掛けて振りかぶるが結果は同じだった。
何度殴ろうとしてもその拳は空振りするばかりで、自らを殴ってしまう事すらある。
「畜生畜生畜生―っ!!!」
「今度はこっちから行くよー。マーダーライブ…ドラム!!」
地団太を踏むイディオットに対しシュクレールは手にした2本のドラムスティックで反撃に転じる。
この技は敵の体をドラムに見立てドラムスティックで叩きまくる技である。
シュクレールは高速移動しながらスクラップゴーレムのボディの至る所を叩きまくっていく。
このドラムスティックは先端部が重く、シュクレールの見た目と裏原に一発当たりの威力も高い。
その結果スクラップゴーレムは見る見るうちにボディが凹みだらけになっていき、
所々からパーツがこぼれ落ちていく。
「こ、このままじゃ負けるでゲス…じゃがワシの目じゃ奴の動きは追えん…
ん…?ワシの目なら追えない…となるとコレでゲス!!!」
イディオットは操縦席内のスコープアイを顔に装着。
これによりシュクレールの動きを分析できるようになる。
「(奴の動きは速いが攻撃の特性上こちらに近付く必要がある…
ならばスクラップゴーレム本体を中心に放つこの技は避けられまい…!)
ジャンキースパーキング!!!」
シュクレールが攻撃を当てるべく接近した瞬間、スクラップゴーレムのボディの周辺に超高圧電流が放たれた。
「あうっ!!!!!!」
電流をまともに食らったシュクレールは地に落ちた。
「ギヒヒヒヒヒ~、これで形成逆転でゲス~」
イディオットはスクラップゴーレムで倒れているシュクレールを拾い上げ、そのまま握り潰そうとする。
「むむむ、思ったより頑丈でゲス…こうなりゃ人質として使えば脅しになるかもしれないでゲス…」
スクラップゴーレムの握力は非常に強いのだが、それでもシュクレールを握り潰せずにいた。
これによって人質作戦を思いつくイディオットだったが…

「ぬ!?各方向から6つの強力な反応が……!!!」
イディオットは現在自分のいる所に向かう強力な反応を探知した。
程なくしてそれらの反応の発生源は姿を現した。
その正体は当然リュミエールと六聖将の男性陣だった。

「シュクレールさん…!」
スクラップゴーレムの手の中で気を失っているシュクレールを視認したリュミエールは顔を強張らせる。
六聖将の男性陣も同様に顔を強張らせるがその中ではサイエンは平静を装っていた。

「ギーヒッヒッヒッヒッヒ、この小娘がどうなってもいいでゲスかぁ~!?」
イディオットは彼等に対し嘲笑を響かせる。

「………」
暫しの沈黙の後リュミエールが口を開いた。
「今回の事件の首謀者のイディオットさん、ですね。
貴方がどんな大義名分で今回の事を起こすに至ったか…聞かせて貰えませんか?」
リュミエールの問いかけにイディオットは憎々し気に語りだす。
「それはリュミエール、貴様等新世代レプリロイドの台頭から始まった宇宙開発が悪いんでゲス!!
ワシはその昔廃品利用の技術で大儲けしておったんでゲスがまずヤコブの時から始まり
フォースメタルの発見、そしてロードキングダムの事件の後の
地球外文明との本格的な接触によって世の中の流れは宇宙開発に突き進んでいったでゲス…
これにより皆新しいものばかりに価値を見出し古い物には見向きもしなくなり…廃品利用の需要が減っていったんでゲス!!!
その所為でワシは仕事が無くなるわ馬鹿にされるわ…
ヤコブの時のイレギュラー化した新世代レプリロイド共は口を揃えて「旧い物は滅びろ」とかほざいておったそうでゲスが、
今の世の中の流れ自体が奴等の言ってた事そのものでゲス!!!!
じゃからワシはこのふざけた世の中に旧き者…棄てられし者の意地を見せつけてやる事にしたんでゲスよ…!!!!!」

「………」
リュミエール達は沈黙した。
「何じゃ、何とか言ったらどうでゲスか!?…え…?」
リュミエール達が見ていたのはスクラップゴーレムに握られたシュクレールの方だった。
先程まで気を失っていたシュクレールが目を覚ましたのである。
「ん…んー…ハッ!!い、痛い痛い痛い!!痛いよー!!!放してよーっ!!!」
シュクレールはスクラップゴーレムの手の中で懸命に足掻く。
「何じゃ、この馬鹿力は…!!こんな小さな体のどこにそんな力があるんでゲスか!?」
シュクレールの思わぬ抵抗にたじろぐイディオット。
リュミエール達が臨戦態勢に入りつつも様子を伺っているとシュクレールはスクラップゴーレムの方に顔を向け息を吸い始めた。
そしてリュミエール達は耳を塞ぐ。
「???」
突如もがくのを止めたシュクレールに違和感を覚えたイディオットだったが…
「アーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
シュクレールはスクラップゴーレム目がけて口から破壊音波を放った。
この技は「マーダーライブ・ボーカル」であり、遠距離攻撃で手足の自由を奪われても発動できるのだ。
「ヒ、ヒィィィィ、や、やめるでゲスゥ~~~~~ッ!!!」
「―――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!」
シュクレールの破壊音波を受けスクラップゴーレムは破損の激しい部分から崩れていく。
イディオットはシュクレールのこの攻撃を止めさせるべく握る力を強めたものの、
すぐに腕部の操縦が効かなくなり内部の機器が次々と壊れていく。
そして遂にスクラップゴーレムの巨体が音を立てて崩れ落ちた。

スクラップゴーレムの破片の山の中でイディオットは辛うじて生き長らえた。
周囲に自分を探す複数の足音を耳にしたため息を殺して耐えていた。
「(ここは死んだふりでゲス…さっさと行ってくれでゲス…)」
暫くすると突如として視界が暗くなった。
「この辺りにいそうな気がするんだよねー」
何と倒れているイディオットの頭上にシュクレールが通りかかったのである。
即ち、スカートの中が丸見えなのである。
「な…!!」
イディオットはこの衝撃で物音を立て、声も少し漏らしてしまった。
そして…見つかってしまった。

イディオットはシュクレールから凄まじい殺気を感じた。
「わたしの…パンツを見ていいのは…リュミエール様だけだよーっ!!!!
マーダーライブ・ギター!!!!!」
シュクレールは指先に装備した付け爪でイディオットの顔面を引っ掻きまくった。
「理不尽でゲス…」
イディオットは伸びた。


「リュミエール様―、わたし、やった…よ…」
リュミエールの元に駆け寄ろうとするシュクレールだったが、突如崩れるようにして倒れ込んだ。
「シュクレールさん!!!」
リュミエールはシュクレールを抱き上げる。
「えへへ…ちょっと…無理…しちゃった…かなー…」
シュクレールは力を振り絞って笑顔で言うが、やがて意識を手放してしまう。
無理もない。高圧電流を浴び、スクラップゴーレムの手で握られ全身の至る所を損傷した状態でエネルギー消費量の多い「マーダーライブ・ボーカル」を放ったのだ。
そこからくる反動は本人やリュミエール達の予想の範疇を超えていた。
「すぐに治しますから…!!」
リュミエールはシュクレールを伴って研究所のメディカルルームに自らを転送した。

「行ってしまったな…」
パラディーノが呟く。

「後はこの糞ボケ爺をどうするかブヒね…」「ヒ、ヒイッ…!!」
フィギャードが怯えているイディオットを指差して言う。

今回の事件そのものも去ることながらシュクレールを傷つけた事により六聖将の男性陣のイディオットへの憤りは計り知れない。
イディオット自身には戦闘力も無い為彼は今、成す術がなくなった。
否、1つだけあった。
その方法を今、イディオットは実行に移そうとしていた…


「ワシが…ワシが悪かった…!!許してくださいでゲスゥ~~~~~~~ッ!!!!
この通りぃ~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!!!!!」
そう、イディオットの最後の手段は「土下座」だったのだ。

「ム、こ、これは…!!!」「何か知ってるのか、フィギャード」
フィギャードが何かに気付き、パラディーノはその事について彼に尋ねる。
「これは『土下座』ブヒ…旧世紀のマッドサイエンティストが戦いに負けた時、
いつもその場しのぎに使っていた謝罪法ブヒ…!!」
「するてぇと奴は、つまり…」
「「「「(全く反省していないって事(ブヒ)(だね)(だな)(ですね)!!??)」」」」
パラディーノが言いかけた事を、他の者が察する。
そして尚憤る六聖将の男性陣。

「ここは俺の魂を込めた鉄拳で活を入れてやるか…!」
パラディーノが指を鳴らす。
「バラして余す事なくフィギュアの部品に使ってやるブヒ!!」
フィギャードがにじり寄る。
「平らに引き延ばして大地の一部にしてやろうか?」
グライアが凄む。
「まぁまぁ待ちたまえ…」
サイエンがその場を制するが…
「彼には私の研究のモルモットになって貰おう…」
表情からは読み取れないがサイエンも怒りをちらつかせていたのである。
サイエンはシュクレールを女性として好きな訳ではないが仲間として、
そして彼女の日頃の行いに対して相応の好意は抱いていたのだ。

そして怯えるイディオットに迫るパラディーノ、フィギャード、サイエン、グライアの4人。
「た、たた助けて…助けて…!!」
そんな中…
「ちょっと待って下さい!!!」
アモールが4人を引き留めた。
彼は続けて言う。
「昔の人と同じ事をしたからって全く反省していないと決めつけるのはどうかと思います。
どうか僕にそれを確かめるチャンスを下さい!!」
「…いいぜ、やってみな」
何かを察したパラディーノはそれを承諾した。

「アガペーバインド…」
アモールの体が光り輝くと彼自身とイディオットの意識は精神世界へと飛ばされた。

「何でゲスか、一体どうなっているでゲスか…!?」
「ここは僕の作った精神世界。現実世界とは時間の流れが異なります。
そしてここには貴方と僕しかいません」
止まった時の中で、何もない世界の中でアモールとイディオットは対峙する。
「ここでは一切の嘘は通じませんし隠し事もできません。
貴方が本当に反省しているかどうか、確かめさせて貰います」
そしてアモールはイディオットの現在の精神状態や思考パターンを分析し始める。
そしてそれを理解すれば理解する程アモールは表情を曇らせていく。
「何という…何という自己中心的な…頭の中はお金儲けの事ばかり…
レプリロイドやメカニロイドの残骸を使って『ジャンクロイド』を造ったのも遊び感覚…
挙句の果てに悪い事は何でも人の所為にしようとする…」
「わ、分かったでゲス…全てワシが悪いでゲスぅ~~~~~っ!!!!」
必死に弁明するイディオットだったがそれが逆効果である事に気付いていない。
弁明をすればするほどアモールの表情は怒りに染まっていく。
最早パラディーノ達以上の殺気を放っている。
そして…
「…ティアモ…」
アモールがこの語句を詠唱すると彼の体から光の束が飛び出てそれはイディオットを包み込んだ。
「ああ~心が…心が浄化されるう~~~~~~~~」
そして両者の意識が現実世界に戻った。
時間にして0・1秒も経過していない。

「………」
イディオットは暫し沈黙していたが…
「僕は…僕は何てことをしてしまったんでしょう…!
自分のつまらぬ怒りに振り回されてせっかく復興仕掛けた世の中を滅茶苦茶にして…!
ジャンクロイドの材料に使った死んだレプリロイド達にも申し訳ない事をしました…!!
本当に…本当に申し訳ありません!!どんな罰でも受けます!!!!」
ポロポロと涙を流しつつ謝罪し始めた。
アモールのような立ち振る舞いで。

「あーあー、やっぱそう来るか、アモールが一番えげつないな本当に…」
パラディーノがぼやく。
「こうやって更生の余地のない悪党を強制的に自分と同じ性格にしてしまうブヒね。
それにしても気持ち悪いブヒ」
フィギャードが今のイディオットにドン引きしつつ言う。
「正確には相手が自分の影響を受けた性格になるのを時間を掛けずあらゆる過程を飛ばして実現させる、という事か。
このようにあまりに非道な者はまともに向き合えば更生に何年掛かるか分からないから時間で見れば合理的かもしれないが…」
サイエンが冷静に自分の見解を述べる。
「奴がティアモする時…それは相手がそれだけ下衆な時。どちらが悪いか俺には断言できん…」
グライアも困惑気味に言う。
「本当は僕もティアモなんて使いたくないんです…だってどんな悪い人でも自分の力で自分の非に気付いて欲しいから…」
技を放ったアモール本人も悲し気に言う。

一方メディカルルームにて…
シュクレールのボディはすぐに修復されたが依然彼女は目を覚まさない。
「起きてください、シュクレールさん…
今だから言いますが、今の力を得る前から僕は貴方に心のどこかで惹かれていました。
歌と踊りと天真爛漫なキャラクターで皆の心に光を与える貴方の姿に僕は自分に無い物を見出したのです。
そしてノワールと1つになって痛みと悩みを取り戻し、六聖将としてより貴方を間近に見るようになってから…
僕の中での貴方の存在はどんどん大きくなっていきました…
今ならはっきり言えます、貴方は僕の中で他の六聖将とは…いや、今まで会った方々とは全く違う存在なのです…
僕が言う…資格もないかもしれませんが…それでも……
それでも……好き……と…言わせて…ください…」
悲痛な口調でリュミエールはシュクレールに語る。





、とその時…





「本当―?嬉しいなぁー!!!!」
シュクレールが突然飛び起きてリュミエールにハグしたのだ。
「うわ!さっきから…気付いていたのですか!?」「そうだよー」
赤面しつつリュミエールが尋ね、シュクレールは即答する。
「それよりも…僕なんかが…好きになっていいのですか…?」
次にリュミエールは躊躇しながらシュクレールに問いかける。
「だから前にも言ったけど…恋をするのに資格なんていらないんだよー!
わたしはリュミエール様が過去にどんな事していても、世界中がリュミエール様の敵になっても、ずっとずっとリュミエール様の事が大好きだよー!
初めて会った時に悪質ファンからわたしを助けてくれた事、今でも覚えてるよー!」
「有難うございます…ただただ感謝の言葉しか…ありません…」
相手も自分の事が好きだった事、そして自身への惜しみない愛にリュミエールはただ感謝感激し、シュクレールを抱き寄せた。

「…という事で…早速…」
するとシュクレールが悩まし気な表情をしてリュミエールを誘惑するポーズを取る。
「うわわ!!!シュクレールさん、色んな段階飛ばしてますよ!まずは安静にしてください!!」
「えー、でもここベッドだよー?」「用途が違いますよ!!!」
思いの外積極的なシュクレールに耐性の無いリュミエールは慌てふためくのであった…

その後、イディオットは主に器物損壊罪の罪で刑務所に入れられた。
「皆で愛し合いましょう!それが平和な世の中への一番の近道なのです…!!」
「何じゃこの爺気持ち悪ィ!!」「オエー!!!!!!!!!!」
依然ティアモの効果が残っているイディオットの立ち振る舞いに周りの囚人や刑務官はドン引きしたが
その真摯な姿は囚人たちに少しずついい影響を与えていったとか。

一方でリュミエールとシュクレールは…
「普段のクールなリュミエール様もいいけど、ノワール君みたいに積極的なリュミエール様も見てみたいよー」
「それは危険ですよ、彼なら貴方を壊してしまいます」
「壊れるぐらい愛して欲しいよー!!!」「………」
リュミエールに告白されて以来シュクレールは彼の前でその本性を発揮。
日常ではどちらかと言うとシュクレールがリードする側に立っている。
しかしリュミエールは自分に最も近しい存在のノワールとも、プロパガンダのように感情操作なしで人の心を動かす人物とも、
ハンター達のような共に戦った戦士達とも、また違った意味で特別な唯一の存在…
恋人であるシュクレールを誰よりも愛し続け、守り続ける事を誓ったのであった。
ハンター達や六聖将の男性陣も、それを暖かく見守っていくだろう。

Another of 3 完
ELITE HUNTER ZERO